防災の日の9月1日は2014年に神奈川県川崎市中原区に所在し、教育ベンチャー企業を経営する鈴木英智佳さん(1997年慶応義塾大学商学部卒・花王の人事部勤務を経て現職)が会長を務める社団法人・日本駄洒落活用協会が制定した「駄洒落の日」です。
駄洒落とは一般的には「同じ、或いは非常に似通った音を持つ言葉を掛けて遊ぶ一種の言葉遊び」を指しますが「少しも感心できない、つまらない洒落」と「駄」に固執して解説している国語辞典が多数派を占めます。しかし、「洒落」は本来、俳諧の句会で思案が行き詰って場の空気が重苦しくなった時の息抜きに詠む雑俳の技法の1つで、母音とイントネーションが同じ語、母音が同じ語、同音異義語などを相手の意表を突いた形で当てはめる詠み手の言葉に関する潤沢な知識と高度で幅広い教養を示す日本語の発展した使用方法だったのですが、明治以降、特に敗戦後に外来語が持て囃されるようになって日本人の日本語力が低下すると高度な使用方法が理解できなくなり、そう言った情けない世代が「洒落」に揶揄する「駄」の語を冠して侮蔑するようになりました。
それが平成に入って日本語以前に日本人としての精神文化を喪失した世代が社会に蔓延すると昭和の時代の美風だった上司を人間的に尊敬する組織人としての帰属意識も消滅して年長者を公然と侮辱することが新たな時代の気風であるかのようにマスコミが喧伝したことで日本社会が急速に劣化すると古い時代の高度な言葉遊びも「駄洒落」を超えて「親父ギャグ」と誹謗されることになり、「異なった世代間の相互理解を妨げる社会悪」のように指弾されるようになったのです。我々のような昭和の世代は社会に出れば学校で学んだ青臭い生半可な知識よりも経験を積んだ先輩たちから仕事を吸収しようと努力して口癖や仕草まで真似るように密着しましたが、平成の世代は何を以って昭和の世代よりも自分たちが優れていると思い込み、公然と否定する暴挙に出られたのか平成が終わった今でも全く理解できません。
そんな日本語の劣化に危機感を持っているらしい日本駄洒落活用協会が9月1日を「駄洒落の日」に制定した根拠は当然、駄洒落の語呂合わせですが「『9=クオリティーが1=インパクト』がある駄洒落は人と人とのコミュニケーションをより豊かなものしてくれる無形文化遊具であり、駄洒落が秘める無限の『9=吸・1=引・力』を活かし、生活に彩りと潤いをもたらすことで世の中に『す91=救い』を届けたい」と言うもので完全に思考過多の笑いを誘う「洒落っ気」を全く感じられない劣悪なこじつけです。日本駄洒落活用協会は駄洒落と親父ギャグの相違を「駄洒落には愛があるが親父ギャグは自己中心的、自己満足」と定義しながら「駄洒落は世界を救う」を合言葉にしていますが、日本語の駄洒落が救えるのは日本限定でしょう。
一方、日本駄洒落活用協会との関係は不明ですが、ある意味で日本人に正しい日本語を教える役割を果たしてきたNHKは現代の日本人の日本語力の低下に現実的な危機感を抱いているらしく平成の末期から教育番組に駄洒落を取り入れるようになりました。日本駄洒落活用協会の記念行事よりもNHKの地道な努力に期待したいと思います。
- 2022/08/31(水) 15:04:13|
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