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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

果たして陸海空自衛隊の統合運用が可能なのか?

防衛省は2006年に制服組のトップ・統合幕僚会議議長が防衛大臣の補佐だけでなく指揮権も有する現在の統合幕僚長になって以降、検討してきた運用専門の統合司令官の新設が組織の形態や部隊の設置場所などの具体的段階に入ったことを明らかにしました。
アメリカ軍は地域単位で所在する陸海空軍海兵隊部隊を統合運用する制度になっていて自衛隊と同じ守備範囲の在日アメリカ軍司令官は横田基地の第5空軍司令官が兼務しています。その意味では陸海空自衛隊が統合運用に移行するのは「何を今更」と感じるかも知れませんが、野僧は逆に「止めておいた方が好い」と言う嫌な予感の方が強いです。
陸海空自衛隊の統合運用は東北地区太平洋沖地震以降、2013年の台風26号による伊豆半島の水害と台風30号によるフィリピンの暴風被害、2016年の熊本地震、2019年の台風19号による東北・北関東の水害で経験していますが、東北地区太平洋沖地震では初体験だったと言うこともあり、いまだに表面化していない問題点が多数露呈していました。その最たるモノが統合司令部内の陸海空の意思疎通の滞りでした。
東北地区太平洋沖地震では在日アメリカ軍が「オペレーション・トモダチ」として災害派遣に参加したこともあり連絡官が会議に参加したのですが、自衛隊の会議では資料を配った内容を作成者が口頭で説明して延々と質疑応答するため朝から始まった会議が午後まで続くことが常態で、アメリカ軍は「この会議は時間の浪費以外の何物でもない」と資料で配った内容の説明は各人が読んで個別に質問するように要求したのです。
野僧は愛知県岡崎市の矢作南小学校でのドルトン式教育でアメリカ的思考方法が土台として構築された上、3等空尉に任官して最初に勤務した春日基地の西部航空警戒管制団司令部ではアメリカ空軍の指揮幕僚課程に留学した幕僚の教えを受け、次の浜松基地ではアメリカ空軍士官学校の教官を務めた基地業務群司令の指導を受けましたから航空自衛隊士官としての思考は完全にアメリカ空軍式で、自衛隊と言うよりも帝国陸軍式の防府南基地の第1教育群本部では話が全く噛み合わず大変に苦労しました。
アメリカ軍の参謀は指揮官の頭脳としての機能に徹して入手した情報を報告する時には率直な見解を述べますが、帝国陸軍の流れを汲む陸上自衛隊と陸軍航空士官学校出身者がそれを持ち込んだ航空自衛隊では参謀・幕僚は側近として「上司の意図を体する」ことを重視して常識的判断を披瀝し、承認を受けることを専らにしています。その点、海上自衛隊は野僧が一般幹部候補生を受験した当時の海上幕僚長の統率方針が「アメリカ海軍及び陸空自衛隊との連携強化」とあったように発想はアメリカ式で陸空自衛隊とは異質です。
自衛隊は外国軍の士官将校が別々の陸海空士官学校で教育を受けているのに比べて防衛大学校の同窓生なので統合運用は容易と言われていますが、アメリカ式に陸海空の幕僚がそれぞれの見解を自由に述べて意思統一を図り、指揮官も体面にこだわることなく素人として率直に質問して一度判断を下せばトップ・ダウンに徹する組織体質に成長しなければ無理です。その前に在日アメリカ軍が日本全土を1つの軍管区にしているのに倣って陸の方面隊、海の地方総監部、空の航空方面隊を廃止するべきでしょう。
  1. 2022/06/09(木) 15:03:51|
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