fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

第118回月刊「宗教」講座・精進教室2時間目「鰻もどき」

日本の精進料理は天皇が中国独自の僧侶が肉魚を食することを禁ずる戒律を模倣しただけなので明治5年の「僧尼の食肉、畜髪、婚嫁を許し、姓氏を称せしむ」と言う太政官布告で必要性を喪失しました(畜髪と婚嫁は佛戒の否定)。それでも伝統墨守・前例踏襲を専らとする教団では修行期間中だけは殊更に古い戒律を堅持したため現在まで精進料理は継承され、気がつけば日本独自の食文化として珍重されるようになっただけでなく美味しい健康食品としても人気を集めています。
そんな精進料理が常食されていた時代に(江戸時代の廃寺の東司=とうす=禅寺のトイレを発掘して便貯めの土を分析したところ動物性蛋白質は検出されず、生臭坊主はいなかったことが証明されたそうです)僧侶たちを楽しませたのが「もどき料理」でした。これは食べれば寺社奉行に戒律違反として摘発される獣や鳥、魚の肉を豆腐などで似せて作る料理で、鳥の鴈(がん)の肉の食感に似ていることから名づけられた「鴈もどき」は食材として広く普及しています。
今回はそんな「もどき」料理の中でも比較的調理が簡単で出来栄えが面白いため人気がある「鰻もどき」を紹介します。ただし、前述のように明治以降の日本では生臭坊主が国家公認になっているので鰻丼を食べたければ出前を取れば良く、楽しんでいるのは肉魚に飢えた修行僧が集う本山や地方僧堂に限られます。
野僧は転属・赴任した先々の色々な宗派の寺院で修行ごっこを重ねてきましたが、飛び込みの素人を使うには料理番の助手が最も無難なため「鰻もどき」についても色々な作り方を習いましたが、どちらかと言えば土用の丑などに悪戯的に作る料理なので改まった手順などは定まっていないようです。その意味では口伝でしょうか。

材料
木綿豆腐・1丁
山芋(入手できれば銀杏芋)・50グラムから100グラム
片栗粉・大さじ1杯から2杯
焼き海苔・1枚
塩・少々
食用油または胡麻油または食用バター・適量(やや多め)

たれ(精進にこだわらなければ焼けた鰻の身を漬けて脂が入った市販品の方がお勧め)
醤油・大さじ2杯
砂糖・大さじ2杯
味醂・大さじ1杯
生擂りおろし生姜・小さじ1杯

作り方
1、 木綿豆腐をザルに入れて、上に水を入れた器を載せて十分に水を絞る。通常、豆腐の水抜きは食感を残すため重しは控え目にするが、今回は完全に絞る。
2、山芋を擂る。山芋は鰻の小骨の食感を出すためなので繊維質が残るように摺る。量も適当に。
3、水気を絞った木綿豆腐に擂った山芋と片栗粉、塩を混ぜてよく錬る(素手だと痒くなるから注意)。
4、焼き海苔を半分に切り、上に練った材料を厚さは鰻の蒲焼きと同程度まで塗りつけるように広げる。載せて広げるだけでは焼く時に剥がれる可能性があるので意識して塗りつける。
5、出来上ったら海苔を皮に見立て、竹串などで中央に背骨を外したような溝を掘り、身のほぐれ目などを付けて鰻の蒲焼きに似せるように仕上げる。
6、出来上った鰻もどきを食用油で揚げる寺やフライパンで多めの油で焼く寺、食用バターを溶かして焼く寺など色々ある。
どの寺も共通しているのは鰻の脂味を出すために多めの油を使っていたこと。揚げるのは脂味を増すため。食用バターは動物性の風味を狙っていて、「バターは乳製品なので殺生はしていない」と説明する。
7、作ったたれに漬けて染み込ませ2度焼きする。この時は油を少なめにして焦げ目をつける。焦げた方が風味が増し、見た目もそれらしくなる。
8、鰻丼にするか鰻重にするかは好みで決める。

たれの作り方
小鍋に材料を入れてかき混ぜながら焦げそうになるまで煮詰める。

やはり本物の鰻を食べられない立場だから嬉しいのであって、「珍しさ」「比較する楽しさ」「手間をかけた有り難さを味わう」「ダイエット目的」以外は鰻丼、鰻重に敵いません。
118・鰻もどき
  1. 2022/10/01(土) 15:03:04|
  2. 月刊「宗教」講座
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<続・振り向けばイエスタディ265 | ホーム | 続・振り向けばイエスタディ264>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/7945-56be3954
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)