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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ172

沖縄県警では予定外に大量の資料を受け取った。自衛隊中央病院でも韓国軍機のバルカン砲の銃撃で滅茶苦茶になったジージョの遺骸の画像の複写を受け取ったが今回は格段に量が多い。
「よッ、久しぶり」殉職した国境離島警備隊の隊員たちの遺影が並ぶ小会議室で慰霊の読経を勤めた後、担当者の警視に正面玄関まで送られて来ると意外な人物が待っていた。それは少林寺拳法の仲間だった名城慶文だった。名城は地元の大学を卒業して沖縄県警に入って警視にまで昇任したようなので後輩=元部下が私の来訪を知らせたようだ。
「元気そうだな。相変わらずのイケメンだけど頭はロマンス・グレーなんだね」名城は当時、人気だった広岡瞬似の美男子で一緒に飲みに行っても女の子が夢中になって私は放置されていた。そんな名城も頭は白髪と言うよりも全体が銀髪で渋い魅力が増している。
「梢をオランダに連れてったんだね」「よく知ってるな、流石は警察だ」私の返事を皮肉に感じたようで名城は一瞬表情を険しくした。しかし、私としては警察の地域住民の現状把握は日本式防犯手法として高く評価しているのでむしろ称賛だった。
「俺たちが58歳になった年に高校の卒業40周年記念で同級会をやったんだ。その時の案内状に梢の親がオランダの住所を返信してきたんだよ。それで同級生の間では旅行社務めだったから早期退職して海外移住したんだろうって話になってたけど今回の調査委依頼でモリヤがオランダの刑事裁判所の検察官になったって知ってピンと来たんだ」「流石は警察だ」今回は間違いなく称賛なので同じ台詞を繰り返せば先ほどの誤解は解けるはずだ。
「今回は梢も帰ってるんだろう」「勿論、実家で孫娘を子守りしてるよ」「そうか会いたいな・・・今夜一緒に飲みに行こう」旧友同士の会話が弾んでくると手持ち無沙汰になった担当者の警視は姿勢を正すと名城に自衛隊と同じ10度の敬礼をして私にはついでのように会釈をつけ加えて戻って行った。私として航空自衛隊式に握手をしたかったが今回は駄目だった。
「梢、久しぶりさァ」夜は梢と2人で待ち合わせた松山の歩道橋の下に出かけ、名城の行きつけのスナックに案内された。梢とつき合っていた頃にも名城と彼女と待ち合わせて3人の高校の同級生が大学の学費を稼ぐためにアルバイトしていたスナックに飲みに行ったことがある。梢たちの高校は沖縄県下でも有数の進学校なので会話が高度で勉強好きの私には丁度良かった。
「部長さんのボトルで好いですね」名城は警察官だっただけに取り締まりを受けていたスナックのママさんはかなり緊張した顔で接待している。ボトルが並んだ台から半分残っているオールド・パーを取って見せるとおそるおそる確認した。
「もう部長でも警察官でもないよ。ただのガードマンのボスになったんだ。もっと気楽に接してくれ」どうやら名城は警備保障会社の管理職になったらしい。警備保障会社が警察官の天下り先になっているのは聞いたことがあるが、モノレールしかない沖縄でも同様のレースが敷かれているようだ。それにしても再会した時に名刺を渡さなかったところを見るとまだ営業にまでは意識が及んでいないのではないか。確かに警察官は名刺を悪用されないように渡す時に相手の名前を消せないように記入するなど慎重だが、民間の警備保障会社では委託先を発掘するのが経営努力なので求められなくても押しつけるのが常識だ。
「梢、顔を見せてくれよ」ママさんが水割りを作り、3人の前に置くと名城はマスクを取った梢に声をかけた。今夜はささやかな同級会でもあり、梢を真ん中にして私と名城が挟んでいる。するとママさんは私の連れである梢を名城が口説くのではないかと困惑した顔を向けた。
「お前も60過ぎになったんだろう」「孫がいるからオバアさァ」何故か真顔を向けた梢に名城は妙な確認をした。3人は同級生なので年齢は判っている。したがって名城にも孫がいても不思議はない。私とは違い名城は孫にとって若々しく素敵なオジイだろう。
「幸せそうだな、安心したよ。モリヤとは結婚してないって聞いたから愛人にされたのかって心配してたんだ」「思いっ切り愛される人と言う意味なら幸せな愛人だよ」公式には秘書兼家政婦の梢は茶化したように答えた。私が性的能力を喪失しているため清く正しく美しい同棲生活を送っていると説明したいが1度だけの奇跡で不貞行為を働いていた。何よりも名城は全身から男の色気を発散していてまだ現役バリバリのようだ。
「それは一体、どんな関係なんだ」「正妻公認の熱愛同棲中の復活カップルね」「もう1つ言えば息子夫婦から見ればどちらにとっても実父と実母、義父と義母なんだ」私の説明は不要だったようで名城は反応しなかったがママさんは首を傾げた。
「本当は同級生に声をかけて集めたかったんだが、いくら行動制限が緩和されたって言っても完全な三密だろう。次に来る時は早めに連絡してくれ」やはり名城は取り締まる立場の幹部警察官だ。ママさんも安堵したようにうなずいた。
へ・純名里沙イメージ画像
  1. 2022/07/01(金) 14:27:33|
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