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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ144

「中国はかなり焦っているようですね」ニューヨーク市内の中国人華僑の反日デモに潜入してきた本間が事務所に帰ると松山1佐に結果を報告した。最近はデモにアメリカ在住の南北半島人が急増しているので韓国語に堪能な杉本と岡倉も参加していて、松山裕美は今日も皇女の警護に出ている。だから事務所に残っているのは松山1佐と見習いのリンゾーとジュウゾー、2人を指導している松本の4人だけだ。松山裕美が警護している皇女は日本のマスコミの女性記者に「勝手に警護を付けられて監視されている」と苦情を吐いたため国家の存亡に直結する対中韓問題で手一杯のワシントンの日本大使館に余計な仕事を付加していた。
「やはり流石の中国共産党も予定外に長期戦化してしまってロシアの二の舞を踏んだことを自覚したんだな」万国語の日常会話に精通している松山1佐は国際連合本部を担当しているので本間の報告に即座に同意した。中国は思うままに動いた韓国の前政権に間近に迫った大統領選挙でも有利に働くと言う計算で日本への武力行使に踏み切らせたが、新型コロナ・ウィルス感染症対策の行動制限に対する反発や学生の深刻な就職難によって若者たちの支持を失っていたため後継候補は僅差で敗北した。その後もマスコミによる世論操作を強化しながら反日親中で固まっている軍を使って挑発的武力行使を続けているが、自衛隊は期待した本格的な応戦はしないであくまでも国内法の枠内で行動している。
「中国としては韓国の挑発に日本が過剰反応すれば中国系マスコミを使って加倍政権の積極外交を『軍国主義の復活』と国際社会に喧伝してきたことが事実として証明できたんだが、これでは歪曲になってしまうな」「自衛隊としては好い加減に手枷足枷を外して思い切り任務を遂行させてもらいたいんでしょうけど、今のところは良い効果を上げているようですね」松山1佐の見解に珍しく本間が杉本譲りの計算を働かせた評価を返すと松本の指導を受けているリンゾーとジュウゾーが振り返って感心したような視線を投げてきた。
「だから中国は自ら武力行使に踏み切ったんだ」「あれは否って言うほど韓国と同じ手順でしたよね」「韓国は海上自衛隊の対潜哨戒機を撃墜して次はスクランブル機を撃墜した上で脱出したパイロットを殺した。そして竹島の守備隊を襲撃して皆殺しにしたと言う冤罪だ。中国はスクランブル機に撃墜の濡れ衣を着せるのに失敗すると巡視船を2回で4隻撃沈した。とどめに尖閣で毒ガスを使ったと言う冤罪を演出して常任理事国としての懲罰権の行使を宣言した」ここで松山1佐は松本とリンゾー、ジュウゾーを招き寄せて対話に参加させた。これは先輩たちの各方面の調査活動に同行するだけでなく報告や雑談にも接している2人の理解度を確認する段階試験でもあった。
「それで奄美の島を占領しようとしたところが海上における警備行動を発令された海上自衛隊機の警察権の行使で撃沈されたんです」「ならば太平洋上に設定したシーレーンで船団を潜水艦で攻撃しても護衛している海上自衛隊には先制的武力行使は許されないと踏んで実行したら同行していたアメリカ海軍が代わりに撃沈してくれました」「おまけに日米海軍は攻撃した事実を認めずに日米協同訓練中に遭遇した海難事故扱いで議会に報告しました」「撃沈したミサイルも訓練で発射したことにしました」「回収した遺骸も海上自衛隊の救難活動の結果です」2人は次々に頭の中に記憶し、整理している情報を並べ始めた。しかし、これでは単なる記憶力の披露と誇示に過ぎない。すると松山1佐の前に松本がそれを指摘した。
「それらの状況の背景や影響を分析しなければパソコンにデーターを入力しているのと変わらないぞ。正確さから言えばパソコンの方が上になる。今言った情報で判ることは何だ」2人は陸上自衛官なので海上自衛隊の行動に関する予備知識は乏しい。それは航空自衛隊の松本以外のメンバーも同様だが、情報を分類することなく全体像を把握し、第3者的な視点で分析することを繰り返すことで今では「軍事」と言う枠さえも超越した理解力を身につけている。
「1つ判ることはアメリカ海軍と海上自衛隊が完全一体化していることです。両者はすでに相互補完する態勢を完成されているのではないでしょうか」「もう1つ判ったのは海の上でのことは陸からは見えないことです。だから日米安保の発動に反対している中国人デモ隊と躊躇しているホワイトハウスもこの事件には触れていない。軍事衛星を使えば中国は事実を知っているはずですが偵察衛星の監視能力を暴露できないから発表しない。日米海軍恐るべしです」若造2人の熱弁を松本は苦笑いしながら聞いていたが松山1佐は真顔で口を開いた。
「アメリカにいると視界が日本に届かないことになる。今、日本では中国が大量に持ち込んだ拳銃による犯罪が激増している。自衛隊が治安出動して警察と協力して抑えているが、焦った中国が次に何を仕掛けてくるのか・・・」松山1佐の指摘に本間も深くうなずいた。本間がデモ隊の中で必死に探っているのも中国が打つ次の一手だった。
  1. 2022/06/03(金) 14:55:23|
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