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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ179

「自衛隊による治安出動は戒厳令の布告と同じだ・・・と海外では受け止められている。そのような誤解を招く異常状態をこれ以上継続することは国際社会における我が国に対する信頼を著しく損なうのは誰の目で見ても明らかだ。総理が治安出動を発令する理由として説明した国会周辺で起きたような大規模な銃撃戦も警察力で抑制できている以上、自衛隊には防衛出動待機命令と一緒に撤収命令を下達するべきではないですか」「内閣総理大臣。石田史雄くん」その頃、国会の衆議院予算委員会では発令から数カ月が過ぎた治安出動の継続の可否について立権民衆党の湧水元太代表が質問していた。立権民衆党は党内右派が邦人民主党を結党して分離独立して以来、支持母体の公務員労組の政治主張を公然化していて、かつての社会人民党が復活したような「日本国よりも憲法9条を守れ」と言う不毛の議論を繰り返している。
「海外の一部のマスコミが治安出動を戒厳令と誤訳して報道していることは承知しています。しかし、各国大使館に現地マスコミの報道内容を確認させて、誤訳を発見すれば直ちに訂正記事の掲載を要求させていますから政府関係者が誤解することはないと思います」湧水代表の質問の主旨は自衛隊の防衛出動待機命令の解除と治安出動の撤収の可否なのだが石田首相は巧みに回避した。実際は武器の不法所持で摘発された在日中国・韓国人の国外退去は終息してきているのだが、それには触れず湧水代表の指摘に応えることで納得させるつもりらしい。
「湧水元太くん」「何だって」予算委員長が湧水代表を指名した時、席に戻った石田首相に秘書官が何かを耳打ちし、同時に引きつった叫び声が響いた。歴代首相が議場で取り乱す姿を見たことがなかった与野党の議員たちは呆気に取られて絶句した。
「総理、発言は私の指名を受けてからお願いします」「失礼、私と防衛大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、官房長官は一旦中座させていただきます。湧水議員の質問に対する答弁は関係閣僚が代わります」予算委員長の注意を受けた後、連れていく大臣に声をかけて退室する石田首相の背中に向かって野党議員たちは「何事だ」「説明しろ」と罵声を浴びせた。
「北朝鮮のロケット・・・弾道ミサイルが美浜、大飯、高浜原発に命中しました」「自衛隊は破壊措置に失敗したのか」「今回は総理の指示で破壊措置命令は出していません」慌ただしく閣僚控室に入った首相と各大臣に秘書官が第一報を説明した。すると浜防衛大臣は今回、自衛隊に対する破壊措置命令は発令されなかったのは石田首相の政治判断だったことをあえて確認した。その理由は今も予算委員会で議論になっていた。
「偵察衛星は3ヶ所の原発から大量の放射能が流出していることを確認しています」「航空自衛隊のスクランブル機が上空から被害状況を確認しています。3基とも原子炉が崩壊して炉心が剥き出しになっているようです。海上自衛隊の艦艇も沖から状況を確認しています」「どれも全て稼働中の原子炉ですから核燃料の残量は推定できません」続いて内閣官房と防衛省、経済産業省の担当者が説明すると石田首相は誰よりも沈痛な表情になった。やはり広島出身の石田首相にとって核爆発と言う事態は身を焼く苦痛を伴うのだ。
「現時点ではマスコミ各社はこの事態を報道していません。おそらく個人のメールを含めて情報を発信する手段がないので察知していないのではないかと思われます」「しかし、弾道ミサイルが飛来して爆発すれば凄まじい音がするだろう。地響きだって感じるはずだ」「周辺住民は全滅したと言うことか・・・」大臣の1人が可能性は否定できない最悪の事態を口にしたため全員が氷りついたように動かなくなった。
「自治体からの連絡はないのか」「総務省はこの事態を把握していないようで報告がありません。こちらから指示しました」つまり被害の確認連絡は実施されていなかったと言うことだ。今回、北朝鮮の宇宙ロケットの発射実験と言う発表をマスコミが肯定的に報道したため浜防衛大臣でさえ石田首相の破壊措置命令に関する政治判断を容認し、各中央官庁から地方自治体までが油断し切っていたようだ。それにはマスコミが「中韓との武力対立が激化する中、沈黙を守っている北朝鮮が」と前置きしていたのが思いがけない効果を発揮していた。
「北朝鮮がロケットは誘導装置の不具合で予定のコースを外れて空中分解した。発射実験は失敗だったと発表したようです」結局、石田首相は秘書官に予算委員長に説明させて休会にすると首相官邸で臨時閣議を招集した。浜防衛大臣は中央指揮所への移動を提言したが「核攻撃ではない」と却下した。臨時閣議に最初に入った報告は本来は予想しなければならなかった北朝鮮の常套手段だった。つまり「発射したのは宇宙ロケットでそれがコースを外れて日本に向かい、空中分解して若狭湾に落下した。それが偶然にも稼働中の3基の原子力発電所を破壊した」と言う理屈だ。誰も信じない虚言を平然と押し通すのは毎度のことだが今回は事実上の核攻撃であり、石田首相には到底許せない「仁義なき戦い」だった。
  1. 2022/07/08(金) 14:01:37|
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