1973年の5月13日にイタリアで精神医療と福祉を規定した精神保健法が公布されました。この法律はイタリアでは精神科医の立場から精神科病院の廃止を最初に提唱したフランコ・バザリオ医師にちなんでバザリオ法と呼ばれています。
この法律では「精神科病院・医院の新設とすでにある医療機関への新規入院、1980年以降の再入院を禁止する」「予防・医療・福祉は原則として地域精神保健サービス機関で行う」「治療は患者の自由意思による」「やむを得ない場合のために一般病院に15床程度の病室を確保するがその管理は地域精神保健サービス機関が担う」、さらに自傷他害のおそれがあり、公序風俗に反する人物の強制入院も「緊急時の介入や必要な医療行為が拒否された場合」で「2人以上の医師が個別に診断し、地域精神保健サービス機関以外での治療を指定した場合」に限定し、「市長や市の保健担当部署の長の承認と48時間以内の裁判所への通知」を義務づけ、「強制期間は7日以内」「延長はその都度同様の手続きを踏む」「本人や親族は裁判所に抗告することができる」と定めています。
野僧は持病の内臓疾患が悪化して愛知県の某市民病院の内科に入院した時、検査結果が悪かったことを説明に来た担当医に「生者必滅、誰もが必ず死ぬのだから早い遅いに大した意味はない。早く楽になれるなら有り難いことだ」と答えたところ「自殺願望がある」と断定されて院内の精神科に転科させられました。すると精神科病棟は患者にストレスを与えない対応が徹底している上、自死未遂の男性患者が多いためなのか生きる希望を抱かせるような気立てが優しい美女の看護師が揃っていて数多く経験した入院の中では最高の療養生活を送ることができました。
その一方で精神科医と話していて日本の精神医療の問題点も痛感することになりました。野僧は現役時代、坊主の士官と言うことでアメリカ軍では従軍牧師が担当している戦場心理カウンセリングの講習を受けたことがありますが、アメリカでは精神上の問題を抱える人物は先ず心理カウンセラーと面接し、そこで病的と判断されれば精神科医を紹介されるのに対して日本では両者が対象者を奪い合って精神科医は否応なしに投薬し、心理カウンセラーは言葉でなだめすかすことに専念しています。さらに日本の精神医学会と心理学会は独自の研究成果を蓄積しておらず欧米の学界の受け売りに終始しているため日本では昔から認知されていた同性愛志向を「性同一性障害」と言う病的特異気質にしてしまい異性愛との両刀使いで社会性を維持し(子孫を残す)、異性との性的快感で同性愛志向が解消する機会を奪っています。同様に日本では昔から生活の一部として受け入れていた「死」をキリスト教社会式の「恐怖」にして「PTSD=心的外傷後ストレス障害」を大安売りして、それが商売になるので精神医学会と心理学会が縄張りを争っています。
日本でバザリア方が報道された時、一部の言論人がその可否を議論しようとしましたがオランダの安楽死法と同様に組織の保全と医師の保身のために医学界全体が黙殺を決め込み、前述の問題が議題に上ることもなく忘れ去られました。しかし、前述の不適切な診断は最近の問題なので遅れ馳せながら議論の必要がありそうです。
- 2022/05/13(金) 14:31:11|
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