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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ124

「皇女さまには困ったものだわ」「大使館はニューヨーク市警にも警護を要請したけど私人の警護には明確な理由が必要だって断られたみたい」アメリカの東西両岸の大都市では日本国内の武装した在日中国人と韓国人の破壊活動に警察と治安出動した自衛隊が厳格に対応していることに抗議する大規模デモが激化しているが、そんな中で本間郁子と松山1佐の妻・裕美にはワシントンの日本大使館の防衛駐在官・帖佐陸将補から内密に特別命令が課せられていた。天皇家の娘が進学したキリスト教系の大学で籠絡された同級生と結婚して駆け落ち同然にニューヨークへ移住したのだが、その夫は「国際弁護士を目指す」との触れ込みにも関わらず資格試験に合格できず弁護士事務所の事務員として勤務している。元皇女は結婚によって皇籍を離れているので公式な警護は付けられず、無資格の事務員の収入ではボディガードを雇うこともできない。しかし、ニューヨークの反日デモの危険性は高まる一方だ。そこで対応に苦慮した大使の相談を受けた帖佐将補は武道の心得がある2人に特別命令を下したのだ。
「こっちに来てからは旦那と2人で教会に通ってるんでしょう。洗礼を受けたのかしら」「キリスト教系の大学で知り合ったくらいだからクリスチャンになっても不思議はないわね」元皇女は世間知らずぶりを存分に発揮してニューヨークでの生活を満喫しているが、博物館の学芸員の仕事の傍ら毎日曜日には夫と教会の朝のミサに通っている。尤も、祖父の前の天皇も敗戦直後の中学時代に占領軍の命令でキリスト教でも過激な教義で孤立している教派の狂信的な信者の女性を家庭教師にして洗脳され、幼稚園から大学までカソリック系の一貫校で学んだ女性を妻にした。そのため海外訪問では必ずカソリックの聖堂に立ち寄り、随行員が視線を反らしている間に妻と礼拝していたと言われている。隠居した現在はカソリックとしての信仰生活を送っていても不思議はない。一方、現在の天皇も妻=皇后は根っからのプロテスタントであり、イギリス王室に留学した時には国教会のミサに参加し、妻の両親が赴任していたオランダを訪問すると家族で教会のミサに参加していたと言う。
「本人が好きでニューヨークに来たんだし、本気で嫌がっているんだから放置すれば良いのよ」「大使館員が公用で接触したら日本のマスコミに『監視されてる』って電話したくらいだもんね」元皇女は結婚前の取材で極端なプライバシー保護を吹き込んだマスコミ関係者だけを信用していて日本政府との接触は完全に拒否している。そのため本間と松山裕美も交代で遠巻きに同行する羽目になっている。それでもミサの後には市街地を徘徊し、危険な場所にも平気で立ち入るのではマンションに帰るまで目を離すことはできない。
「閣下からは『護衛は市街地だけで良い』って言われてるけど教会や博物館でも不特定多数の人間と接触するでしょう。今の状況ではどこで危害を加えられるか判らないわ」腹に溜めている苦情を吐き合って気分が晴れた本間は幹部らしく任務上の問題点を指摘した。とは言え2人とも家族に犠牲を強いるこれ以上の拘束時間の延長は拒否するしかなく、本間に関してはデモ隊内の中国人たち会話を調査する本業への影響も懸念される。
「確かに女性としての警戒心が欠けているみたいだから危ないわ」松山裕美も同意した。元皇女は皇宮警察の警護によって安全を確保され、忠誠心を尽す側近たちに囲まれた無菌状態の中で育ったため皇室を邪教である神道のトップ一族と見ているキリスト教系の大学に入学した途端、それまでも多くの女性遍歴の噂があった美男子の同級生に簡単に籠絡された。その同級生は母子家庭で育ちながら母親が資産家に肉体を提供することで手に入れた潤沢な資金で贅沢三昧な学生生活を送り、上流階級の御曹司を演じていたらしい。
「これはあくまでも噂だけど今の天皇一家はこれ以上日本が危険になったらオランダかイギリスに亡命するつもりらしいわ」「オランダ王家はナチスに侵攻された時にイギリスに亡命したけど、あれは女王夫婦と王女の家族だったから国民も許したのよ」「でも天皇一家は娘しかいないから家族構成は同じよ」唐突に松山裕美が妙な情報を持ち出した。諜報員の本間が聞いたことがない噂話なので大使館員にも大学時代の人脈を持つ松山1佐が個人的に入手した風説の類のようだ。しかし、今の天皇の妻は元外交官であり、同じく外交官の父親が赴任する海外での生活が長いので日本的美意識の欠落を感じさせる面がある。したがって国家元首ではなく象徴と位置づけられている天皇に戦火の中に留まる責任はなく、むしろ安全地帯に逃れる方が日本が存立していることの象徴として機能できると考えても不思議はない。一方、深沢七郎の日本で革命が起こり、先々代の天皇夫婦が首をはねられ、皇太子だった前の天皇夫婦も公開斬首される醜悪な夢物語「風流夢譚」が文芸春秋に掲載されたのは昭和36年2月1日であり、それが原因で凶悪事件が発生したので今の天皇が読んでいる可能性は無いに等しい。単に母国を離れながら大規模な反日デモを目の当たりにして苛立っている外交官たちの妄言だろう。
  1. 2022/05/14(土) 13:49:27|
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