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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ311

「ロシアと戦争になれば日本国内でウクライナのような惨劇が始まることになる。我々はこのような事態に陥ることを懸念して韓国、中国との早期和解を政府に要望してきたんです」国会の衆議院予算委員会では立権民衆党の湧水代表がロシア軍によって拘束されているKLMオランダ航空321便の日本人乗客への対応を質問していた。それでも内容は韓国が海上自衛隊の対潜哨戒機を撃墜したことを発端とする日韓・日中の武力衝突に対する石田政権の責任の追及だった。湧水代表は日本の47都道府県の中でも広島と沖縄と共に「赤(=左翼)の御三家」と呼ばれる京都が選挙区なので政治上の主張は共産党と大差はない。この質問も選挙区の支持者の多くが購読・視聴しているA日新聞の論説を台本にして系列テレビのニュースで賛同されることが目的で政治的見識がある訳ではない。
「内閣総理大臣、石田史雄くん」「委員長、私が代わりに答弁します」「それでは双木外務大臣」質問が終わって答弁になると腰を浮かせかけた石田首相を手で制して隣りの席の双木外務大臣が立ち上がった。石田首相は選挙区の広島でマスコミが報じ始めた「若狭湾の原子力発電所の破壊された原子炉の封鎖作戦にアメリカ軍の戦略爆撃機を使用したのはロシアへの攻撃の予行演習だった」と言う疑惑に同調する市民運動の拡大に苦慮していて答弁も無難な言葉選びに終始している。そのため双木外務大臣の指揮でロシア国内の外交官たちが危険を冒して収集している情報は活かされていない。ならば双木外務大臣自ら答弁するべきだ。
「我が国は韓国、中国の一方的な武力行使によって多くの自衛官、海上保安官、警察官、漁民の生命を奪われても一貫して正当な自衛措置のみを採ってきました。委員が言われる早期和解は韓国と中国が自分たちの犯罪行為を認めず、科学的検証結果さえも否定しているから成立しないのであって我が国に瑕疵はありません」「湧水くん」「相手が認めない以上、こちらの主張が正しいとは言い切れないのではないですか」「双木外務大臣」「委員は我が国の公的機関が実施した科学的鑑識・検証と根拠も示さない韓国と中国の批判のどちらを信じるのですか。私は我が国とアメリカの検証結果を信じます」湧水代表も流石に失言だったことを自覚したようで質問の趣旨を変えた。やはり論敵にするのは石田首相の方が良かったようだ。
「次の質問に移ります。ロシアはKLM機が飛行計画の変更を通知せずに許可を受けないまま領空侵犯したため強制着陸させたと説明しています。これが事実であればオランダ政府とKLMに対して抗議するべきではありませんか」「双木外務大臣」「在オランダ大使館が受けたKLMとオランダの航空当局の説明ではKLM321便はアムステルダム空港の飛行前点検でコーション・ランプの不具合が発見されたため1時間遅れで離陸しましたが、この変更をロシアの航空当局に通知していることはヨーロッパ圏の運航統制を担当しているEUの関係部局が確認しています。ただし、ロシア当局からの返信は確認できておらず現在も事実確認を継続しています」湧水代表はこの情報を知らなかったようで珍しく即答しなかった。今回も日本のマスコミは批判がロシアに向かうことを巧妙に避けながら拘束されている日本人の乗客の経歴や人物像などの個人情報や家族と友人の不安の声ばかりを報じて、外交交渉で解決できない石田政権や双木外務大臣への批判世論を扇動しているのだ。
「その後、ロシアはKLM機がNATOの指令を受けた偵察機でシベリアの軍事基地の上空を通過して情報収集に当たっていたと主張していますが、これが事実であれば大韓航空機のようにす撃墜される可能性もあったのではないですか」「確かにロシア軍は拘束している機長に機体の貨物室から取り外したと称する高性能カメラを見せたようですが、立ち合った元航空自衛隊の弁護士が遠隔操作する機材が接続されていないことを指摘したため取り下げたようです」「元航空自衛隊の弁護士なんているのか」双木外務大臣の答弁に委員会室では呆れたような声が起こった。この情報も外務省は定例記者会見で説明しているがマスコミは「元航空自衛隊の弁護士」の活躍を披露するのを嫌って採用しなかった。当然、人物も特定していない。
「ここで1つ、残念な事実を補足しなければなりません。本当は午後の定例記者会見で発表するつもりでしたがこの場をお借りして申し上げます。委員長、よろしいですか」「手短にどうぞ」湧水代表が用意してきた台本では対応できなくなって読み返し始めると双木外務大臣は席に戻らず委員長に発言を求めた。
「実はKLMから321便に搭乗していた日本人の客室乗務員がロシア軍の基地内で自ら生命を絶ったと言う訃報が届きました。外務省では事情説明させるため職員を実家に派遣していますが、まだ遺族の意向が確認できていないので発生経緯や個人情報は控えさせていただきます」「名前くらいは良いだろう」「それを漏らせばネットで暴露されるぞ」双木外務大臣としてはロシア軍の実態を国民に周知するために許し難い原因を公表したかったがそれは控えた。
  1. 2022/11/18(金) 14:41:09|
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