昭和52(1977)年から翌年まで続いたテレビの横溝正史シリーズで主役の名探偵・金田一耕助を演じた俳優の古谷一行(芸名は「いっこう」、本名は「かずゆき」)さんが長年闘病していた癌で亡くなったそうです。78歳でした。
横溝正史シリーズが放送された昭和52(1977)年は野僧が高校に入学した年で、横溝作品を愛読ではなく熟読して相手構わず講義する同級生がいたためクラス全員が毎週土曜日の夜10時からテレビの横溝正史シリーズを見ることになりました(野僧は家でのチャンネル権を持ちませんでしたが父親が見ていたので助かりました)。するとその同級生は文庫本ではない横溝正史作品の単行本を持ってきて挿絵を見せながら「目の描写が多いから挿絵の金田一耕助は目が大きく映画の石坂浩二の方が似ている=目が細い古谷一行は駄目だ」と批判して友情でテレビを見ている同級生たちをガッカリさせました。ちなみに昭和52(1977)年の秋には松竹映画の「八墓村」が公開されましたが、「男はつらいよ」シリーズの看板役者・渥美清さんが金田一耕助を演じていたため角川映画の石坂浩二さんとテレビの古谷一行さんのイメージ・ギャップどころではない衝撃がクラスを揺るがしました(横溝ファンの同級生はノーコメントだった)。
実は野僧が最初に古谷一行さんのドラマを見たのは小学校3年だった大阪万国博覧会の年の連続テレビ小説「虹」で、主演の南田洋子さんと仲谷昇さんが演じる病弱な大学講師の男女2人ずつ4人の子供の長男役でした。補足すれば長女役は清純だった頃の小柳ルミ子さんだったと記憶しています。次は毎度の大河ドラマで昭和47(1972)年の「新平家物語」で平経盛役でしたが、2012年の「平清盛」や2022年の「鎌倉殿の13人」ほど各個人を掘り下げたドラマではなかったので平家一門の1人過ぎませんでした(「平清盛」で駿河太郎さんが好演した存在感が薄く文弱な経盛に重ねるとイメージが合いません)。次は1996年の大河ドラマ「秀吉」の竹中半兵衛ですが野際陽子さんが演じる明智光秀さんの母親に仕官を求められても断り、その理由を年上好で野際さんへの恋慕の情と説明しながら実は追っ手から逃すための演技だったと言う登場直後以外は毛利攻めの陣中で病んで伏せっている場面しか記憶にありません。
それ以降は火曜ドラマや土曜ワイド劇場の常連だったそうですが野僧には縁がなく、新聞の死亡通知に代表作と紹介されている昭和58(1983)年の「金曜日の妻たち」は航空自衛隊に入隊して那覇基地に赴任していたためテレビは亡き妻のアパートで見るしかなく、流石に「不倫のドラマを見たい」と言う雰囲気ではありませんでした。
映画としては「時代屋の女房2」の第1作では渡瀬恒彦さんが演じた骨董屋の主人・安さんで、第1作では主演した夏目雅子さんが病気で入院して名取裕子さんに代わったのに合わせて出演者が一新され、安さんも古谷さんになったようです。
古谷さんは2011年に肺癌であることを公表して以降、脳や胃への転移が続き、手術や放射線治療と並行して復帰に向けての鍛錬を続けていたそうですがそろそろ楽にして上げましょう。冥福を祈ります。
- 2022/09/09(金) 15:26:04|
- 追悼・告別・永訣文
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