今回の安倍元首相の暗殺事件では過去に記憶がないほど暗殺犯が新聞やニュースに鮮明に映っていて、何の制止も受けずに徒歩で演台に立つ安倍元首相の背後に近づき、黒い棒状の不審物を構えて至近距離から繰り返し発砲する姿まで捉えられていました。
野僧は現役時代、在日アメリカ軍の憲兵隊に国内留学して基地警備戦闘から特殊武器防護(生物化学兵器と核爆発)、戦時投薬(鎮静剤としての麻薬投与)、戦傷者救護、警備犬(自衛隊では歩哨犬)の運用などのアメリカ式警備を幅広く学び、その中には要人警護もありました。そこで学んだアメリカ式要人警護の鉄則は襲撃犯を捕獲、攻撃することよりも要人の安全を守ることを優先し、銃撃を受ければ一斉に駆け寄って要人を取り囲み、身を盾にして1名が銃弾を受け止め、その間に車両に要人を押し込む訓練を繰り返し受けました。勿論、アメリカの警護要員は防弾チョッキを着用していますが、至近距離から銃撃を受ければ貫通する可能性が高く、頭を射たれれば多分殉職なので自己犠牲をいとわない強固な使命感がなければ任務は達成できません。
そんな野僧の目で見ると今回の安倍元首相の警護は全く話になりません。特に手製の銃器を入れたカバン(これだけで十分に怪しい)を肩から提げた暗殺犯が安倍元首相の演説予定地の周囲を下見するように歩き回っていても私服・制服の警察官に職務質問・手荷物検査されることなく放置されていて、その姿は素人がスマートホンで撮影した映像だけでなくマスコミのニュース映像にも堂々と映っていたのです。
要人警護に限らず警備では携行品の大きさと形状、肩紐の突っ張り方から内容物を推定して拳銃や刃物、爆発物が疑われれば要注意人物として情報を共有し、理由を作って職務質問と手荷物検査を実施し、それが不可能であれば不審な動きを見せれば即座に拘束するのが基本ですから鉄パイプ2本で作った銃器を見逃した警戒心の欠落は会場にいた警察官全員に基本的精神要素が備わっていなかったことの証左です。確かに幹部候補生学校に入校中に知り合った奈良県警の警察官は「寺や神社の警備ばかりで仁王さんになったようなものだ(古墳は皇宮警察の所管)」と嘆いていましたから緊張感は低いのでしょう。
また初弾から次弾の発砲まで3秒あり、それだけあれば安倍元首相に駆け寄って押し倒すことは十分に可能なはずですが、ニュース映像では背後に立っていた私服の警察官は全員が暗殺犯を振り向いていて警視庁SPの質の低下が如実に表れています。
警視庁SPは昭和50(1975)年6月16日に佐藤栄作元首相の国民葬の会場で三木武夫首相が右翼の男に顔面を殴打された事件を受けて3ヶ月後に発足し、当時は警備職種の警察官にとって憧れの最精鋭=エリート中のエリートでした。
ところが現在は特殊急襲部隊=SATの活動の方が目立ち、前述の強固な使命感を持ち、身体能力に優れる若い警察官はこちらに流れている可能性があります。それは航空自衛隊の若手パイロットが飛行教導隊の神業の戦闘技量に憧れるようになって曲技チームのブルー・インパルスは人気と共に実力が低下している現状と共通します。
警護要員は野僧のようにレーガン大統領銃撃事件のビデオ映像を目に焼き付けるべきです。
- 2022/07/14(木) 15:58:37|
- 時事阿呆談
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