fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

「ぐりとぐら」の絵本作家・山脇百合子先生の逝去を悼む。

やや古い話になりますが9月29日に保育園の頃から読書好きだった野僧が自分で愛読していた絵本「そらいろのたね」や「ぐりとぐら」の絵を描いた山脇百合子先生(当時は大村姓だった)が亡くなったそうです。死因は「衰弱のため」とされていますが享年は日本人女性の平均死亡年齢よりも若い80歳なので「老衰」ではなかったようです。
山脇先生は日本の陸軍がマレー半島に上陸し、海軍がハワイ真珠湾を空襲する5日前に東京で生まれました。東京都立西高校在学中に絵本や童話の挿絵を描くようになり、上智大学を卒業してまもなく結婚しました。したがって結婚前の大村姓の作品は高校から大学に在学中に描いたものかも知れません。ちなみに山脇先生の絵本の大半はデビュー作の「いやいやえもん」以来、6歳年上の実姉の中川季枝子先生の童話なので姉妹作品と言うことになります。
野僧が好きな「そらいろのたね」は「ある日、ゆうじがキツネに『ゆうじの宝物の模型飛行機と自分の宝物の空色の種と交換してくれ』と頼まれて、仕方なく応じたのでした。ゆうじが庭に種を撒いて水をやると翌朝に小さな玩具のような青い家が現れ、それを見たゆうじが『早く大きくなれ』と言いながら水をやると家は大きくなり、ヒヨコがやってきて『僕の家だ』と言って中に入っていきました。そこでゆうじが『もっと大きくなれ』と言いながら世話をすると家はドンドン大きくなり、猫や豚、さらにゆうじの友達まで集まって中で遊ぶようになりました。それでも家の成長は止まることなく、やがて街中の子供から森の動物まで集まってきました。そこに狐がやってきて巨大になった家を見て驚き、『模型飛行機は返すから家を返してくれ』と一方的に言うと模型飛行機を渡して家に入り、中にいた子供たちや動物を追い出して窓を閉め、内側から鍵をかけたのです。すると家が急激に成長し始め、空を覆うようになってゆうじが『おひさまにぶつかる』と叫んだ時、急に崩壊して消えてなくなってしまいました。後には気絶した狐が転がっていました」と言う話です。山脇先生のアッサリとした画風が物語の緊迫感を緩和して、最後に失神して転がっている狐には笑うよりも同情してしまいました。
一方、「ぐりとぐら」は「料理好きの野ネズミのぐりとぐらが食材を探しに森の奥へ出かけ、籠に団栗や栗を拾い集めて行くと道の真ん中に巨大な卵が落ちていました。ぐりとぐらは大喜びして『目玉焼きにしようか』『卵焼きにしようか』と話し合いましたが、カステラを作ることに決めました。そこで卵を家に持って帰ろうとしましたが大き過ぎて運べず、仕方なく道具を持ってきて森の中で作ることにしたのです。それでも鍋は大きくて運べないので引っ張ったり転がして何とか持ってきました。そして野外炊事を始めると匂いを嗅いだ森の動物たちが集まってきて楽しい会食会になりました。ぐりとぐらは2つに割った卵の殻で作った車に荷物を積んで帰りました」と言う話ですが、調理方法が詳細に具体的で流石は3児の母の作画でした。
愚息たちが幼児の頃、「ぐりとぐら」はシリーズで買っていて読み聞かせから自力の読書に移行するのに活躍しました。感謝を込めて冥福を祈ります。
  1. 2022/10/16(日) 14:27:14|
  2. 追悼・告別・永訣文
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<続・振り向けばイエスタディ279 | ホーム | 続・振り向けばイエスタディ278>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/7977-133e8a7e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)