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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ50

「CAP中のクラウン31、尖閣ノースウェスト(北東)・ハンドレッド・クォーター・マイル(100と4分の1=125マイル=約200キロ)、アンノウン・ピックアップ(国籍不明機を探知)」沖縄方面の防空を担任する南西航空方面隊第9航空団は中国空軍の戦闘機の性能が急速に向上して那覇基地から発進する対領空侵犯措置では間に合わなくなったのを受けて平日の日中は武装した戦闘機を東シナ海上空で待機させるCAP(コンバット・エア・パトロール)を実施するようになっている。クラウンは八重山に棲む冠鷲の英語名・クラウン・イーグルから採った飛行隊のコールサイン(仮称)だ。
「ラージャ、リクエスト・コマンド(指揮を要求する)」「ラージャ、ヘディング270(方位270度)、ダウン・エンジェル15(15000フィート=約4600メートルに降下)」この飛行隊は2016年に第83航空隊が第9航空団に改編された時に築城基地から移駐したのでパイロットとしても先日の緊急発進機の撃墜事件は他人事ではない。築城基地はFー15が抜けた後、Fー2の2個飛行隊になっているが、これを韓国空軍は「対地攻撃能力が高いFー2を集中配備したのは韓国領内を爆撃するためだ」と批判していた。一方、航空自衛隊では「イザとなったら北朝鮮の核施設を空襲することになる」とカウンター・メジャー(敵基地攻撃)の可能性を考えていた。実際、Fー2に加えてAWACS(空中警戒管制機)と空中給油機の3点セットが揃っているのですでに敵基地攻撃能力は備わっているのだ。
「アンノウンは我が方のADIZ(防空識別圏)に沿って南下している。現時点ではアラート(対領空侵犯措置)の対象にならない」「ラージャ、距離を取って並走しよう」最近の中国空軍機は実質的に航空自衛隊と台湾空軍、フィリピン空軍だけが上空で対面する相手のためアラスカのアメリカ空軍機や北極海上空でNATO軍機と対峙しているロシア空軍機のような強圧的な態度ではなく悪戯のように挑発してくることが多い。今回もADIZに沿って飛行しながら序々に進路を変えて航空自衛隊が気づくかを確認することくらいはやりかねない。
「サンセット(南西航空方面隊防空指令所のコールサイン=仮称)、アンノウンはやはりチャイナ、機種はJー20(殲ー20)が2機、性能を試してみたいが少し嫌な相手だな」「ラージャ、ドッグ・ファイトになっても困るから十分にセパレート(間隔を取る)しろ」殲ー20は韓国が北朝鮮経由で漏洩した在韓米軍の軍事情報を元に中国が開発し、2017年から実戦配備が始まった双発のステレス戦闘機で、Fー15よりも先端の第5世代に分類されている。アメリカ軍はレーダーの出力がFー22よりも大きいため探知距離が長いのではないかと分析しているが、おそらく韓国製の電子部品の精度が劣るはずなので実力は判らない。それでも殲ー20はステレス戦闘機だけに通常の地上警戒管制レーダーでの捕捉は難しいが、南西警戒管制団は那覇基地に常駐している早期警戒機・Eー2Dを運用し、与座岳には弾道ミサイルを探知する超高性能のガメラ・レーダーがあるので問題はない。
「サンセット、アンノウンとは3000フィート(約900メートル)でセパレートしているが異常はない。運動性能を披露すれば良いのにな」中国空軍は民政党政権だった頃には尖閣諸島周辺空域で挑みかかるように攻撃的な飛行を繰り返して航空自衛隊のパイロットたちに冷や汗をかかせたが、あれも新型機に乗ったパイロットが腕試しと性能を確認する相手に最も能力が高い航空自衛隊を選んだのではないかと言われている。これでは立場が逆転したようだ。
「ラージャ、ところで燃料は大丈夫か」「だいぶ腹が減ってきたから交代を用意してくれ」「ラージャ」日本では様々な条件によって危険度・切迫度が異なるため異常接近=ニアミスの数字的距離は明確にしていないがアメリカの航空局では半径150メートル以内、高度差60メートル以内と定義している。それでも高速度の戦闘機で900メートルの距離はかなりの接近になる。しかし、肉眼で視認しながら同行するにはこの程度が限界だ。
「サンセット、アンノウンがレフト・ターンした」「アンノウン、ヒットADIZ(防空識別圏を突破した)。アラート発令」仲好く肩を並べて散歩しているような監視飛行だったが事態が急変した。中国空軍機が左に旋回して防空識別圏を突破したのだ。しかし、対領空侵犯措置の対象になったとは言えまだ領空侵犯には至っておらず、すでに緊急発進で行う国籍の識別、機体の目視確認は終わっているので追随する他に対応はない。
「通告を実施」「ラージャ、チャイニーズとコールしても良いですね」「うん」レーダー・コンソールの席で待機していた見習いの3尉は先任指令官に確認すると通告を始めた。
「ビー・アドバイス(通告する)、チャイニーズ・エアクラフト フライング オーバー イースト・チャイナ・シー(東シナ海上空を飛行中の中国機)・・・」「サンセット、チャイナの1機がベイルアウト、もう1機は離脱する」ここでさらに不可解な事態が発生した。
  1. 2022/03/02(水) 15:23:06|
  2. 夜の連続小説9
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