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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ73

「本日の北京時間の午前11時30分頃、日本国の沖縄県警の武装警察隊が我が国固有の領土である釣魚群島に船舶の航行の安全を確保するための電波信号の発信機を設置し、勤務員の宿泊施設を建設していた漁民20名に対して化学兵器と思われる攻撃を加えて全員を殺害し、同時に日本の海上保安庁の巡視船2隻が海警の警備船・定遠を銃撃してくる兆候がみられたので先制発砲して撃沈した。また武装警察隊も投降を呼びかけても応じないため艦砲射撃により壊滅させた。日本国政府が前回の同様の事態を反省せずに国際法で禁止されている化学兵器を使用して多くの人民を殺害したことに我が共産党は最大の怒りを覚え、国際連合安全保障理事会の常任理事国である中華人民共和国として非難・制裁決議を提出する用意がある」沖縄県警と第11管区海上保安本部が合同捜査本部を立ち上げ、調査団がヘリコプターで尖閣諸島に強行上陸した頃、中国共産党は緊急記者会見を開き日本を批判する声明を発表した。
「沖縄県警が化学兵器を使った確かな証拠があるんですか」「これは海警の警備船・定遠が送ってきた事件の一部始終を撮影した映像です。先ずヘリコプターから下りた兵士たちは全員、防毒マスクを装着しています。これだけでも化学兵器を使用する準備と見て間違いないでしょう」日本人の記者の質問に報道官は用意していた動画の上映を始めた。それは定遠と呼んでいる警備船が近海から撮影した尖閣諸島に大型ヘリが接近し、着陸して後部扉から出てきた国境離島警備隊員たちが地上に展開するところまでの映像だった。
「間もなくガス弾を発射します」報道官は動画を映したまま早送りし、数人の隊員がガス銃を構えたところで通常の再生に戻した。すると圧縮空気の圧力で飛ばすため火焔は出ないが、ガス弾の黒い点が青空に射ち上がっていったのが判った。間もなく上空で赤い落下傘が開き、黄色い煙を噴き出しながら下りてきた。
「ここで注目してもらいたいのは海鳥です。この弾頭が噴出しているガスを吸った鳥が落ちていきます」報道官が解説した通り、落下傘をかすめるように飛んでいた白い海鳥が次々に羽ばたきを止めてもがきながら落ち始めた。
「この現象でも毒ガスであったことに納得してもらえると思います」この念押しに会見場の記者たちが一斉にうなずいたのを確認して報道官は満足そうに大画面に視線を戻した。
「このように地上に落下した弾頭からは大量の毒ガスが噴出しましたが、海風が吹いているため短時間で飛散しました・・・見て下さい。霧が晴れると我が人民たちが倒れています」ここで報道官は動画を停止して映像を拡大した。警備船の船橋からの超望遠による撮影なので映像は不鮮明だが、草むらに白いシャツを着た男たちが倒れているのは判別できた。
「どうやら日本の武装警察隊は毒薬の効果が薄まるのを待っているようです。それだけでなくヘリコプターを呼んでローターの風圧で吹き飛ばそうとしたのですが、それを援護するため巡視船が戦闘態勢に入ったので定遠が自衛措置として発砲しました。これは定遠から撮影した日本の巡視船の画像です。主砲をこちらに向けているのが判るでしょう。海戦の映像は後で見せます」報道官は用意周到に準備した2隻の巡視船の静止画像をテレビとは逆側に置いたスクリーンに投影した。確かにバルカン砲は警備船側に向いているが、プロが見れば警告射撃のために銃口がずれていることに気づくはずだ。しかし、残念ながら軍事的常識を持ち合わせない日本人の記者たちにはバルカン砲本体がこちらを向いていれば十分だった。
「日本の警察はどこで化学兵器、毒ガス弾を入手したと思いますか」気がつけば日本人の記者たちもこの一方的な説明を信じ切っていた。おまけに日本では記者会見での発表を記事にするだけなので取材能力が欠落していることまで自己申告している。
「一般的に化学兵器を保有しているのは軍とその研究所です。この武装警察隊は軍に代わって国境と離島の警備を担当しているようなので軍から移管を受けたのではないでしょうか」「自衛隊が化学兵器を保有していると言うことですか」この記者は馬鹿を丸出しにした。それを聞いている他国の記者たちは嘲笑するように冷ややかな視線を浴びせた。
「日本は民間企業に化学兵器の世界最高峰の研究水準と有数の生産能力を有しています。秘かに保有していても不思議はありません。実際、1995年の地下鉄サリン事件で軍病院(自衛隊中央病院と防衛医科大学校付属病院のこと)は極めて早く毒物がサリンであること解明しました。これは日頃から研究を進めている証左でしょう。現在の日本軍は731部隊の後継者ですから」報道官も日本人記者への教育に熱が入ったのか、説明が脱線と言うよりも飛躍してきた。ただし、どこまでも素人の日本人記者には民間企業が研究し、製造している化学兵器が市販の殺虫剤を指しているとは思いも寄らず、731部隊については名前も知らなかった。それにしても生物兵器=新型コロナ・ウィルスを開発・蔓延させた責任は誰も追求しなかった。
  1. 2022/03/24(木) 15:14:54|
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