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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ178

「ノースコリア(北朝鮮)のロケット捕捉」同じ頃、航空自衛隊中部航空方面隊防空指令所でも経ヶ岬分屯基地のJ/BMD3=通称ガメラ・レーダーが捉えた北朝鮮が宇宙ウロケットと称する飛翔体を確認していた。テポドンが日本列島を越えて岩手県沖の太平洋まで飛んだ時には最新機材のガメラ・レーダーの性能や周波数などを秘匿するため探知範囲を制限していて見逃す失態を犯したが、その後の民政党政権が防衛装備品の秘密情報の大半を中国に献納・朝貢したので今回は最大性能を発揮して日本海のイージス護衛艦と相互補完できている。ちなみにテポドンの時は航空自衛隊の通常の警戒管制レーダー網は航跡を捕捉できず、日本海上のイージス護衛艦によって日本列島を越えて太平洋に落下したことが確認された。
「捕捉できるのは20秒間だけだぞ。ロスト(航跡消失)しないように注意しろ」「それにしても宇宙ロケットが何故、日本海なんですかね」「北の国王陛下の意向だろう。上がったぞ」スコープを注視している隊員たちは画面上で伸びていく長い直線に生唾を呑んだ。この光の線の長さは速度を表しているが普通の航空機とは比べ物にならない。仮に防衛大臣から破壊措置命令が下達されていても高射部隊が迎撃ミサイルを発射するまでに弾道ミサイルが到達しているのは誰が見ても明らかだ。任務に対する真剣味が薄い高射部隊が即座にミサイルを発射できる態勢を維持して発射ボタンに手をかけたまま待ち続けるとは考えにくい。その点、陸上自衛隊の高射特科部隊は発射準備を終えると何時でも発射できる態勢で1週間待機し、最終日に模擬の防空戦闘で終わる演習を繰り返しているから真面目にやりそうだ。
「ヘディング(方位)がずれています。Yビーム(経ヶ岬のコールサイン・仮称)に向かいます」「弾頭が空中分解したようです、地上到達まで3秒、2、1、ナウ(今)」「到達点を特定しろ」スコープから航跡が消えると上の階の中部航空方面隊指揮所が即座に指示してきた。
「ラジオ(無線通信)でYビームを呼べ」「小松、スクランブル。目的は弾頭到達地域の偵察」すると先任指令官は矢継ぎ早に具体的な現状確認を実施させ、地下25メートルの暗くて広い地下室で室温17度の防空指令所内が熱気を帯びた。
「Yビーム、Yビーム、ディス・イズ・センチュリー(中部防空指令所のコールサイン・仮称)、センチュリー」「センチュリー、ディス・イズ・Yビーム」先任指令官と視線が合った兵器管制幹部が座っていたコンソールから呼びかけると聞き覚えがある経ヶ岬の若い空曹の声が返ってきた。少なくとも施設は無事なようだ。海栗島のレーダー・サイトに韓国の地対地ミサイルが着弾した時の状況は春日の友人から聞いているが、何度呼びかけても全く反応がなくスコープ上に一瞬だけ表示された長い航跡の意味を実感させられたらしい。
「ホット・スクランブル。ドラゴン(6空団の飛行隊のコールサイン・仮称)31、ツーFー15、ベクター210(方位210度)、クライム・エンジェル(上昇高度)・・・任務、若狭湾上空からの地上の確認」「ラージャ、ドラゴン31、任務、若狭湾上空からの地上の確認」一方、小松基地に緊急発進を指令したWAD(兵器指定指令官)は災害派遣によるスクランブルは未経験だったため途中で規則違反の日本語になってしまった。しかし、パイロットも同様だったらしく返事も日本語だった。そうなると方位は無用だ。
「センチュリー、ディス・イズ・Yビーム、強い通信障害が発生した。方位は085、敦賀湾の方向だ、ザー・・・」正常だった経ヶ岬との交信が突然途絶えた。方位を報告したことから発生源は特定されているのかも知れない。航空自衛隊の警戒管制レーダー網は複数のレーサー・サイトの探知情報を合成しているため経ヶ岬1カ所が欠落しても輪島や高尾山が補完するので深刻な事態にはならないが、この方向が敦賀湾原発銀座なのが重大問題だ。
「センチュリー、ディス・イズ・ドラゴン31、高度600フィート(182・8メートル)から視認している。敦賀は異常ない。美浜原発の原子炉が崩壊して建物が炎上している・・・」コンソールでパイロットからの報告を聞いていた隊員たちは階級と年齢層を問わず凍りついたような顔になった。小松基地を風上の北に向かって離陸したドラゴン31はUターンするように日本海を南下して数秒で敦賀原子力発電所を視界に捉えた。そこからはFー15の最低速度で地上を確認しているはずだが、それでも若狭湾を横切るのに十数秒だ。
「大飯も崩壊している、原子炉から火を吹いている。炉心が剝き出しだ。高浜もやられてる。被害を受けているのは3基だ」高浜は奈良の幹部候補生学校の遠泳訓練が実施されるので部内出身の幹部たちには思い出の土地だ。泳ぎながら眺めた原子炉も破壊されてしまった。
「ここまで正確に原子炉を破壊したとなると先ほどの空中分解は分離式誘導弾だな」「福島原発と違って炉心が剥き出しになっている以上、放射能の放出は甚大だ」「若狭湾の住民は迅速に避難させなければ・・・」中部航空方面隊指揮所では幕僚たちが議論を始めていた。
  1. 2022/07/07(木) 13:26:01|
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