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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

12月20日・鰤(ぶり)の日

12月20日は国際的には「シーラカンスの日」ですが日本では「鰤」が魚辺の師走の「師」であることに掛け、「二つ(ふたつ)」と「○=輪(りん)」でこじつけた「鰤の日」です。ちなみに関西地方では鰤を「年寄り魚」と呼んで大晦日に食べる風習があります。
鰤はハワイを中心に太平洋を4つに分けると北西4分の1の海域に分布していて(他の3つには同属のヒラマサ)、黒潮=日本海流に乗って日本列島に近づくとそのまま太平洋岸を北上して千島列島に向かう魚群と対馬海流に乗り換えて日本海を北上する魚群に分かれ、水深100メートル程度の中層海域に生息します。魚体は1メートル前後、体重8キロ前後まで成長するので、比較的近海で獲れる鰤は背中の青、腹の白、中央の黄色の線の色合いも美しく、脂分が豊富で日本人には古くから親しまれてきた高級大衆魚でした。
鰤と言えば成長する=大きさに従って名前が変わる「出世魚」と呼ばれますが、野僧は全国各地に住んだおかげで単純に出世魚ではなく地方で呼び名が違う「地方魚」であることも知りました。現在では標準語とされている江戸=関東地方では40センチ未満をワカシ、60センチ未満をイナダ(精神科医の作家・なだいなだ先生のペンネームはスペイン語の「ナダ・イ・ナダ=何もなくて何にもない」に由来します)、80センチ未満をワラサ、それ以上をブリとしています。一方、食文化の中心地・大阪=関西地方では30センチ未満をワカサ、40センチ未満をツバス、60センチ未満をハマチ、80センチ未満はメジロ、それ以上は同じくブリです。ただし、どちらも食材としての呼称のようです。
ところが関西地方でありながら紀州=和歌山県では20センチ未満の幼魚をワカナゴ、30センチ未満をツバスやイナダ(関東地方とはサイズが違う)、40センチ未満はハマチ(関西地方とはサイズが違う)、60センチ未満がメジロ、80センチ未満をオオイオと呼ぶ一方で60センチ以上をブリと呼ぶこともあります。つまり関東と関西が不正確に混同しているようです。ブリの漁獲量日本一の出雲=島根県では20センチ未満をモジャッコ(京都・舞鶴の10センチ未満の稚魚と同じ)、30センチ未満をショウジンコやツバス(関西や舞鶴、和歌山と同じ)、40センチ未満をハマチ(関西とはサイズが違う)やヤズ、60センチ未満はメジ、70センチ未満はマルゴでそれ以上はブリです。
さらに太平洋側の三陸=東北地方では20センチ未満がコズクラやショッコ、30センチ未満がフクラギ、40センチ未満はアオブリ(ブリとの分別は不明)、60センチ未満はハナジロ、70センチ未満はガンドでそれ以上はやはりブリです。そして九州では20センチ未満がワカナゴやヤズ、40センチ未満はハマチ(北陸・和歌山・高知・島根と同じ)、60センチ未満はメジロ(和歌山や高知と同じ)でそれ以上はブリです。
こうして見ると成魚の鰤は全国共通で中間のハマチも多数派ですが、小魚の間は親しみを込めて愛らしい名前で呼んでいたようです。
現在では産卵した藻を回収する養殖が盛んですが(稚魚のモジャコは藻雑魚と書く)、生産地は九州と四国に集中していて中でも鹿児島県が全国総生産の3分の1、2位の大分県の倍近い4万5千トン近くを生産しています。
  1. 2022/12/19(月) 15:25:33|
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