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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ161

「佳織ちゃん、今日は愛しのダーリンと一緒なのね」墓参を終えると佳織が予約した観光ホテルにチェック・インしてから夕食をとり、建物の構造はそのままにして閉店したママさんの元スナックへ行った。訪問も佳織が連絡してあったようでママさんはカウンターで接客の準備を整えていた。スコッチの水割りで乾杯するとママさんがいつも調子で佳織をからかった。
「はい、日本が巻き込まれている紛争の実態調査で来日しました」「来日じゃあなくて帰国でしょう」オランダを生活基盤としている私の言い間違いをママさんは鋭く指摘した。しかし、今回の来日=帰国では今まで以上に違和感が付き纏っている。今朝も東京駅では新幹線のホームに武装した多くの自衛官が立っていて乗客が下車し終わると手分けして車内を確認していた。このような光景はテロが頻発していた頃のヨーロッパで見慣れているが、乗車を待たせる自衛官に黙って従っている日本人が不気味だった。
「ヨーロッパではどのように思われてるの。やっぱり日本が悪者よね」「始めは中国系のマスコミがA日新聞の現地記者に協力させて韓国の主張を全面的に喧伝してたけど日本の対応が冷静な上、公開している証拠も韓国側の否定の方が嘘っぽいから誰も信用しなくなっていきました。そこに中国の登場で完全に配役決定です」私の説明にママさんは安堵したように自分のグラスの酒を飲んだ。スナックを営業していた頃は酔うほどは飲まなかったが今回は少しピッチが速い。やはり商売ではないので気楽に酒を楽しんでいるようだ。
「貴方、今日は有り難う」私とママさんの会話を黙って聞いていた佳織が唐突に口を挟んだ。とは言え改まって礼を言われる理由が判らない。私はグラスの酒を飲みながら顔を見返した。
「今日、墓苑で古河に会っちゃったの」「古河ってあの古河なの。前にも会ったじゃない」佳織は私ではなくママさんに事情の説明を始めた。どうやらハワイから帰国した佳織を弄び、傷つけた中学校の担任は古河と言うらしい。
「帰ってきた頃の佳織ちゃんは典子に心配かけないように慣れない制服を着て痛々しいほど元気を出して中学校に通い始めたんだけどすぐに登校しなくなって。話を聞いた典子やお祖父さんが中学校や教育委員会に抗議しても『佳織が古河を誘惑した』って反論して生徒やPTAに噂を流したのよ。だから神戸の私立中学に転校させたんだけど・・・」「何年か前に1人で墓参りした時に今日と同じ場所で古河たちに会ってしまったの。だけど何もできなかった。そうしたら今日は旦那さんが一喝してくれたのよ。私は離れて見てたけど古河は怯えたような顔になって妻と息子の嫁から追及されていたわ」暗い過去の説明に佳織が今日の出来事を補足するとママさんは快哉を叫ぶ代わりにグラスで私に捧げ銃をした。
「お前は地獄へ堕ちるって宣告してやったんだ。罪状も遠回しに言っておいたから妻子も問い詰めないといられないだろう」「お坊さんに墓場で言われたら恐ろしい台詞ね。旦那さんのことだから裁判の判決みたいだったんでしょう」今思い返すとママさんの分析が正しいことが判る。「40年前にハワイから転校してきた女生徒にした罪」と時期と被害者を明確にされてしまうと言い逃れは難しいはずだ。ただし、私は判決を申し渡す裁判官ではなく公判で罪状を追求する閻魔王庁の検察官と名乗っておいた。
「だから今日の佳織ちゃんは妻の顔に戻ってるんだ。好い顔してるよ。写メを撮るね」ママさんは一気に捲くし立てるとカウンターに置いてあったスマート・ホンを取って私と佳織を撮った。その瞬間、佳織は顔を寄せて頬を密着させた。やはり酔っているのか少し頬が熱い。
「貴方、一緒にシャワーを浴びて」「それは良いけど酔ってないのか」「大丈夫」ホテルに帰ると佳織はロッカーに入っていたナイト・ウェアとタオルを持って声を掛けてきた。
実は私は今回の帰国に際して佳織と離婚について話し合うつもりだった。おそらく佳織は現在の事態が終結すれば陸将補を最後に退官することになる。その後、ハワイに帰る予定は変えていない。ハワイでの第2の人生に戸籍上だけになっている私との婚姻関係は不要と断ぜざるを得ない。勿論、梢はそのようなことを求めていないし、強硬に反対するはずだ。むしろこれは同期として出合った自衛官同士の戦友夫婦の定年退官だろう。
「お願い、貴方の手で私の身体を洗って下さい・・・性器も」先にシャワーで自分の髪を洗った佳織は思いがけない依頼を口にした。私は梢とは毎日一緒にシャワーを浴びるが、背中を手で洗うついでに乳房を揉む程度だ。一方、佳織とは子供がいたため特別な時だけだった。それでも佳織の目にあの頃以上の特別な力を感じて背中から丁寧に洗い始めた。
「貴方の手でアイツに汚された私の身体が清められていく、やっと私は救われる・・・」愛撫ではなく手で洗っているだけだが佳織は恍惚の表情を浮かべた。その夜は綺麗に洗った全身に唾液を塗る作業も追加されたが私の更年期は回復しない。やはりバイアグラが・・・・。
  1. 2022/06/20(月) 11:38:00|
  2. 夜の連続小説9
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