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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ103

「これがクレイモアかァ」「1基25ドルだから3万円だな」航空自衛隊ではアメリカ国内の大都市で継続している在米中国人と南北半島人の大規模な反日デモが暴動に激化することを懼れるホワイトハウスが日米安全保障条約の発動を躊躇している代償のように武器と弾薬を供与し、森田敬作定年2佐が第3術科学校の警備幹部課程で導入を業務計画要望するように強弁していた指向式散弾地雷・クレイモアとゴムやプラスチックの散弾(BB弾)を射出するため殺傷力が弱いM5がレーダー・サイトを含む全ての基地に配分された。陸上自衛隊はスウェーデン軍の同様の指向式散弾地雷をライセンス生産したFFV113を使用しているが増産は間に合わず「航空自衛隊に分配する余裕はない」と断られていた。ただし、英文の取扱説明書の日本語訳が間に合わず、小隊長が辞書を引きながら翻訳して教育を終えてからの設置になった。森田定年2佐が浜松基地の警備小隊長時代にも暗視眼鏡の取扱説明書が英文で翻訳すると手元の地図や文書を見る機能などが判り大活躍させた。森田定年2佐は元警戒管制員だけに英語は得意だったが部内出身の警備小隊長たちは苦労したらしい。
「ランウェイ(滑走路)の両側に並べるんですよね」「今回はM5だから良いが、クレイモアになると散弾がランウェイに落ちてFODになるから5メートルほど間隔を開けるんだ」某基地でも警備小隊員たちが指揮官の小隊長に加えて第3術科学校で爆発物の取り扱いの教育を受けている施設隊と有線ケーブルの敷設を担当する通信隊のベテラン空曹の指導を受けながら作業を始めた。防衛出動待機命令の間は殺傷力が低いM5を設置し、防衛出動が下達されて戦闘が開始された時点でクレイモアに交換する予定だ。
「試射して実際の威力を見た方が良くないですか」「M5だから問題はないな」施設隊の空曹の提案に警備小隊長も同意した。警備小隊長も第3術科学校の警備幹部課程では岩国基地の海兵隊憲兵隊の研修でクレイモアの現物を見たが実際の威力は未経験だ。
バーン、ヒュンヒュン。ランウェイに並行するように設置したM5を起爆させると耳をつんざく爆発音とBB弾が空気を引き裂く悲鳴のような音が鳴り響いた。これならば防衛出動が下達された後も隊舎地区で使用できる。流石に森田定年2佐は目のつけどころが違う。
「方向を正面にしないと監視カメラで発見した侵入者を殺すことができないぞ。散弾の到達範囲は前方180度、半径16メートルだから30メートル間隔に設置しよう」警備小隊長は運用の立場で作業を指揮している。クレイモアは人間による遠隔操作で起爆するため対人地雷禁止条約から除外された。航空自衛隊では森田定年2佐の構想を採用してランウェイの両側に並べて設置して監視カメラで侵入者を発見すれば起爆する運用を考えている。これで夜間に配置する歩哨の人数と監視範囲を大幅に削減できると言う訳だ。
「しかし、有効射程50メートルだから基地外に届かないように気をつけないといけません」すると施設隊の空曹が反論した。この空曹も作業に先立って警備小隊長が実施した教育に参加していて飛散する散弾の最大射程250メートル、有効射程50メートル、加害範囲前方180度、半径16メートルと言う性能が強く記憶に残ったようだ。陸上自衛隊で地雷は施設科が取り扱うのだから興味を持っても不思議はない。
「戦争法では文民の居住地域を意図的に攻撃することは戦争犯罪だが、戦闘中の基地に近づいた人間が巻き込まれても責任は負えん」「なるほど・・・」警備小隊長の解説に施設隊の空曹は相槌を打ってうなずいた。同じ管理隊の輸送小隊は有事になっても平時の道路交通法の厳守と安全運転を隊員に徹底しているが、施設隊はあくまでも事故を防ぐ作業安全であって運用を否定・阻害するつもりはないようだ。
「遠隔操作するケーブルはどうしましょう。本体を交換する度に敷設し直すのは非効率的です」次は通信隊の空曹が声をかけてきた。クレイモアにも起爆スイッチと本体をつなぐケーブルは装着されているが監視カメラの映像を注視している警衛所までの距離が遠いため通信用の有線ケーブルを接続しなければならない。今回、クレイモアは全長3000メートル前後のランウェイでも格納庫とエプロンから外れた区域の両側に設置するためかなりの長さのカーブルと作業を必要とする。陸上自衛隊のFFV113であればリモコン式だが混信による誤作動の危険性があるためクレイモアでは有線誘導を選択した。
「接続部分の交換要領を教育してもらえれば次回からは警備小隊単独で実施できるはずだ」「指向式だからケーブルをランウェイ沿いに敷設すれば損傷することはないでしょう。それなら使用済みの本体を交換するだけですみます」通信隊の空曹の答えに作業している警備小隊員はM5と通信用有線ケーブルの接続部を確認したが、警備小隊長は交換が必要になるのは侵入者を殺傷した時であり、遺骸の収容と負傷者の救護を実施している光景を想像した。
  1. 2022/04/23(土) 15:00:33|
  2. 夜の連続小説9
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