日本の国際協力機構=JAICAからの円借款165億円でフィリピン沿岸警備隊に供与される2隻の2260トン級のヘリ搭載巡視船=警備船のうち1隻目が就役し、スペインの植民支配に抵抗した女性から「テレサ・マグマヌワ」と命名されました。
海上保安庁の巡視船には主に太平洋の遠洋で運用するPLH(=1000トン以上の大型でヘリコプター搭載する)のあさづき(「あきづき」ではない)級=6500トンやしゅんこう級=6000トン、東シナ海や日本海と太平洋でも小笠原諸島などの近海で行動しているPL(1000トン以上の大型でもヘリコプターは搭載しない)のみやこ級=3500トンやひだ級=1800トン、はてるま級=1300トンが主力ですが、近海で活躍しているPM(1000トン未満で350トン以上の中型)のかとり級=650トン、くなしり級=335トン、さらにPS(350トン未満の小型)のたかちほ級=195トンなどがあり、これまでも2016年から2018年にPSのびざん級=197トンなど10隻が供与されていますが、今回の2260トンのヘリコプター搭載型はないので南シナ海での運用を前提にした新規設計の特別製のようです。
日本は安倍政権だった2014年4月1日にそれまでの「武器輸出三原則」を撤廃して「防衛装備品移転三原則」を定め、「日本国政府が締結した条約、その他の国際約束に基づく義務に違反している場合」「国際連合安全保障理事会の決議に基づく義務に違反している場合」と「紛争当事国」を除外した国を武器輸出の可能対象にしましたからフィリピンの沿岸警備隊に20ミリバルカン砲1門で武装した巡視船を供与しても問題はないでしょう。それにしても武器輸出三原則だった頃にはイラン・イラク戦争中のイランに建設工事用のブルドーザーを輸出したところ社会党が国会で「陣地建設に使用すれば武器だ」と追及を始め、購入者が民間の建設会社と判っても「排土板を上げて防弾壁にすれば戦車の代用になる」と詭弁を弄して反対しましたから本当に愚かしいことでした。
その一方で海上保安庁の巡視船の船体は商船式構造なので海上自衛隊の護衛艦のような軍用艦艇としての強度を持たず、2001年12月22日に発生した九州南西海域工作船事件の時には北朝鮮の工作船が発砲してきた自動小銃の銃弾が船橋の正面ガラスを撃ち破り、舷側の階段などを貫通して防弾の掩体として役に立たないことを実証してしまいました。また2011年9月7日の尖閣海域漁船衝突事件では並走する形で後部舷側に衝突された巡視船・みずきはびざん級=197トンのPS(フィリピンに供与したのと同型)だったとは言え衝撃で船体が歪み、修理・復帰には多大な労力と高度な技術を要したようです。
そして問題なのはフィリピンの沿岸警備隊が南シナ海で対峙する中国の海警は海軍の艦艇に白色に塗り替えて警備船に転用していて、最近はフリゲート=巡洋艦を武装も変更せずに導入したらしく(以前は旧式の駆逐艦を警察船にするため武装は機関砲1門に変更していた)非常に難敵です。
フィリピン軍、特に海軍と空軍は「アジア最弱の軍隊」と言われていますからせめて沿岸警備隊の充実には全面的に協力しなければなりません。
- 2022/05/08(日) 14:28:21|
- 時事阿呆談
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0