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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ236

マックハウアー中佐がヘリコプーターで小松基地に引き上げると在日アメリカ軍司令部として配属されているアメリカ陸海軍海兵隊の連絡官と統合幕僚監部から派遣されていた陸海空自衛隊の幕僚たちも退席して第5空軍と航空総隊の司令部要員だけになった。これが海上自衛隊であれば帝国海軍以来の伝統で士官は戦闘中も制服なのだが、航空自衛隊ではパイロットは緑色のつなぎ、その他は目的不明の迷彩服になるので雑然とした雰囲気になる。それにしても航空自衛隊の灰色地に細かい黒・茶・緑のモザイク模様の迷彩服はどこの風景に溶け込ませる効果を狙っているのだろうか。かつての灰色の作業服はコンクリートの色でエプロン=駐機場やランウェイ=滑走路での作業中に攻撃を受けて伏せた時の迷彩だった。建物の壁やブロック塀でも効果がありそうだが、最近は薄緑色(上空から見ると太陽光を反射した芝生に同化する)に塗装しているので期待はできない。
「アメリカがコンクリート弾を製造するのを待ってなくてもCHー47をダンプ・ヘリにすれば埋設できるんじゃないか。勿論、放射線量が安全な数値まで低下することが前提だが」「チヌークをダンプ・トラックに使うのか。それは面白いな」航空総隊司令部で運用を担当するパイロットの提案に第5空軍のパイロットが反応した。やはり余所者がいなくなると肩の力が抜けて日常的なくだけた会話になるようだ。
「CHー47Jならセンターフックに10トン吊り下げられるから特製投下弾10発分のコンクリートを投入できるぞ」「ダンプ・トラック方式よりも現実的だ」戦闘機パイロットの提案に現在は航空総隊直轄になった救難隊の運用を担当するヘリコプター・パイロットがプロとして補足修正を加えた。CHー47の機体下面には3つのフックがついていて梱包した10トンまでの貨物を吊り下げて運搬し、目的地で投下することができる。戦闘機パイロットたちは機体内に容器を設置してコンクリートを運び、それこそダンプカーが土砂を降ろすように機体の前部を上げた姿勢で傾斜させて全開にした後部扉から流し落とす方式を考えていたが、スリングで投下すれば重量で一直線に落下するので命中精度が上がり、機体内の気密を維持できるから放射線の影響も少なくなる。流石はプロの発想だ。
「それと投下弾の製造のどちらが早いかだ」「何にしてもチヌークの機体の遮断性で人体に悪影響が及ばないレベルまで放射線量が減少することが前提だ」「投下弾もスリングにした方が得策だな」「もう投下弾は必要ないだろう。ヘリ空輸隊に梱包方法を研究させよう」今回の封鎖作戦=ホールインワン16の戦果で放射能の減少が期待できるようになり、第5空軍と航空総隊の作戦立案にも選択肢と柔軟さが生まれ、議論は熱を帯びるよりも活況を呈してきた。
「放射線量が減少する前に追加の投下を実施するのなら500ポンド爆弾に変更してもらった方が良くないか。そうすればFー2で実施できる」「確かにジャパニーズFー16(=Fー2)の方がチヌークよりも搭乗員への放射線の影響は軽減できる」「2000ポンドの実績があるから500ポンドに応用するのは簡単なはずだ」「ライセンス生産を認めてくれれば順番待ちせずに日本のメーカーに作らせるぞ」原子炉破壊が発生した直後の作戦会議では日米双方で睨み合いを続けて現状確認と被害予想に終始していたが、今回は欝憤を晴らすように提案と議論が百出している。本来、事実上は紛争当事国である日本でも国内メーカーに爆弾の増産を発注して開戦に備えて備蓄を進めなければならないのだが、国会では売国マスコミに操られている立権民衆党などの強硬な反対で戦時予算が承認されず、メーカーの増産態勢は整っていても材料と部品の緊急調達は始まっていない。そこに災害派遣用の投下弾を発注すれば生産ラインが稼働し、続く爆弾の増産態勢にも円滑に移行できる。問題はアメリカの製造メーカーが新兵器ならぬ新製品の技術情報を日本に提供するかだ。防衛省の契約担当の官僚は能力、特に語学力が低く、アメリカ側が書類の文章に仕かけた罠に簡単に引っかかり、運用上の必要性から実施した処置で違約金を請求されることも珍しくない。
「そう言えばJASDFのチーム・コマキはハーキュリーズ・オリンピックで連覇していたんじゃあなかったか」今度は輸送機基地としての横田空港から第5空軍司令部に派遣されている輸送機パイロットが意外なことを言い出した。ハーキュリーズ・オリンピックとは世界中で採用・運用されているCー130ハーキューリーズ輸送機をアメリカに集めて開催しているパイロットやナビゲーター、ロードマスター、航空機整備員の技量を競う世界選手権で航空自衛隊小牧基地の第1輸送航空隊は参加翌年から完全制覇を続けていた。その後、中東やアフリカへの長距離輸送が続いたため参加を取り止めたがチーム・コマキの名は世界の空軍に轟いた。
「チーム・コマキのLAPES(物料投下)は神業だからレーザー誘導なしでも行けるんじゃあないか」残念ながら航空総隊司令部には輸送機パイロットがおらず誰も反応できなかった。
根岸士長(4高群)現在の航空迷彩服
  1. 2022/09/03(土) 15:04:38|
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