対馬最北端の離島に所在する航空自衛隊海栗島分屯基地・第19警戒隊は対岸の韓国まで50キロを切っていることもあり、周囲には韓国の漁民に買い取られた魚を養殖する生簀があって毎日のように漁船でやってきては餌撒きなどの作業に励んでいる。日本の入国管理局や対馬市は「上陸しなければ入国に当たらない」と放置しているが、実際は船を鰐浦漁港に接岸して自動販売機で飲み物を購入し、時には商店で買い物していく。しかし、これも外交・安全保障問題とは次元が異なる市民レベルの国際交流の一環として黙認されている。そもそも鰐浦の集落内には取り締まる警察の駐在所がないのだ(約10キロ離れた隣の集落にある)。
「誰・・・」その日、夫が鰐浦漁港の波止場からの連絡船で出勤し、子供を学校に送り出して官舎のベランダで洗濯物を干していた隊員の妻は背後に視線を感じて振り返った。海栗島分屯基地の官舎は鰐浦の集落の中央にある鉄筋4階建ての幹部用8室、リビングが狭い空曹と独身幹部用が16室の目立つ建物だ。隊員の家は空曹用の3階にある。
「トドゥルジマ(韓国語で「騒ぐな」)」玄関の脇の和室のガラス扉を開けて汚れた作業服を着て日に焼けた男が暗い目をして立っていた。男は固まって動けなくなった妻に素早く駆け寄ると口に用意してあったガムテープを貼り、羽交い締めにして和室に引き摺り込んだ。
「嫌・・・誰か」「この建物では同じことが始まっているんだ。声を出しても無駄だぞ」馬乗りになった男は目を血走らせながら下手な日本語で声をかけてきた。平和な集落の住人になり切っている隊員の妻たちは玄関を施錠する習慣がなく土足で上がり込んでいた。
「我が国では日本人のヨジャ(同・女)に植民地時代に強制連行したオンニ(同・若い女)を慰安婦にした罪を償わせている。テマド(同・対馬島)は間もなく韓国が奪還する。俺がお前を慰安婦にするのはその予告だ」男は妻の身体の上で向きを換えて座ると体重をかけて押さえ、激しくバタつかせている両足を脱がしたGパンで封じた。続いて下着を落とすと腹這いにひっくり返した。男は後背位であれば抵抗を制御できることを計算しているようだ。
その時、壁越しに隣り家の妻の悲鳴が低く聞こえてきた。男が言う通り同じことが行われているらしい。隣りは新婚で夫が浜松基地の第2術科学校に入校中に知り合って以来、人口50万人の大都市と2重離島の遠距離恋愛を実らせた理想の夫婦だ。その妻がこの見も知らない男の仲間に汚されようとしている。妻が女としての怒りを沸き立たせた時、女性器に男の凶暴な男根が荒々しく突き刺された。妻は夫との営みを思い出しながら耐えたが、男の性行為は激しく、結婚以来10数年かけて築いてきた夫婦の絆まで破壊されそうだった。
「タップリ中出ししたぜ、子供が出来れば日韓友好の証として立派に育てろよ。日本が我が国の領土になればその子は名誉になるはずだ」服を脱がすことなく後背位だけで犯し続けた男は聞き覚えがない絶頂の溜め息を口にすると背中に倒れ伏し、その体重で妻も畳に押し潰された。股間に熱い体液が滴り落ちていくのを感じた。
「俺たちの国では姦った女は殺すのが流儀だが、皇帝陛下の国では種まきだけで終わるそうだからこのまま帰る」男は立ち上がると足が届かない位置に移動してズボンを上げた。その間も視線を離さなかったのは夫と同じで軍隊経験で身につけた警戒心かも知れない。
男がドアを開けて出ていくと向かいでも同じ音がした。そして出てきた男の嬌声と会話が聞えたので韓国語で「若かった」「美人だった」とでも自慢しているようだ。そうなると自分を犯した男は「30歳代のババアだった」とでも答えているのだろう。
「奥さん・・・」妻は上の階からも男たちが引き上げてきたのを確認すると隣りに向かった。本来であれば全身をシャワーで洗い流して股間の体液や首筋に落ちた唾液と一緒に記憶も消し去りたいところだが、新婚の妻を優先するところが官舎住まいの作法だ。すると隣りの妻は全裸で畳に背中を向けて寝かされて、肩を震わせて泣いていた。
「奥さん・・・」「大丈夫、私も同じ目に遭ったわ」この慰めは異例だが傷を分かち合うと言う意味では成立する。妻の言葉に身体を起こした隣りの妻の乳房には生々しい歯型が残っている。やはり若く美しい新妻をレイプした男の興奮度はかなり高かったようだ。
「ベランダから飛び降りれば死ねるかしら」「無理よ。馬鹿なことは考えないでシャワーを浴びなさい」妻が手を取って立ち上がらせると隣りの妻の股間から白い滴が垂れ落ちた。
その頃、海栗島分屯基地の波止場では緊急事態が発生していた。出勤する隊員を送って、退庁する夜勤者と外出する営内者を待っていた連絡船に漁船が近づき、火焔瓶を投げ込んだのだ。連絡船は炎上し、燃料に引火して爆発・沈没した。漁船はそのまま海栗島を迂回するように沖に向かい韓国の方向に逃走した。これで夜勤者は足止めされ、官舎の男性はシフト勤務がオフの人間だけになったが、早朝から揃って対馬市内の新台入れ替えのパチンコ屋に出かけていた。

イメージ画像(「俺の空・刑事編」より)
- 2022/03/30(水) 14:42:20|
- 夜の連続小説9
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