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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ240

「日本の弁護士ってどうして政府の足を引っ張ることしかないのかしら」私と牧野弁護士の会話を台所で夕食の支度をしながら固定電話機に接続してあるスピーカーで聞いていた梢は夜の散歩の話題にした。梢は沖縄で反アメリカ軍基地闘争の先頭に立って次々に粗探しの裁判を起こしている弁護士をイメージしているようだ。
「ワシも日本では弁護士だったよ。人数が多い分、色々いるんだよ」私が陸上幕僚監部法務官室に所属する弁護士として参加したイージス護衛艦と漁船の衝突事故の裁判を沖縄のマスコミは批判報道を徹底していて弁護側の弁論は完全に無視していたらしい。勿論、一緒に暮らすようになってからは思い出話として経験した裁判の内容を説明することがあるが、訓練中の事故の損害賠償や公務災害認定などが中心であまり華々しい活躍はしていない。むしろインターネットで開設していた無料法律相談を通して依頼を受けた隊員の離婚調停の実例の方が盛り上がっている。中でもWACの陸士が妊娠したため上官が相手を問い詰めると数人の妻帯者の陸曹の名前を並べたためDNA検査を受けた大騒動は妙に熱を帯びていた。結局、父親候補になった陸曹たちは不倫が妻にバレて離婚を迫られた者、慰謝料を請求された者が続出して私の仕事が急倍増した。おまけにDNA検査の結果、父親は同じ職場の陸士と判明して幸せに結婚したが、新妻を味見した陸曹たちは揃って転属になった。一方、ある学校の副官室のWACが妊娠した騒動では校長ドライバーの陸曹が疑われたが実は陸将補の校長のお手つきで、妻に退職金で慰謝料を支払って離婚すると30歳年下の陸士と再婚して半年後に父親になった。校長と同年齢になっていた私としてはこの事例を詳解するのはかなりためらわれたが、梢には人生最後の性交を捧げているので「単身赴任で欲求不満のところに衣替えの3種夏服(半袖)で巨大な乳を見せられて我慢できなくなった」と弁明したことも羨望を込めて説明した。
「今の日本で指導的立場にある弁護士は70年代の学園闘争の活動家が大半だから反政府の政治闘争を本業にしてるんだよ。マスコミは弱者の味方の人権派と紹介しているがな」この見解は弁護士に限らず医師や大学教授から小中学高校の教職員、マスコミ関係者でも取材して番組を制作するジャーナリストなどの「知的エリート」と呼ばれる職業人全体に言えることだ。ロシア革命後の貴族や地方領主たちの帝政復活を目指す抵抗を制圧したスターリンは全世界をマルクス主義で統一する戦略・第3インターナショナルを宣言したが、その基本戦術として資本主義社会で指導的立場にある「知的エリート」の洗脳と扇動を指導した。日本では明治期にマルクス主義の本場だったドイツやフランスに留学していた科学者や医学者、法律家などが標的になり、帰国後に大学で教壇に立つと最新の学術で若きエリートたちを誘ってマルクス主義に洗脳した。だから創設期の日本共産党には地方ブルジョワ=富豪の子弟である大学生が中心で、労働者出身の党員が参加したのは大正7年に米騒動が発生してからだ。
「日本に限らずヨーロッパでも弁護士や医療関係者には『弱者の味方』って美意識があるからマルクス主義の労働者を資本家の搾取から解放すると言う虚構に心情的に同調するのは仕方ないだろう。マスコミも『社会の悪を暴く』って自己満足があるから政府こそ『社会悪の根源』と敵視するのは当たり前だ。その点、アメリカは職業人としてのプロ意識以上は踏み込まないから報酬に見合った仕事までだ」この話題は若い頃にも沖縄の新聞やニュースでインタビューを受けた医療関係者が政府の決定を批判しているのを見て何度も話し合ったことがあるが、同じ教員でも梢の両親と私の祖父は社会を肯定する保守派、父親の兄は完全否定する赤だった。さらに戦後生まれの母親の弟は教職員組合員でも政治には無関心だった。世代や担当科目などと思想傾向を分析し合って「花は色々、人も様々」と納得した。
「それにしても平成末期になって弁護士の法廷闘争の政治目的が具体的になってきたよな。例えば国政選挙の一票の格差は日本国憲法が保障する権利の平等に反するって行政訴訟があっただろう」「3倍まで合憲って判決が出たあれね」私が日本でも東京都下で投票権を行使していた頃、国政選挙の度に各都道府県の弁護士団体が「議員1人の当選に要する得票数が有権者が投じる1票の価値だ」と言う理解不能の論理で全国の選挙結果を比較し、人口が少ない地方と多い都市部では数倍の格差があることを問題視して、選挙の無効と是正した後の再投票を要求する行政訴訟を続発させた。それを受けて最高裁判所が出したのが「1票の格差は3倍まで合憲」と言う根拠不明の最終判断=判例だった。
「あれは自民党が強い地方の定員を削減して野党が強い都市部を増員することが目的だ。しかし、アメリカの上院議員の定員は1州に2人に固定されていて当選に必要な得票数は関係ない」「ボンズ(坊主)、今晩は」私の時事阿呆談が熱を帯びてきたところで警邏中の警察官に声をかけられた。安川1尉の裁判の話題は寝る前の酒を飲みながらにする。
  1. 2022/09/07(水) 15:36:05|
  2. 夜の連続小説9
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