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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ348

「モスクワは何を焦っているんだ」シベリアのロシア極東軍管区司令部では想定外に頑強な自衛隊の抵抗に直面して当惑しているところにモスクワから日本本土への侵攻を督促する命令が届き、参謀たちは半ば怒りながら対応を話し合っていた。
「大体、北京は日本人は異常に戦争を恐れるから多目に兵隊を殺せば白旗を上げるって言っていたんだろう」「白旗じゃあなくて赤旗で我が軍を歓迎するって聞いたぞ」やはりモスクワはウクライナ侵攻と時間差で台湾に侵攻する計画だった北京と共同戦線を張る約束をしていたようだ。今回の日本への攻撃はアメリカが強行に台湾防衛を明言したことで北京は目標を旧・琉球王国の領土併合に変更したのだが、それも海上自衛隊によって阻止されたためロシア軍の出陣を要求したのだ。確かに中国は「琉球王国は属国だった」と言う歴史観を沖縄県内に蔓延させて「対馬は韓国領」と言い続けている韓国と共に「侵略ではなく日本に奪われていた領土を取り戻す歴史の修正」と主張している。実はロシアも樺太や千島列島のアイヌたちを利用して「北海道は内地の人間に奪われた」「内地人の領主によって差別・迫害を受けた」「明治政府の同化政策によって民族として抹殺された」と言う歴史観を喧伝し始めていた。
「それで日本人を爆撃機に乗せれば自衛隊は手出しできない。殺せば日本人が許さないって言うから実行したが無駄だった」「軍としては当然の処置だが日本なら有り得ると思ったんだがな」ロシアから見れば日本は日露戦争で多大の損害を受けた強敵だったが、スターリンの世界共産化戦略・第3インターナショナルの標的になってからは教育者やマスコミ関係者が政治工作員になって軍人を含む国民を洗脳し、シベリア出兵のための戦力だった満洲軍を南下させて国民党軍と戦わせることで毛沢東の共産革命を実現させた。しかし、本土決戦によって国土がドイツのような焦土となって国民にアメリカへの憎悪を燃え立たせたところへ解放者として進駐して共産化する最終段階は昭和天皇の聖断で頓挫した。それでも戦後も政治工作員によって親ソ反米意識を植えつけているので精神的には従属国のはずだ。
「モスクワとしてはこの間のショー・ザ・フラッグの失敗の弁解にブーツ・オン・ザ・グランドを北京に見せたいんだろう」この参謀は中々の日本通らしく9・11テロ以降、アメリカが日本に自衛隊の参戦を要求してきた時の謳い文句を英語で引用した。「ショー・ザ・フラッグ」は2代目ブッシュが9・11テロを受けてイスラム教徒の全てをテロリストと断定して「テロと正義の戦い」を宣言した時、日本にも「自衛隊を派遣しなければ敵と看做す」と脅しながら「旗幟を鮮明にせよ」と迫ったものだ。この時、小泉政権は海上自衛隊の補給艦と護衛艦の艦隊をインド洋に派遣して各国の艦艇に給油することで参戦の実績を作ったが陸上自衛隊はアフガニスタンに足を踏み入れなかった。そのため続くイラク侵攻では地上部隊の派遣を要求し、そこで用いたのが「ブーツ・オン・ザ・グランド(靴で地面を踏め)」だった。それでも陸上自衛隊がイラク国内で最も治安状態が良かった南部のサマーワに派遣されたのは中曽根康弘政権以降、アメリカとの連携を強めてきた外務省の功績だ。
「そうなると次は輸送機で空挺部隊を降下させることになるが・・・」「ウクライナの時にキエフ(今はウクライナ語でキ―ウ)を奇襲しようとして失敗したからな」「まだ地上軍はあの時の損害が回復できてないんだよ」2022年2月のウクライナ侵攻の緒戦でロシア軍は空挺部隊をキ―ウ地区に降下させて首都を制圧しようとしたが、予想以上にウクライナ軍の防衛態勢は実戦的で多くの輸送機が撃墜されただけでなく地上に降り立った将兵も包囲されて大半が拘束・撃破された。ロシア軍は予備役の空挺要員も確保しているが、現役復帰させて奇襲部隊に配置するには専門的な訓練を受けさせて練度を上げなければならず、部隊を再編成するまでには至っていない。何よりも現役復帰を志願する若者は皆無に等しいのだ。
「東京を制圧するには戦力不足だから北海道の首都の札幌を狙うんだな」「札幌ならサハリンと国後からヘリでやれるだろう」この地上軍の参謀はヘリコプターの航続距離と地図上の直線距離だけで提言して自衛隊の迎撃は考慮していない。当初の作戦計画では爆撃機によって航空自衛隊の千歳基地と佐度島以北の日本海側のレーダー・サイト、海上自衛隊の大湊地方総監部、陸上自衛隊の北部方面隊総監部と師団司令部を破壊して、間髪入れずに通常の将兵を乗せた輸送機を北海道内の空港に強行着陸させて武器を与えている日本人工作員と協力して地上戦を開始する予定だった。ところが爆撃機が全滅させられただけでなく工作員も治安出動している陸上自衛隊によって次々に摘発されて期待していた自衛隊への破壊活動は進んでいない。
「大統領閣下が命令にサインしている以上、実行するしかない。急いで新たな作戦計画を策定しろ」参謀たちの会話がボヤキから進まないので参謀長は叱責するように指示した。どうやらロシア軍の参謀機能はソビエト連邦軍時代の政治局員の介在の後遺症を脱していないらしい。
  1. 2022/12/25(日) 13:32:00|
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