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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ168

「貴方、お帰りなさい」「お祖父ちゃん、こんにちは」那覇空港では梢が孫娘のいりえを連れて出迎えていた。淳之介としては恵祥もあかりの補助を兼ねて同行させたかったようだが、島の小学校で唯一の高学年としての責任感から辞退したらしい。
「本当はあかりも来たがったんだけど何かあると危険だから家で待たせたわ」梢は事情を説明して顔を曇らせた。私は来日して以来、日本の新聞やニュースを詳しく見ているが国内での発砲事件は根絶できていないようだ。治安出動した自衛隊による家宅捜査で在日中国人と韓国人に配布されていた中国製の92式手槍は相当数押収されたが、持ち込まれた実数が不明なので手を緩めることができない。私が博多や長崎の夜の街を歩いている時も遠くで銃声を聞き、ホテルに帰って見たテレビではどちらも「コンビニ強盗が発砲」と字幕のニュース速報が流れていた。こうなると武器の供与による間接侵略ではなく犯罪の過激化に過ぎなくなる。
今回の来日では海外旅行用のキャリー・バッグは先に梢が沖縄に持ってきて私はスポーツ・バッグに衣類を詰めていた。本当はそのスポーツ・バッグと調査に赴いた先々で渡された資料を入れたアタッシュケースだけが手荷物だったのだが、熊本で山中区隊長から自家製沢庵が入った中型の段ボール箱を渡されたので1人では持てなくなってしまった。そこで梢が片手でいりえの手を引き、反対の手に私のスポーツ・バッグを提げ、私は段ボールの上にアタッシュケースを載せて両手で抱えて人影まばらな空港のロビーを歩き出した。
「沖縄でも発砲事件が続いているのか」「拳銃を使った強盗はかなり増えているみたい。後は拳銃で脅して女の子をレイプしたり、若い子たちの喧嘩が射ち合いになったり、昔は刃物でやっていたことに拳銃を使うようになってるわ」「要するにアメリカ風の犯罪になってるんだな」私の納得に梢は肩をすくめてうなずいた。ヨーロッパでも民兵制を敷いている国では市民は自宅で自動小銃や拳銃に弾薬まで保管しているから「銃社会」と危険視されているアメリカと大差はないが銃器を使った犯罪の発生件数は比較するまでもない。一方、沖縄は島津に支配された江戸時代に刀剣を取り上げられたため中国伝来の少林武術を唐手(とうでい)と呼んで護身術とした。だから沖縄空手の型には鎌や鋤などの農具を使った技もある。一方、昔の任侠映画では本土のヤクザが手にしている武器の出処を「不良アメリカ兵から買った」と説明する場面があったが、占領下の沖縄では憲兵隊の取り締まりが民間の日本人にまで及んだためそれ程でもなかった。むしろ地元のヤクザの抗争では隠し持っていた日本軍の武器を使ったらしい。そんな平和な沖縄で銃器が蔓延しては絶対に困る。
「それでも普天間のアスプレイに発砲した反基地運動の活動家がいたんだけど数日後に射殺死体になって発見されたんだって」「アスプレイは無事だったのか」「事故にはならなかったみたい」空港から首里に向かうモノレールに乗るといりえを挟んで座った祖父母の時事解説の対話が再開した。蔓延した中国製の拳銃が反アメリカ軍や反自衛隊の政治闘争に使用されたとなると単なる犯罪の過激化ではすまなくなる。
「殺されたのは本土から移住してきた元日教組の教員で普天間基地の移設反対運動の指導者だったみたい。今までもアスプレイが着陸してくると鉄片を張りつけた風船を大量に飛ばしたり、レーザー・ビームでパイロットの目を狙ったりしてたんだけど今回は集まっている仲間に拳銃を見せびらかせて『確実に落とす』って宣言してアスプレイに向かって弾がなくなるまで射ったそうよ。当たらなかったのかしら」「アプローチ(直陸)高度は低く見えるけど意外に高いから素人が命中させるのは無理だな。マグレで命中しても拳銃弾ではキャノピー(風防)を割るほどの威力はないだろう。しかし、その実行犯の殺害が問題だ」「両親が取っておいてくれた新聞を読んだけど『遺骸を発見』って言う第一報以外は年齢や学歴、経歴なんかの個人情報を続けただけで『最近、県内で頻発している拳銃を使用した犯罪に巻き込まれたのでは』と言う結論で終わっていたわ」私は佳織から今回の武力侵攻では中国が日米安全保障条約の発動を阻止することに万全を期していて、日韓の武力衝突が発生して以降、在日韓国人が自衛隊基地に抗議デモを繰り返しても在日アメリカ軍基地には近づかなかったと聞いている。おそらくその元教員は個人的に拳銃を入手して有頂天になり、英雄気取りで憎むべき宿敵・アメリカ軍のアスプレイを撃墜しようとしたため北京の意向を慮る(おもんばかる)在沖縄中国人組織によって処理されたのだろう。結局、中国共産党にとって外国人の活動家などは使い捨て自由の小道具に過ぎず、邪魔になれば意図も容易く破棄できるのだ。その元教員は70年代の学園紛争で毛沢東主義に洗脳され、崇拝する同志・毛沢東への忠誠一筋に中華人民共和国を理想郷とする教育を日本人の子供たちに施してきたのだろうが、長年描き続けてきた夢=中国共産党による日本統治が実現する直前で道を踏み誤って地獄へ堕ちたようだ。
  1. 2022/06/27(月) 14:45:21|
  2. 夜の連続小説9
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