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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

NHKには「峠」を大河ドラマにする責任がある。

現在、これまで映像化されたことがなかった司馬遼太郎先生の作品を松竹が「雨あがる」の小泉堯史監督で映画化した「峠・最後のサムライ」が大ヒットしているようです。
NHKはこれまで司馬先生の多くの傑作のうち明治100年の幕末ブームだった昭和43(1968)年に坂本竜馬と中岡慎太郎さんが主人公の「竜馬がゆく」、昭和48(1973)年に斉藤道三さまと織田信長公、明智光秀さまの「国盗り物語」、昭和52(1977)年に村田蔵六さんの「花神」、1990年に西郷南洲翁と大久保利通さんの「翔ぶが如く」、1998年に題名通りの「徳川慶喜」、2006年に山内一豊・千代夫婦の「功名が辻」の6作品を大河ドラマに、2009年から2011年まで「坂の上の雲」を年末連続ドラマにしていますが、「峠」は「花神」の後半で摘み喰した以外はドラマにしておらず(民放も)、大河ドラマに主人公の河井継之助さんが登場したのは2013年の「八重の桜」のワン・シーンと「花神(高橋英樹さんが演じた)」のそれだけです。
司馬先生は昭和37(1962)年から昭和41(1966)年まで「竜馬がゆく」を産経新聞の夕刊に連載したのに続いて昭和41(1966)年から昭和43(1968)年まで毎日新聞に「峠」を連載した頃、「読者にはこの2つをワンセットとして熟読しながら両者の立場を考え比べてもらいたい」と語っていたそうなので、これだけ恩恵に与かっているNHKはその後の大河ドラマの少なくとも2010年の「龍馬伝」に代えて福山雅治さん主演で実現する責任があったはずです。
実際、高知市内では産経新聞の夕刊に連載されていた頃には地元では配達されず、全国的にも少数派だったので観光客の増加も皆無に等しかったのですが、NHKの大河ドラマで放送されると主演の北大路欣也さんの人気も伴って観光客が爆発的に急増し、その目的が坂本竜馬の足跡を辿ることだったため地元では子供が言うことを聞かないと「竜馬さんが来るよ」と脅すような忌まわしき存在だった坂本竜馬が一転して郷土の偉人となり、その後も学園闘争の嵐の中で坂本竜馬を日本の革命家にした小説や漫画、ドラマが次々に発表され、司馬先生の創作=捏造に過ぎない情に厚く涙もろい自由奔放で豪放磊落な好青年と言うイメージが史実として固定してしまいました。
しかし、山口県出身の佐藤栄作内閣が主導した明治100年の頃には多くの国民も討幕を正義とする明治から戦前の洗脳教育の記憶が呼び覚まされていましたが、現在では同じく山口県出身の安倍晋三首相、奥羽越列藩同盟にとっての裏切り者・秋田県出身の菅義偉官房長官でさえ明治近代化150周年と戊辰戦争の勝利を誇示することを憚らざるを得ない歴史の再評価が進んでいて坂本竜馬の実像が悪徳武器商人に過ぎず、戊申戦争は武器を大量に売りさばくために画策した可能性が証明される日も遠くないかも知れません。
その意味では最新の西洋事情に精通していながらも武士としての義に殉じた河井継之助さんの生き様(「いきよう」と読む)を遅れ馳せながら学び直す必要があり、NHKにはその責任があるはずです(本当は司馬凌海先生、松本良順先生、関寛斉先生などの医師の視点で幕末史を描いた「胡蝶の夢」が見たいものです)。
  1. 2022/06/25(土) 15:14:19|
  2. 常々臭ッ(つねづねくさッ)
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