fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ123

「ここまで酷いことになっていたのか」「日本国内で銃弾が飛び交っているのね」今回の茶山元3佐の定期便はかなり遅れていた。日本からの郵便物を載せたヨーロッパ航路の貨物船が中国海軍の潜水艦が暗躍するインド洋を避けたため太平洋とパナマ運河経由で大西洋を横断することになったらしい。その新聞にはヨーロッパのニュースでは概要しか報じていない日本国内での在日中国人の暴動が詳しく載っていた。先ず驚いたのは国会議事堂周辺での銃撃戦だ。
「この状況から推理すると国会内に乱入して首相以下の閣僚と全議員を人質にするつもりだったようだな」「だから自衛隊が治安出動したのかァ」梢の返事も外れていることは次の新聞で確認できた。国会の会期中に議事堂周辺を警備する警視庁を支援するために機動隊を増援に出していた東北の県知事が県内の重要防護地域を警備する人員確保のために治安出動を要請したらしい。日本の新聞の報道姿勢から考えれば自衛隊の治安出動には徹底的に反対するはずだが、国会を守るために警察官が8名犠牲になっていれば言葉をつぐむしかない。
「その自衛隊は機動隊じゃあなくて銃刀法の家宅捜査に投入されたんだな。確かに治安出動では警察官と同様の職務権限が与えられるから問題はないが・・・」「それで縁冠(ぺりかん)食堂にも来たのね」梢は淳之介が電話で言っていた話に結びつけた。縁冠食堂には中国漁船に海上保安庁の巡視船が衝突された事件の調査に石垣島へ行った時に淳之介に案内されて以来、機会があれば利用しているが、あの陽気で親日的な店主も中国で生活している親族が人質になっている以上、国家からの命令を拒否することはできないはずだ。
「茶山さんがA日新聞を入れてくれてるわ」テーブルの中央に山積みにして日付が古い順に回し読みしていると梢が1番上になっている新聞が違うことに気がついた。茶山元3佐はテレビの報道バラエティの新聞解説で興味深い記事が紹介されるとコンビニエンス・ストアで買って同封してくれることがある。それにしてもA日新聞とは珍しい。
「何々・・・歴史の教訓に学べってか」梢が席を立ってA日新聞を手渡し、横から覗き込んだので見出しを確認しながら開いていくと社会面に如何にもA日新聞的な見出しがあった。添えられている写真は第2次世界大戦中に荒涼たる砂漠に作られた強制収容所で暮らすアメリカ西海岸に居住していた日系人たちの生活風景だった。
「要するに拳銃を不法所持していた在日中国人を拘束するのを止めろって言ってるんだな。彼らが拳銃を入手したのは日本国内の対中国感情が悪化しているから護身のためで、已むに已まれぬ自衛措置だ・・・そうだ」「A日新聞が書いてるってことは沖縄の地元2大紙も書いてるわね」A日新聞はソ連のプラウダ、中国の人民日報の日本版としての紙面造りができない時にはこの手の教訓めいた記事で読者を幻惑させる。確かに日本政府が在日中国人の存在を危険視して強制収容しているのであればアメリカ海軍の太平洋艦隊が壊滅して日本軍の上陸・占領を真剣に危惧していたフランクリン・ルーズベルト政権が日系人を強制収容した過ちの繰り返しだが、今回は在日中国人と言う身元だけで家宅捜査の対象にしたことは極めて異例でも、摘発されたのは拳銃を不法所持していた犯罪者だ。むしろ銃撃戦の後、国会内で拘束された徳島水子と同様にA日新聞の幹部も犯罪への共同正犯として逮捕するべきだ。とは言え戦前であれば政治犯として特別高等警察が拷問を加えてくれるが、現在の警察は高度な法律の知識で反抗する人権派弁護士の徳島水子も持て余しているらしいので期待はできない。
「それから航空自衛隊浜松基地で侵入者に指向式散弾地雷を使ったのか・・・その侵入者は在日韓国人だったって」「今度は韓国人なの」新聞の山が低くなった来たところで読んだ記事には予想はしていたが起こっては欲しくない展開が載っていた。私は防府市内のスナックで働いていた在日韓国人の女性から「韓国人にとって中国に忠誠を尽すのは本能のようなもの」と聞いていたので日米韓の同盟関係などは全く信じていなかったが、これでは最悪のタイミングと場所で共同戦線を張られたことになる。
「おまけに東京都内では警察が高圧電線に仕掛けていたクレイモアで在日中国人と半島人が5人死んだぞ。浜松基地では距離が遠くて散弾が体内に残っただけですんだが、こっちは至近距離だったから即死したそうだ」「警察も地雷を使うようになったのね。やっぱり戦争よ」戦時下の窮乏を想像もしない日本人の文化生活を破壊して不満を煽るためには電力の遮断による大規模停電が常套手段であり、警察が送電線の警備に万全を尽くすのは至極当然だ。その一方で各鉄塔に警備要員を配置できない以上、代替え手段として航空自衛隊の基地を参考にして電力会社の監視カメラによる指向式散弾地雷の遠隔操作を採用しても不思議はない。おそらく電力会社の社員に作動させたのではなく警察官か自衛官が1名監視所に詰めていたのだろう。梢が呟いたようにこれは戦争なのだ。
つ・純名里沙イメージ画像
  1. 2022/05/13(金) 14:29:32|
  2. 夜の連続小説9
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<5月13日・イタリアでバザリア法が公布された。 | ホーム | 5月13日・航空自衛隊が初めてホット・スクランブルを実施した。>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/7651-6cd2446c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)