「日本国は1951年9月8日のサンフランシスコ講和条約第11条で極東軍事裁判の平和に対する罪、通常の戦争犯罪、人道に対する罪に関する判決を受け容れて戦争犯罪国であることを自認していながら苛酷な植民地支配によって多大な損害と苦痛を与えた被害国の韓国に武力行使を繰り返しただけでなく、今回は我が中華人民共和国の固有の領土である釣魚群島の周辺海域で操業中の文民の漁船を銃撃し、あまつさえ安全航行のための電波発信機を設置していた文民の漁民に対して化学兵器を使用して全員を殺害した」中国は日本政府の反論は黙殺して安全保障理事会に懲罰動議を提出した。それにしても共産党の中国と戦争共犯国とされた韓国はサンフランシスコ講和会議には参加していないはずだ。
「したがって安全保障理事会の常任理事国たる我が中華人民共和国は国際連合憲章第107条が規定する戦争犯罪国である日本国に対して憲章第53条に定める侵略の再現に備える措置の決定を要求するのと同時に同条文にある地域的取り極めとして武力行使による懲罰を加えることを表明する」この国際連合での最後通告=宣戦布告に場内の空気は一気に重苦しくなった。安全保障理事会には日本の国連大使も出席していているが、多くの人命を奪う挑発行為の連続に最悪の事態として予想していた反面、否定する希望的観測も捨て切れていなかっただけに沈痛な面持ちで固く唇を結んだ。
「日本国の侵略の再現を示す具体的な証拠はあるのですか。今回の化学兵器の使用だけでなく韓国との軍事衝突にしても一部マスコミが断定的に報じているだけで、国際機関による科学的検証は行われてないじゃない」「報じているのは中国が経営権を買収したメディアだけよ」中国の発言が終わると常任理事国のアメリカとイギリスの女性の国連大使2人が反論を始めた。非常任理事国は独自に対応できない重要案件だけに様子見を決め込んでいる。しかし、最近は非常任理事国にも中国が支配権を握っているアフリカや東南アジアの国々が選出されているので、黙っておいてもらった方が日本としては助かる。
「ジャパン(=日本)」「日本国としましては安全保障理事会に求められれば日本海から引き揚げた海上自衛隊のPー1対潜哨戒機の機体、その引き揚げ作業を撮影した深海探査艇の映像全編、対領空侵犯措置で発進した航空自衛隊の戦闘機が韓国空軍機に撃墜され、脱出したパイロットがパラシュートで降下中にバルカン砲で射殺されるまでのレーダー映像と交信記録、韓国政府が公開した竹島近海で引き揚げられた警備隊員の遺骸が我が国の行方不明になっている漁民のモノだとする科学警察研究所の鑑定根拠、そしてアメリカ海軍から提供を受けた現場海域上空を飛行していたPー8対潜哨戒機が探知した海上保安庁の巡視船と中国漁船の行動と交信記録、さらに・・・」「また証拠を捏造するのか。クリミアの時と同じだ」「日本国代表の発言が終わるまでの私の使命を受けない発言は禁じます」アメリカとイギリスの指摘を引き継いだ日本の国連大使の反論に常任理事国のロシアが不用意な発言で水を刺すとアフリカの議長が嗜めて日本に再開を促した。
「また先ほど中華人民共和国の国連大使閣下は我が国が尖閣諸島で化学兵器を使用したと断定していましたが、沖縄県警と第11管区海上保安部の合同調査団が現場の尖閣諸島魚釣島で回収したガス弾を東京の科学警察研究所に送って分析した結果、使用されたガス剤は日本国内に存在しないことを確認しました。そこでG7参加各国の関係機関に照会したところ中国国内で使用されているガスに類似しているとの回答を得ています」本当は新疆ウィグル地区に潜入していた某国の諜報部員が民族弾圧で殺害された現地人の遺骸で採取した毛髪から検出されたのだが情報機関の活動は秘匿しなければならない。
「議長、戦争犯罪国の日本は常任理事国である我が中華人民共和国に化学兵器使用の戦争犯罪をなすり付けようとしている。これは国際連合に対する冒涜であり、断固許されざる暴言だ」「最後に日本国はこれらの証拠をこの場に提出する用意があります」自分の国も大量の武器を供与され、巨額な財政援助を受けている議長が中国の国連大使の高圧的な態度に黙ってしまうと日本の国連大使が話を割り込ませて締め括った。
「日本が提出する証拠を国際機関で検証してからで良いんじゃあないの」「これまで日本が国連で果たしてきた貢献を思えば中国と韓国が主張する侵略の再現の方が信じられないわ」「韓国は前任の国連事務総長を出している。日本よりもはるかに貢献しているはずだ」「その事務総長が何の貢献をしたんだ」日本と中国の国連大使と議長まで黙って睨み合いを始めると残った常任理国が雑談的に議論を始めたが、どこか他人事だった。
「これで手続きは終わった。我が党は懲罰を実行する」最後に中国の国連大使が毛沢東の「外交は血を流さない戦争、戦争は血を流す外交」と言う定義が踏襲されていることを示した。
- 2022/04/06(水) 16:29:51|
- 夜の連続小説9
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0