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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ349

「サハリンからロシア機、5機編隊がヘディング120(飛行方位120度)でオホーツク海に向かいます」「日本海ウェスト(西方)にもロシア機、こちらも5機編隊でヘディング090。どちらも速度から見てベア(ツボレフ95)とエスコート・ファイター(護衛の戦闘機)と思われます」日本人工作員の破壊活動によって根室に展開していた第6高射群が全滅し、ロシア軍の地対地ミサイルの攻撃で稚内と根室のレーダーサイトが破壊されて数日後の朝、ディッパー(北部防空指令所のコールサイン=仮称)ではロシア軍の新たな動きに直面していた。
ツボレフ95ベアは朝鮮戦争でも使用された4発ターボフロップ・プロペラの旧式機だが機体としての信頼性が極めて高く、多用途に改造されて元気に現役を続けている。宇宙ロケットのソユーズも同様だがソビエト連邦時代の堅牢を優先する工業技術は決して馬鹿にできない。
「このタイミングで2機が同時に接近するのはECM(電子攻撃)ではないでしょうか」「確かに可能性は高いな」ディッパーの階上のSOC(航空方面隊指揮所)では防衛部運用幕僚の兵器管制幹部が見解を述べた。運用幕僚には戦闘機パイロットや高射幹部もいるがこの客観的な分析は兵器管制幹部でなければできない。
「こちらを目潰しして次の一手を討ってくるのかも知れません」「陸自の北方(北部方面隊)と海自の大湊にレモンジュース(空襲警報の第2段階=黄色)を伝達」「殺られる前に撃墜するしかありません」運用幕僚同士の議論では航空作戦について無知なため蚊帳の外に置かれる高射幹部が珍しく危ない結論を出した。北部航空方面隊では2個高射群のうち第6高射群が全滅したため戦力は半減している。しかも警務隊と警察合同の現場検証で第3高射群が陸上自衛隊によって守られたのに比べて第6高射群が全滅した現場には民間人の私有車と狩猟用のライフル銃が残っていて自隊警備では工作員の破壊テロを阻止できなかったことが判明している。つまり手持無沙汰になった上、面目丸潰れだった。
「撃墜するって何を使うんだ。PAC3では届かないだろう」「海自のイージス護衛艦隊も弾道ミサイル対処の位置に戻っているからシースパローでは無理だぞ」勇ましく大見得を切った高射幹部に防衛大学校の出身期が近い戦闘機パイロットと兵器管制幹部が現実を説明した。
「大体、我々が対領空侵犯措置で警察権を行使できるのは正当防衛と緊急避難、逃走防止だけで武器を搭載していないECM機では違法になってしまう・・・防衛出動が発令されなければ何もできないんだ。各レーダー・サイトにEP(電子戦防護=以前はECCMと言っていた)を発令しろ」さらに戦闘機パイロットの運用課長が議論を締め括った。
石田政権では立野官房長官と双木外務大臣が「防衛出動を発令しなければ日米安全保障条約が発動できない」と即時発令を要求しているのに対して釜田防衛大臣は「ロシアの参戦を理由にすれば敵対行為として核兵器を用いる口実を与える」と反対していて石田首相や多くの閣僚も同調している。反対派を含む日本人の大半が読んだことがない日米安全保障条約では国際連合の介入が及ばない日本の領域への武力攻撃を発動要件にしているため、あくまでも常任理事国としての許容範囲内で武力行使している中国やロシアに対してはアメリカ軍の出動命令が発令できないのだ。仮に発動できるとすれば日本政府が中国とロシアの武力行使を「侵略」と認定して防衛出動を発令し、日本の国会が承認したことを根拠にアメリカの連邦議会にも発動を可決させるしかない。しかし、日本のマスコミは韓国軍の武力行使に中国が介入して以来、この規定を国民に周知し、信用度は皆無に等しい世論調査で「国民の意思」と喧伝しているのだから日本の内側から日米安全保障条約の弱点を突いていることになる。
「RCー2を2機発進させて日本海と北海道へ向かわせろ。エスコート(護衛)に小松と千歳のイーグル(F―15)を6機ずつだ」ディッパーとセンチュリー(中部防空指令所のコールサイン=仮称)が対処療法的に各レーダーサイトの電子戦対策を講じた時、航空総隊指揮所も迅速に動いていた。入間基地の電子作戦群が運用するRCー2電波情報収集機を発進させ、ロシア軍が実施する電子妨害をアカラサマに監視して格好の情報源にしようと言うのだ。
RC―2は2020年に導入された最新鋭電波情報収集機で、以前はYSー11旅客機(=航空自衛隊では輸送機)を改造していたが機材の大型化と機体の老朽化のため国産の大型輸送機Cー2に代替わりさせた。これが間近に迫ればロシア軍としても拙い事態になる。
「奴らはこちらを目潰しして何をやってくる気なのかな」「空襲のやり直し、輸送機を飛ばして空挺部隊の降下、毎度定番のヘリボーン(ヘリコプターによる部隊投入)・・・」「ついでにカモノハシ(ECー1電子線訓練機の愛称)を発進させてサハリンのレーダーを目潰ししてやりますか」航空総隊としても海上自衛隊に手柄を奪われ通しでは沽券に関わるらしい。
  1. 2022/12/26(月) 15:25:24|
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