「沖縄の治安状態はどうなんだ」「うん、微妙なところだね」日本への公務出張帰国が決まって私は淳之介に電話を入れた。佳織の根回しが極めて綿密だったのか東京では陸海空自衛隊だけでなく警察庁や海上保安庁から一部のマスコミまで調査に協力してくれることになり、治安が良いとは言えない東京のホテルで梢を単独で待たせるよりも沖縄に帰らせ、私が沖縄県警に行って合流することにしたのだ。これも日本の移動制限が緩和されたおかげだ。
「この間、俺も海上保安庁の事情聴取を受けたんだよ」「お前が海上保安庁の事情聴取を受けるなんて船の整備不良が見つかったのか」淳之介は相変わらず石垣島と西表島の間の水路上に点在する離島を巡る連絡船の船長なので海上保安庁が取り締まる外洋での犯罪に関わる機会があるとは思えない。考えられるのは法定検査で整備不良が見つかったことくらいだ。海上保安庁は重大な事故が発生すると管区内の船舶を抜き打ち的に検査することがあるのだ。
「俺個人と言うよりも会社の与那国島や波照間島なんかの遠距離航路で中国の拳銃を密輸入していないかって話だった」「与那国には陸上自衛隊があるから反対派に渡されると危ないな。この間、佳織と電話していたら銃声が聞こえたんだ。自衛隊も狙われるようになったんだな」先日の電話で聞いた銃声は基地外の車道の乗用車から隊舎に向けて発砲したそうで隊舎は防弾ガラスではないので距離的には威力が落ちてもガラスにヒビが入り、外壁のタイルが破損する程度の危険性があるようだ。治安出動が発令されているので自衛隊には警察と同等の職務権限が与えられているが、警察官の武器使用は護身と職務執行を目的とする自己判断なので自衛隊式の命令による応戦は難しい。相手は在日中国人なので自衛隊の基地警備の法的限界を確認するために発砲してきても不思議はない。
「お前の会社が調べられるくらいだから沖縄にも拳銃が大量に流入しているんだな」「自衛隊の基地は実弾を持って警備するようになったけど官舎に発砲されて家族が怪我しているよ。最近のコンビニ強盗は拳銃を突きつけてくるんだって。テレビでやってるアメリカみたいだ。本物だから怖いね」私が3等空曹だった昭和58年9月1日の大韓航空機撃墜事件で中曽根康弘内閣が撃墜の事実を認めないソ連に対して「自衛隊が傍受・録音しているパイロットと地上指令所の交信音声を公表する」と通告すると航空自衛隊のレーダー・サイトに模擬攻撃を繰り返し、緊急発進した戦闘機に火器管制レーダーを照射してきた。これに対して航空自衛隊は戦闘機を急速整備で全機稼働状態にした上で武装を施して戦闘態勢を整えた。私は実弾を詰めた弾倉を装着した小銃を携帯して列線=エプロンで待機している完全武装の戦闘機の警備に当たった。今思えばあれも実戦経験に他ならない。
「それじゃあ梢を帰らせるのは危ないかな」「お義母さんはシマンチュウだから大丈夫だよ。狙われてるのはナイチャアの自衛官と家族だけなんだ。本土では自衛官の奥さんや娘がレイプされて動画をネットに投稿されてるけど沖縄では官舎に発砲されてすぐに航空自衛隊の輸送機で帰したから心配ないみたい」戦場で女性を見つければ手当たり次第にレイプするのはソ連(ロシア)軍と韓国軍の常套手段だ。私もロシアが侵攻したウクライナでレイプ後に惨殺された女性の遺骸を幾つも見た。ロシア軍はレイプを隠蔽するため女性の遺骸を焼却(火葬とは言わない)しようとしたのだがウクライナ軍の攻撃を受けたため放置して逃亡していた。また戦闘地域から避難して保護された女児から老女たちからも途中のロシア軍の検問で母親が通過させる見返りに肉体を要求され、そのまま同乗している娘や母親までレイプされた耐えがたい体験を告白された。私は満洲や樺太に侵攻したソ連軍が日本人の集落を占領すると住民を男女(生理が始まって終わるまでの女性)に分け、男性はその場で刺射殺し、女性は散々にレイプした後に惨殺した戦史を思い出してしまった。韓国軍も朝鮮戦争の共産主義者刈りで同胞の女性をレイプして惨殺したのを始め、ベトナム戦争でもファンニィ・フォンニャット村やハニ村でソ連軍以上のレイプを繰り返した。しかし、在日韓国人たちが日本で同様の蛮行を始めたのは長年居住している土地を戦場と認識していることになる。そうなれば日本人にとって敵になるのだがそこまで思考が及んでいるとは思えない。おそらくA日新聞や政権与党だった立権民衆党を含む野党が公言している通り、「自衛隊は日本人にとって内なる敵」と言う感覚なのだろう。確かに私自身もデモ対処で殺されかけたことがあるが、彼らは私=自衛官を殺すことに罪の意識は持ち合わせていなかった。
「お母さんが来るならあかりと子供たちも首里に帰さないといけないな。来年の春には恵祥は中学生、いりえも小学生になるんだよ」「そうだよな。ワシは爺さんになったからな。それでも梢は相変わらず可愛いぞ」「でも2人は同じ年じゃあないか」結局、梢と私が沖縄に行くことは「当然」のように決定したが、久しぶりの帰国だから「当たり前のクラッカー」だ。

(レイプ後に殺害されたクルド人民兵の遺骸)
- 2022/06/07(火) 16:52:58|
- 夜の連続小説9
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