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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ251

「アメリカは中国が日本の戦争犯罪を最も近い常任理事国として懲罰権を行使するのを妨害している」安全保障理事会ではロシアの国連大使が口を極めてアメリカを批判し始めた。現在、中国は日本への武力行使=侵攻が八方塞りに陥り、アメリカとイギリスは一致して中国の主張の虚偽を論証して一連の行動を批判するようになっている。残る常任理事国のフランスは「調停役」を自称しながら実際は他の西側諸国がロシアのウクライナ侵攻に中国を連座させて経済関係を縮小した裏で金融取引までも急拡大させている毎度定番の裏切り者だ。
「中国が主張している日本の戦争犯罪行為は尖閣諸島における化学兵器の使用ですが、日本の警察と海上保安庁が現場検証で回収したガス弾の弾頭から検出した有毒ガスをアメリカ軍も分析した結果、中国が新疆ウィグル地区でデモ隊に使用したガスと成分が一致したと説明したはずです」アメリカの女性の国連大使は唐突なロシアの参戦表明に困惑しながらも論理的に反論を始めた。勿論、ロシアがこの反論は織り込みずみにしていることは十分承知している。案の定、中国とロシアの国連大使は周囲の随員と冷笑を交わし、揃ってフランスの席に視線を向けた。するとフランスの国連大使は困ったように視線を反らした。
「加害者が自分で見つけた物件が証拠採用されないのは貴方たち西側の法廷制度でしょう。ましてや我々は日本の警察が鎮圧用の催涙ガスに見せかけて毒ガスを使用したと主張しているのだから刑事裁判で言えば被告本人だ」「今後、日本の証拠偽造が立証されれば分析を請け負ったアメリカも共犯として懲戒処分を受けることになりますぞ」中国とロシアの共同攻勢にアメリカとイギリスの国連大使は呆れたように絶句し、日頃は芸能人気取りで愛想笑いを絶やさないフランスの国連大使は珍しく口を固く結んで傍観者を決め込んだ。
「実はイギリスもこの分析には関与していてアメリカと日本が国際連合に連名報告した結論に異議異論はないんだ。今回、ロシアがあの報告を疑義ではなく否定することになった根拠を説明してもらいたい。独自の分析を実施したと言うのならその検体の入手経緯も披露してもらいたい」ここでイギリスの国連大使がロシアにジャブを打ち込み始めた。イギリスは自衛隊化学学校が分析に使用した化学兵器のサンプルの多くを提供している。特に今回、特定した新疆ウィグル地区で中国の治安警察部隊が使用した化学兵器はイギリスの諜報機関・MI6がアフガニスタンや北部イランで養成した現地人の諜報要員を民族紛争が活発化している都市に潜入させて採取した検体だった。逆に尖閣諸島は化学兵器で死亡した中国人漁民の遺骸が中国海警の小型巡洋艦を転用した警備船の船砲射撃で砕け散っていたが、日本の警察と海上保安庁が自分たちの同僚の遺骸と一緒に回収して、DNA検査で人物を特定して分類した上で中国に引き渡した。以降は両者とも上陸はしておらず国際紛争としては空白地帯になっている。
「そもそも日本には琉球諸島の領有権はない。琉球諸島は我が中国固有の領土である」今度は中国の国連大使がロシアに代わって話を変え、広げてきた。この理屈は琉球大学の教授だった大田昌秀が県知事に就任した頃から沖縄県内の大学と出身者を中心とする沖縄史の研究者たちが主張し、小中学高校でも教育し始めた「琉球王国は中国皇帝に朝貢して臣下の礼を取っていた属国だった」と言う一面的な見解につながる。そうなると次は「1609年の島津侵攻によって日本が一方的に領有を主張するようになり、1879年の廃藩置県の適用によって領土の一部とした」と言う日本侵略者説に続く。確かに琉球王国は明朝・清朝に朝貢し、皇帝に地位を保証してもらっていたが、奈良時代に編纂された風土記には先島に至る沖縄諸島への使者の渡航と日本の皇室に対する朝貢の記述があり、室町時代には足利幕府が琉球国を属領扱いして国王からの使者を冷遇した記録もある。何よりも1871年に宮古島から首里に年貢を納めた貨物船団が帰路に遭難して台湾に漂着し、乗り込んでいた漁民54名が現地民に殺害された事件では日本政府が清朝に処置を要請すると「台湾と琉球は化外の地(皇帝の統治が及ばない野蛮な土地)である」と回答したため日本が軍を派遣して漁民を救出している。しかし、そのような歴史談義を始めるまでもなく中国の主張もロシアと同じく現在の武力衝突を打開するための窮余の詭弁に過ぎないのは明らかだ。
「アメリカがあくまでも中国の懲罰権を妨害する不当な行動を継続するならば、我がロシアは常任理事国として中国に協力しなければならなくなる。アメリカの対応次第では全面核戦争が発生して世界は滅亡する。仮にそれが現実になればアメリカは広島、長崎だけでなく地球までも破滅させた悪魔の国家として滅び逝く全生物からの怨みを受け、カミの裁きを受けるだろう」ロシアはウクライナ侵攻でも核の脅しをかけて西側の経済制裁と軍事支援を牽制したが今回もその役を引き受けたようだ。北朝鮮が開発を進めている弾道ミサイルが中国製だとすれば中国軍の核戦力はアメリカに対抗し得る水準にはない。それが理由なのではないか。
  1. 2022/09/18(日) 16:00:10|
  2. 夜の連続小説9
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