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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ163

翌日は春日基地の西部航空方面隊司令部に向かった。電車好きの私としては春日駅まで鹿児島本線で行きたかったのだが、佳織=モリヤ陸将補が調整しただけにビジネス・ホテルまで業務車1号が迎えにきた。おまけに到着するとそのまま2階の西部航空方面隊司令部に案内されて空将の司令官に挨拶させられた。しかし、作務衣に威儀細では自衛隊の作業服の乙武装に相当するのでかなり拙い。首都圏ではエライさんへの挨拶は佳織に任せていたのだ。
「モリヤ検察官の活躍ぶりは現役時代から聞いていますよ」申告のように机越しに対面した司令官は合掌して45度の敬礼をした私が直るとアメリカ式に手を差し出した。これが陸上自衛隊であれば私の元2等陸佐の階級に見合った接遇をするので陸将の方面総監が握手を促すことはあり得ない。妙に航空自衛隊が懐かしくなった。
「8空団の撃墜事件については総隊司令部で航跡記録と交信音声、中央病院で遺骸の状況を確認しています。こちらでは海栗島のレーダー・サイトの破壊と官舎が襲撃された事件についてお願いします」「はい、そのように連絡を受けているので西警団司令部から担当者を呼んであります」司令官への挨拶が終わると担当の監理部の2佐に先導されて2階の教場に移動した。教場にはコンピューター画像を表示する機材が用意してあり、男女の1尉が待っていた。
「西警団人事部人事班の立花1尉です」「防衛部運用班の豊田1尉です」先任順位はWAFの立花1尉の方が上のようで先に自己紹介した。この人選でも佳織の事前調整が適切なことが判る。おそらく豊田1尉が地対地ミサイルによるレーダー・サイトの破壊、立花1尉が官舎で妻たちが集団レイプされた事件を説明するのだろう。
「それでは時系列順に立花1尉から海栗島の官舎が韓国から潜入した男たちに襲撃された事件について説明させます」「連絡船の放火炎上事件の説明はないのかね」「そこまでご存知でしたか。実は隊員と妻たちの名誉を守るために当初は事件を隠蔽しようとしたのですが、インターネットに画像が投稿されてしまったので逆に犯罪被害者であることを強調するようにしています。オランダでも閲覧できましたか」「いや、別ルートからの情報で両方の事件の概要は掴んでいるよ」私の核心を明かさない回答に3人の現職自衛官は顔を見合わせた。実際は在オランダ大使館の河瀬防衛駐在官から入手したのだが、部内とは言えこちらも情報源を保全する必要がある。それでも国際刑事裁判所が注視していることは虚偽を弄していない自衛隊にとってもマイナスではないはずだ。
「それでは本題に入ります。事件は・・・」立花1尉は努めて冷静に説明を始めたが、インターネットからプリントアウトした隊員の妻たちが強姦されている場面の画像を1枚ずつ示しながら行為の具体的な内容では目に怒りを露にし、やがて言葉に詰まり、ついには涙を零した。男性としては性的刺激を受けることがあるレイプも女性にとっては肉体だけでなく人格さえも破壊される凶悪な犯罪であり、おそらく同世代の妻たちが味わった苦痛が我が身にも実感されているに違いない。その点、私は梢と佳織もレイプを経験しているので(美恵子が那覇市内で集団レイプされたのは離婚後なので無関係)苦悩の一部は共有できる。
「事件後、西部方面隊を通じて調整した結果、航空教育集団隷下の第3術科学校が入校学生用に契約している新日鉄の元社宅を借用できることになりまして早急に避難させることができました」「避難の決定が遅かったんじゃあないか。日韓の軍事的緊張が高まれば至近距離にある海栗島や見島が真っ先に狙われるのはイロハのイだろう」立花1尉が話をまとめようとしたので私は検察官ではなく自衛隊OBとして禅僧なら警策に当たる痛撃を加えてしまった。
「事件前に同じことを言ってきたOBがいました。確か第3術科学校の警備課程の・・・」「森田敬作か」「そうです。ご存知でしたか」私が立花1尉に与えた一打に防衛部の豊田1尉が反応した。それにしても今回の来日では妙に森田敬作の名前が出る。
「森田元2佐は韓国海軍が海自の対潜哨戒機を撃墜した直後に空教隊と3術校の教育職を使って海栗島と見島の警備の強化を提言してきたんです。森田2佐は警備の神さまと呼ばれていたそうですが陸上でも有名だったんですね」「私にそんな提言が届いたことを話さなかったじゃない。それを聞けば私なら実現に向けて真剣に考えたわ」今日の参加者は私が陸上自衛隊幕僚監部法務官室で勤務していた元2等陸佐であることは聞いていても森田定年2佐と同期の一般空曹候補学生7期出身とは知らないようだ。隊員の妻たちの性暴力被害を防ぐ方策を講じられなかった責任を自分に課したらしい立花1尉が豊田1尉に喰ってかかったおかげで今も後悔が残っている空から陸への落下(転身とは言わない)を告白しないですんだ。
結局、韓国の地対地ミサイルによるレーダー・サイトの破壊については撤退を優先したため遺骸の収容や現場検証などはできていなかった。
  1. 2022/06/22(水) 15:30:01|
  2. 夜の連続小説9
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