ロシアのウクライナ侵攻から2カ月が過ぎ世界各国の態度の色分けも定着してきましたが、マスコミはロシアを「絶対悪」と断定しているヨーロッパとアメリカに日本が同調すること当然視して、完全に同調しないアジア各国の態度に勝手な疑惑の目を向けています。
その癖、ロシアの共謀者であることを公言している共産党中国への批判は控えていますが、非難決議と人権理事会からの除名に賛成しなかったインドとパキスタン、バングラデシュ、スリランカの南アジア4カ国や東南アジアのベトナムやラオスの真意の推察は本質を見誤り、中でもインドについては安倍政権が共産党中国の一路一帯戦略に対抗するため樹立したアメリカ・日本・オーストラリア・インドの地域戦略対話=「QUADの信頼性が消滅した」と勝ち誇ったように安倍政権の失策扱いしています。
南アジアでもインドとパキスタンは長年にわたり戦火を交えてきた宿敵であり、インドとスリランカもタミル人を反政府ゲリラにして内戦による間接侵略を画策していますからこの問題で意見の一致を見るとは考えられず、それぞれの利害関係で出した結論が共通になってしまっただけでしょう。実際、インドはソ連時代から武器を輸入していて現在はそれに原油が加わっているので経済制裁に加わることはできず、パキスタンは同じ民族のアフガニスタンへのアメリカの侵攻に加担したことで国民と中東各国からの批判が湧き起こり、スリランカは内戦の巨額の戦費を共産党中国から借用してその返済期限が迫っているためロシアではなく中国に逆らうことができないなどそれぞれに事情があるようです。
ヨーロッパは多様な民族が共存しているアメリカ以上に一神教のキリスト教の画一的な正義感を堅持しているため国際情勢も事態が発生した原因や経緯に関係なく自分たちの価値観で一方的に正と悪=白と黒に分類して懲罰を加え、同調しない者も共犯者にしますが、南アジアのインドはヒンドゥー教、パキスタンとバングラデシュはイスラム教、スリランカは南方佛教、東南アジアのベトナムとラオスも佛教国です。
このうちイスラム教はキリスト教と同じく一神教ではありますが、苛酷な砂漠で生きる人々がモーセの十戒を守れない罪をアッラーが許すことを基盤としているためキリスト教のように世界を自分たちの正義で統一しようとする野望は抱くことはなく、アッラーが与えた戒律に背かなければ正義よりも生活優先で功利的な判断を専らにしています。ヒンドゥー教は雑多と思われるほどの多神教なので広い国内には多様な価値観が共存と言うよりも相互不干渉で好き勝手に振る舞っています。南方佛教は因果応報・諸法無我の世界観から原因を探求して評価は当事者の事情に応じて「適当=いい加減」を基本としています。
そのため戦後の経済復興に苦慮していたベトナムはベトナム戦争中の1968年に韓国海兵隊がフォンニィ・フォンニャット村とソンミ地区で住民を大量虐殺した罪をいまだに認めない韓国の企業の進出と都市開発を受け入れ、南沙諸島の領有権を巡って軍事衝突寸前の対立関係にある共産党中国に国内で韓国企業が生産した製品を輸出するなど経済面では極めて密接な関係を維持しています。これはナチス・ドイツを断罪し続けているヨーロッパから見れば許し難い変節ですが、アジアの柔軟性と見るのが日本人の知恵でしょう。
- 2022/04/26(火) 15:45:22|
- 常々臭ッ(つねづねくさッ)
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