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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ283

玉城美代子曹長が警衛隊長に上番した日曜日、玉城松真元准尉は再就職した新千歳空港で貨物の積み下ろしの仕事に当たっていた。新千歳空港は航空自衛隊の千歳基地と併用している滑走路の西側に新たに滑走路を増設したが、毎度の国土交通省の売国官僚の嫌がらせなのか千歳基地が見渡せる2本の滑走路の間に国際線のターミナルを建設して不特定多数の外国人の目に晒している。この日、玉城元准尉は国際線の担当だった。
ズーンッ、「何だ」ドーンッ、「自衛隊ですか・・・玉城さん」乗客が受付で預けた荷物を詰めたコンテナを旅客機の腹部の収納庫に積んでいると突然、滑走路の向こうの基地から爆発音が響き、数秒後に違う音色の爆発音が続いた。搭載作業に当たっている社員たちには航空自衛隊OBが多いが、最も新しい玉城元准尉に声をかけた。しかし、仕事を中断して確認することはできない。貨物の重量バランスは飛行中の機体の安定に直結するので離陸から着陸までの間にコンテナの固定が外れることになれば操縦に多大な影響を及ぼすのだ。
「3号コンテナ、よし」「了解、玉城さん、シェルターの向こうから黒煙が上がってますよ」「化学消防車が向かったな。あそこには燃料は保管していないはずだが」3号コンテナの搭載が終わり、元幹部自衛官の現場監督に報告すると次の作業を指示する前に基地で発生した異常事態を解説した。通常はOBでも任期満了退職した元航空機整備員の若い社員たちが次のコンテナに向かう合間に声をかけ、返事を受けるだけだが今回は手招きされた。玉城元准尉が歩み寄ると主翼の下に並んでいるコンテナのタグ(トレーラーで牽引する荷車)の向こうに立ち上る黒煙が見えた。少し位置を変えると緑色の蒲鉾のようなシェルターの横に航空自衛隊の化学消防車が停車して消火を開始していた。雑草や建物などの火災であれば普通消防車が出動するはずなので燃料や油脂分が発火・炎上したのは間違いない。一瞬、玉城元准尉は警衛隊長として勤務している玉城曹長がこの非常事態に適切に対処できているかを心配したが、こちらの仕事をおろそかにすることはできない。
「続いて4号コンテナ、実施します」「よろしく」玉城元准尉が無意識に姿勢を正して挙手の敬礼をすると現場監督も当たり前のように答礼した。この機体の搭載作業中には銃声とまた別の爆発音が聞こえ、ボーディング・ブリッジ(伸縮式の通行路)を渡って機内に乗り込む外国人観光客たちは窓から基地の写真を撮っていた。
事件後、基地内のシェルター付近の現場では千歳地方警務隊が、基地外では警務隊から通報を受けた警察が実地検分=現場検証と警衛隊員の事情聴取を進めていた。警備職の警衛隊は内務班から呼集された営内者と交代し、警衛隊長と警衛副長も出勤した警備小隊の曹長と1曹が代行して警務隊で事情聴取を受けていた。管理隊長は基地司令への報告を優先したが、こちらも副司令と司令部幕僚たちからの尋問になっていた。
「この男が銃を構えたから先に発砲したんですね」「はい」「貴方たちは伏せた姿勢で狙っていたんですね」「はい、脚を狙っていましたが外れて胸部に当たってしまいました」「それで即死か」基地の外ではキャブオールで現場に向かった警備職の高田3曹と段野士長がパトロールカーで駆けつけた2人の警察官の事情聴取を受けていた。自衛隊で言う滑り止めがついた礼装用の白手袋をはめた警察官は遺骸から短機関銃を取ると弾倉を外して実弾が装填されていることを確認した。次に高田3曹に見せて「自衛隊の物か」と訊いたので「多分、ロシア製のPP19でしょう」と答えた。続いて警察官はボール大に膨らんでいた男の上着のポケットからは手榴弾を回収したので高田3曹は訊かれる前に「こちらもロシア製のPGP5じゃあないですか」と説明した。するともう1人の警察官がバインダーの記録用紙に書き込んだ。
「こちらの2人が手榴弾(しゅりゅうだん)を投げようとしたから2人が発砲して射殺したんですね」「2人とも腕を狙ったんですが自分は頭部、段野士長は胸部に当ててしまいました」「それで手元で爆発したっと言う訳ですね」最初の男も手榴弾の爆発で擦るように背中をえぐられいるが、手元で爆発した2人に比べれば人間の形を留めている。こちらの2人は右肩から先と頭部が吹き飛び、互いの手榴弾の破片が突き刺さって服と身体がズタズタになっている。それにしてもほぼ同時に爆発したと言うことは呼吸を合わて安全ピンを抜き、同時進行で投げる動作の途中で射たれ、倒れて手を放れた手榴弾の安全レバーが外れて爆発したのだ。
「そうなるとサブマシンガンと手榴弾はロシアから密輸入されたことになる。やはり北方領土200海里内でのカニや鮭の漁獲権と引き換えの武器持ち込みが再開したようだ」警察官はあえて自衛官に聞かせるようにロシアによる反日暴徒への武器供与の手法を説明した。これは連合軍と称しながら事実中はアメリカの占領下にあった敗戦直後にソ連が北海道の分離独立を画策した共産主義革命の模倣・踏襲・再現だった。
  1. 2022/10/21(金) 13:47:51|
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