「日本人の乗客は全員、廊下に出て兵士の指示に従いなさい。1階の教室に移動します」KLM321便がシベリアのロシア防空軍の基地に強制着陸させられた翌日、日本人の乗客47人と唯一の日本人客室乗務員の小森希恵が収監されている兵士用の兵舎で聞き慣れない男性の日本語の屋内放送が流れた。日本人の乗客たちは兵舎の3階の2段ベッドで12人用にしている部屋に男性3室、女性1室で押し込められているが、小森希恵だけは中央階段の突き当りの普段は予備室にしているらしい小部屋に1人だった。
「1人足りないぞ」「近藤さんはトイレに行っているよ」廊下では英語ができる兵士が部屋単位で人数を確認したが、英会話能力はそれほどでもないらしく乗客の簡単な説明が理解できずに遅れて来た近藤と言う乗客をロシア語で叱責した。
「皆さんの規律正しい生活態度には感心しています。流石は日本人ですね」教室と言っても机や椅子がない雨天朝礼場の広い部屋に移動すると前の教壇にトルコフ中佐が初登場の時と同じように柔和な笑顔を浮かべて立っていた。下士官が自衛隊なら「集合終わり」と報告すると流暢な英語で話を始めた。いきなり日本人の民族性を誉められて本当は苦情を訴えようと思っていた日本人たちは困惑して顔を見合わせた。
「本日、お集まりいただいたのは日本語とロシア語の通訳を紹介するためです。タンチャ、前へ」トルコフ中佐も壇上から乗客の顔を見ていて不満が鬱積しているのを感じたらしく前置きは早々に切り上げて本題を進めた。タンチャと呼ばれた中年の日本人男性はトルコフ中佐の隣りに立ったが年齢層の割には背が低く小太りで、顔は四角く味付け海苔のような濃くて太い眉が目の上に貼りついている。それでも人懐こい笑顔が好感を与えるが、オランダで活躍している商社マンの目には営業スマイルであることは一目瞭然だった。
「こちらはウラジオストック市内で商店を経営しているタンチャ・マ■コさんだ」「クッ、ククク・・・」トルコフ中佐の紹介に日本人の男性たちは一斉に苦笑した。普通、この階層の人間が他人の名前を嘲笑するような非礼な態度を見せることはないので「下卑た愛称だ」と思ったらしい。すると谷茶は笑顔のまま目だけを引きつらせて振り向くと白墨を取って黒板に「谷茶満庫」と大書して大声で「タンチャ・マ■コです」と自己紹介した。
「ようやく通訳が確保できたので今日の午後から皆さんの事情聴取を始めます」「夫婦一緒でお願いします」「あくまでも事情聴取ですから1人ずつ行います。不都合なことは黙秘できますからご心配なく。口裏合わせは不要です」トルコフ中佐は「外国人の事情聴取には通訳を立ち会わせる」とする司法関係国際法の努力義務にロシア軍が誠実に対応していることを説明したのだが、乗客は英語で要請し、トルコフ中佐も英語で回答して谷茶の出番はなかった。
「本名とは言え私の名前を女性に聞かせるのは嫌なんですよね」日本人の乗客と一緒に小森希恵が兵員食堂で昼食を取っていると自分の食事を載せた盆を持ってきた谷茶が前に座って話し掛けてきた。まだ20歳代後半の小森希恵は性行為や女性器を意味する日本語の「マ■コ」を耳にしたことはなく、男性に抱かれて口にすることもない。強いて言うなら福井県の高校時代に初体験した相手の同級生が「チャンペしよう」と口説いた方言なら記憶にある。
「谷茶さんは沖縄出身なんですか」「うん、沖縄でマ■コは禁句じゃあないんだ。だから親は倉庫が宝物で一杯になる縁起が好い名前としてつけたみたいだ」小森希恵は谷茶の説明よりも不満と諦めを同居させた表情に同情を感じてしまった。
「これは沖縄特産の滋養強壮剤だよ。元気を維持するために試してご覧。まだ先は長くなりそうだから」小森希恵が警戒心を解いたのを見て取った谷茶はジャケットのポケットから取り出した小瓶の蓋を右手の親指で開け、手を伸ばすと勝手に粉末をスープに振りかけた。
「薬が効いているみたいだな」兵舎の自分の部屋に帰った小森希恵は体験したことがない体調の異変に困惑していた。下腹部が熱く燃え、その炎が股間に走っているようだ。乳首や耳たぶ、首筋、腰などの数人の男性に開発されてきた性感帯が激しく疼き、手を触れずにいられなくなった。小森希恵はベッドに腰を下ろすと制服とブラウスのボタンを外し、下着の中に手を差し入れて乳房を揉み始めた。するとドアを開けて谷茶と下士官が入ってきて小森希恵の痴態を好色な目で注視した。それでも悲鳴を上げるような意識は働かない。
「品質保証のために俺から姦らせてもらいますよ」谷茶は下士官と手分けして小森希恵を全裸に剥くとベッドに押し倒した。後頭部で結っていた髪が解けてベッドの上に黒く広がった。谷茶が性感帯の確認として乳房を揉み始めると小森希恵の理性は吹き飛んで悶え狂い、下士官が男根で口を塞ぐほど激しく声を上げた。それを見て谷茶は媚薬の量が多過ぎたことを反省していた。こうして小森希恵を抱くのはあくまでも業務なのだ。
- 2022/11/02(水) 15:35:24|
- 夜の連続小説9
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0