fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ305

「佳織ちゃん、古河は本当に地獄へ堕ちたわね。それも自衛隊に堕とされたんだから」市役所での手続きや撤去を依頼する石工店との業務調整を終え、ついでに菩提寺にも顔を出して思いがけず墓石のお精抜きが終わった佳織はホテルにチェックインしてママさんの元スナックに顔を出した。するとママさんは水割りを作りながら唐突に思いがけない話を口にした。
帰国して最初に転入した公立中学校の担任だった古河は慣れない日本語の授業に苦心している佳織に図書室で個人教授していたのだが、やがて自分のアパートに連れ込むようになると巧妙に籠絡して純潔を奪った。その後も若く美しい性玩具として弄び、心に癒すことができない深い傷を負わせた。その古河も市営墓苑に墓を所有しているらしく佳織は墓参して会ったことがある。ところが前回はそれを察したモリヤが歩み寄り、家族の前で「お前は間違いなく地獄に堕ちる」と宣告して「40年前、ハワイから転校してきた女生徒に担任として何をしたか思い出してみなさい」と理由も本人だけに判るように臭わせたのだ。
「それは東京では報道していなかったわ。どこで」「北海道の航空の基地で警備の地雷が爆発したじゃない。古河はガソリンを持って巻き込まれたから黒焦げになって死んだのよ」「あの事案は自衛隊でも航空の話だから死者の名前までは伝わってこなかったわ」航空自衛隊千歳基地でFー15を放火・破壊するためシェルターに近づいた侵入者に指向性散弾地雷・クレイムアを使用した事案については数回目と言うこともあってマスコミはそれほど熱心に報道せず、陸上自衛隊でも携帯していた銃器がこれまでの中国製の小型拳銃・92式手槍ではなくロシア製の短機関銃・PP19と手榴弾・PGP5だったことと放火と言う新手の攻撃手段ばかりが問題になって情報や議論もそちらに集中していた。その点、地元では元教員の市民が犠牲になっただけに新聞の地方版やローカル・ニュースが詳しく取り上げているようだ。
「古河は佳織ちゃんにしたことを家族に知られて家を追い出されたそうよ。奥さんも元教師、息子夫婦も教師だから教育者にあるまじき性犯罪を許さなかったのね。奥さんはインタビューに答えなかったし、息子さんは家を出た理由を『過去に犯した罪』って説明していたの」「それがどうして北海道へ・・・」結局、古河はモリヤの宣告を言い逃れることができず、家族の教師たちの追及に自白せざるを得なかったのだろう。父親と同時に教育者の先輩としても尊敬されていれば失望は憎悪に発展し、家に居場所がなくなるのは当然だ。
「本当は沖縄で反米軍基地運動に参加するつもりだったんだけど、北海道の友人に『叩くなら自衛隊だ』って誘われて変更したみたい。それで死んだんだからやっぱり佛罰ね」あの後、祖父は佳織がレイプされたことを学校に訴えて古河の懲戒免職を要求したが、校長は古河が教職員組合の活動家で反発すれば学校の業務を妨害する危険があると説明して結局、学年途中の転勤だけで揉み消した。定年退職して10数年が経過しても現在の国家非常時に反アメリカ軍・反自衛隊の活動に参加すると言うことは校長が危惧した妨害活動を起こす危険性は本当だったようだ。
純潔を奪われた時、古河は怯える佳織を男性との遊びに慣れた好色な娘のように扱い、乱暴に性器を貫いた。その癖、破瓜の出血を見ると異常に独占欲を燃え立たせ、全身を刺激して性感帯を探し、愛撫の反応を確かめた。つまり自分の思うままに弄べる愛玩動物・性玩具にしようとしたのだ。地獄に堕ちてもらわなければ納得できない。
「あの時、お祖父ちゃんは軍人時代の軍刀を持ち出して古河を殺して自分も死ぬって言い出したの。だからお母さんとお祖母ちゃんが必死に止めて、私は泣いちゃったのよ。あの罪を今頃になってあんな風に償うなんて・・・」「モリヤさんがいつも言ってる通り、世の中は因果応報なのね」話が区切りになったところでママさんが作った水割りで乾杯した。今日は少し濃い目なのか喉と頭が少し痺れた。そこで佳織は言わなければならないことを伝えることにした。
「実は私、自衛隊を辞めてハワイに行くの。その時、あの人と別れるわ」「・・・いよいよ籍を抜くのね。佳織ちゃんも若いんだからハワイで新しい出会いがあるかも知れないよ」意外にもママさんは離婚を予感していたようで自然に受け止めた。古河から男と言う動物の卑劣さを教えられて以来、男性に近づくことを避けていた佳織が前川原でモリヤと出会い、恋慕の情を訴えたのを受け止めたのは母の親友だったママさんだった。あの頃、モリヤには妻子があったが、それを奪うことも後押しした。その夫婦関係が終焉を迎えようとしている。
「モリヤさんは佳織ちゃんのために犠牲になってきたのよ。それがモリヤさんの愛し方だとしても私には痛々しくて見ていられなかったわ。モリヤさんに支えられてきた職業を辞めるなら踏み台の役も終わらせて上げなさい。それが佳織ちゃんの妻としての最後の愛よ」ママさんの言葉は水割り以上に胸に染みわたった。夫婦の別離は相手に対する憎悪が燃え立っていなければ実行できるものではない。しかし、佳織の場合は圧倒的な敗北感がそれを決断させた。
  1. 2022/11/12(土) 15:28:19|
  2. 夜の連続小説9
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<続・振り向けばイエスタディ306 | ホーム | 11月12日・共産党中国の劉少奇元主席が虐待死した。>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/8035-5e9ce62e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)