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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ319

「いよいよ全方位からの戦闘になるな」「2大軍事大国が総掛りだ」私の証言が在オランダ大使館から日本の外務省、防衛省に届くと横田基地の航空総隊司令部では陸上と航空の総隊司令部と海上の自衛艦隊、在日アメリカ軍と第7艦隊日本派遣隊による作戦会議が開かれた。今回は終了予定時間を設けない閣議のため双木外務大臣は出席できなかった。
「自衛艦隊は弾道ミサイルに対処するためイージス護衛艦4隻を日本海北部に配備している」「高射部隊は破壊措置命令が出れば即座に出動できるように準備を整えている」自衛艦隊司令官と航空総隊司令官の説明で海上と航空の即応体制の格差が明確になり、陸上の出席者は苦笑した。浜防衛大臣は治安出動命令と同時に海上における警備行動と弾道ミサイルの破壊措置命令を維持していたが、交代した釜田防衛大臣は準・戦時体制の長期化を批判するマスコミをなだめるため「最も影響が少ない」と判断した破壊措置命令を撤回した。北朝鮮が弾道ミサイルで若狭湾の原子力発電所を破壊した時は事前に宇宙ロケットの発射実験と通知してきたため発令しなかった。それでも航空自衛隊の高射群は基地で発射態勢を維持すれば即応体制なのだが、作戦計画で防御地点に機動展開することを前提にしているため動きが取れないようだ。
「いくらイージス護衛艦でも弾道ミサイルを全弾撃破するのは無理だろう」「それは当然だ。航空機なら同時に複数の目標を撃破することは可能だが、弾道ミサイルは1隻で1発を捕捉、追尾、撃破することで精一杯だ。勿論、1発を撃破すれば次の目標に対処できるぞ」自衛艦隊司令官の自信に満ちた答えに同席している第7艦隊日本派遣隊司令官もうなずいた。海上自衛隊はイージス護衛艦を8隻保有しているが、中国も日本を射程に収める台湾に向けた弾道ミサイルを配備しているため全艦を日本海に集中させることはできない。
「そうなるとロシアが5発以上の弾道ミサイルを同時発射すれば数発は着弾することになるな。核は使用しないにしても都市部に着弾すれば多くの市民が犠牲になるぞ」「狙ってくるとすれば先ず航空自衛隊の基地でしょう。特に自衛隊単独の基地が危ない」陸上総隊司令部の1佐の幕僚の見解に航空総隊司令部の1佐の幕僚が反論した。先制攻撃では航空基地やレーダー・サイト、高級司令部、通信網を破壊するのが軍事常識だが、日本の場合は都市部に被害を与えればマスコミの扇動を受けて国民の反戦世論が高まり、防衛戦争を阻止する亡国行動が期待できる。陸上自衛隊はこの手の政治的状況判断を得意としている。その点、航空自衛隊としては市民の被害は地元自治体の担当業務であって関与しても仕方ない余計な心配だ。
「それよりも問題なのはロシア軍が弾道ミサイルの次に襲来させる爆撃機や空挺部隊を降下させる輸送機に日本人の人質を同乗させると言う噂が本当だったことだ」航空総隊司令官が話題を換えると会議室の空気は一気に重くなった。陸海空自衛隊の席は暗く沈んでいるがアメリカ軍の席では怒りの炎が燃え上がっている。やはりアメリカ軍にとっての戦争はカミに代わって正義を実現する手段であって非人道的戦争犯罪は許し難い凶悪事なのだ。
「内局からは撃墜することなく強制着陸で対処しろと言う大臣の指示が届いている」「大臣からの撃墜禁止命令と言うことか」「しかし、日本人が乗っていると判っている敵機を撃墜できるのか」航空幕僚副長の説明に航空総隊司令部の出席者たちは小声で色々な感情が交錯する複雑な議論を始めた。以前からインターネット上ではKLMオランダ航空が「自死した」と発表した小森希恵の個人情報と自死理由の下卑た憶測やロシア軍に拘束された日本人の乗客たちの個人情報の暴露が飛び交っているが、オランダ人の乗客だけの解放が公表されてからは日本人の利用方法の分析が大盛況になっている。それを日本人としては唯一生還した私の証言が肯定することになった。釜田防衛大臣が過剰反応するのは至極当然だ。
「強制着陸にはシグナル・ブロー(警告射撃)や威嚇射撃が伴う。それで何とかするしかない」「操縦不能にして不時着させるのか。ロシア軍の編隊には護衛の戦闘機が随伴しているのだろう。ドッグ・ファイト(空中戦)しながらのそれは無理だ」日頃は思索を放棄しているかのように強気な戦闘機パイロットの幕僚たちの見解も悲観的だ。
「ロシア軍はウクライナ侵攻の緒戦でキーウを制圧するために空挺部隊を使用した。そこで反撃を受けてかなりの人員を消耗したはずだが、今回はどのくらい動員できるのかな」「ソビエト連邦軍は150個以上の空挺師団と自動車化狙撃師団を保有していたが、今の正規軍は28万人まで縮小している。しかし、予備役の空挺兵も確保しているようだから油断はできないぞ」航空自衛隊が黙ってしまうと陸上総隊司令部の幕僚が在日アメリカ軍=第5空軍の参謀と問答した。自衛隊では空挺部隊を精鋭中の精鋭「空の神兵」として厳しく訓練しているが、外国軍では一般市民のスポーツにもなっているパラシュート降下ができる特殊技能を有する隊員程度の位置づけなので予備役も珍しくはない。
  1. 2022/11/26(土) 14:44:19|
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