古志山人閑話続・振り向けばイエスタディ１４５

続・振り向けばイエスタディ１４５

「あれじゃあどっちが日本を侵略したいのか判らんぞ」松山１佐が松本と本間を助教にしてリンゾーとジュウゾーに中国が日本に加えてくる次なる攻撃を思案させていると杉本と岡倉が帰ってきた。今日のデモには３人で潜入したのだが、本間は中国人、２人は半島人の集団の中で会話を聴き取っていたのではぐれてしまったのだ。
「菊子、やっぱり先に帰っていたか」「うん、迷子になっちゃった」杉本は長机の席に並んで座っている新人２人に両側から松本と真顔で圧迫している本間に声を掛けた。杉本は自宅では本間郁子の本名で呼んでいるが、職場では岡倉の島村と同様に今田菊子の偽名で通している。この偽名は最初に手渡された偽造パスポートに記載されている所有者の氏名だが、当時はアメリカ国内で所在不明になった同世代の人物のパスポートに写真を張り替えるなどの偽造を加えて使用していたため生年月日や本籍地などの個人情報も暗記して本人になり切らなければならなかった。その後、加倍政権当時に自衛隊の非合法組織の存在と活動が政権中枢まで認知されたので新品の完全な偽造パスポートを受け取ることができるようになり、だからリンゾーとジュウゾーも松山１佐が趣味でつけたコールサイン的偽名だった。
「今田くんからは中国人のデモ参加者が手詰まり感を口にしてかなり焦っている様子だったと聞いているが・・・」「確かに前に立って扇動している中国人の指導者の口調もそんな感じでしたね」「中国人エリアは苛立ちが充満していて女房を単独で潜入させるのが不安になりました」「ありがとう、貴方」松山１佐の確認に岡倉、杉本の順で答えたがオチは本間がつけた。
「半島人は中国人を取り巻く形で参加していたんですがこちらは完全な興奮状態で、中国人たちに『次は何をするんだ』『もう終わりか』と罵声を浴びせていました」「それは危ないな。中国人だから『警察に介入させる口実を与えるな』と言う上層部の指導も徹底されるが、半島人が興奮状態になれば手がつけられん」松山１佐の返事に韓国の国民性を熟知する岡倉と杉本もうなずいた。松山１佐は妻の裕美から警護している皇女がチャイナ・タウンで中国人の若者に拉致されそうになった時、普段は中国人が外国人と揉めれば無条件に加勢してくる周囲の店舗の店長や通行人まで完全に無視していたことを聞き、あくまでも個人の犯罪として皇女を拉致し、回収してきたスプレー缶の市販の媚薬＝性的興奮剤を吸わせた上で性行為を撮影して世界に拡散させる計画だったと推察していた。あれがコリアン・タウンであれば例え上層部から自重するように厳命が下っていても興奮した若者たちは皇女を集団レイプしてその動画が大々的に世界中で公開されただろう。当然、警察は徹底的に捜査し、関係者を逮捕することになる。
「半島人たちが中国人に浴びせている罵声を聞いていると日本で警察と自衛隊が全ての在日中国人の家宅捜索を進めて、かなりの拳銃が押収されていることに強い不満を感じているようで、次に在日韓国人と朝鮮人が対象になる前に拳銃を渡せとかなり具体的な要求をしています」「拳銃を渡せば代わりに日本人を皆殺しにしてやると叫ぶ声もかなりありました」「確かに日本では拳銃が在日韓国人に渡って犯罪に使われる事例が急増しているようだ。このままでは発砲事件が暴動になり、間接侵略の内戦に発展する可能性は否定できないな」松山１佐の見解にリンゾーとジュウゾーは顔を見合せて先ほど受けた「アメリカからでは日本に視界が届かない」と言う指導を思い出した。
「おまけに北の人間が南の人間に対馬に射ち込んだのが地対地ミサイルだったから大した効果がなかった。今度は北が代わりに弾道ミサイルを実験してやる。まだ核爆弾の小型化は完成していないが、最大の通常弾頭でも小さな離れ島を吹き飛ばすくらいの威力はあると豪語していました」「海栗島のことにエラク詳しいな。遠からず北も介入してくるつもりかも知れませんね」唯一の航空自衛官である松本の見解にようやく揃った全員がうなずいた。
「しかし、韓国の現政権は表向きとは言え中国の傀儡、北の従僕だった前政権とは真逆の外交姿勢を表明していますが、陸軍が地対地ミサイルを発射するのを黙認してアメリカとの信頼関係を再生できると考えているんですかね」「現政権は親米でも親日ではない。今の韓国では親日派は生息できないんだ。軍も陸海空のトップが前政権の国防部長官を持ち回りしたように反日で固まっている。経済が完全な中国依存では反抗はできないよ」「面従腹背が国是ですからね」杉本と岡倉が加わって会話の内容は一気に充実した。
「それでは２人に訊こう。我々の活動の範囲に関係なく今の日本が国家としてやるべきことは何だ」ここで松山１佐が新人２人の顔を見ながら段階試験を出題した。
「やはり国交断絶と防衛出動の発令です」「両国在住の日本人の国外退避でしょう」２人の回答はお情けの及第点だった。２人ともそれなりの一般大学卒だが、ゆとり教育世代なので思考力においては急速練成する必要がありそうだ。