暖冬が一転して極寒になる前日の12月9日に小庵としては3匹目の黒猫がやってきて沖縄の守護尊「弥勒世果報(みるくゆがふ)」から「世果報(ゆがふ)」と名づけました。
小庵では野僧が主治医の診療所に受診した時、掲示板に「黒猫いりませんか」と言う貼り紙があり、やってきたのが亡き妻の魂が宿っていたかのように賢く優しく麗しかった黒猫の音子(ねこ)でした。当然、音子は深窓の令嬢のように育てたのですが、生まれた家が田畑のド真ん中だったため子猫の頃から広い土地を全力疾走し、庭木を身軽に登って育ったので発情期がくると雨戸の戸袋の僅かな隙間から脱走してイケメンのキジ虎の雄猫と結ばれてしまいキジ虎の一匹娘・若緒(にゃお)を生みました。
若緒は美雄美雌の両親の娘だけあってモデル猫にしたいほど美猫でしたが屋外飼いにするため避妊手術を受けさせていたので野良の雌猫の発情期で集ってきた野良の雄猫に性別不明で敵視されてしまい、追い回されて車道に飛び出して車に跳ねられて死んでしまいました。一卵性親子のようだった音子の哀しみは並みの人間以上に深く、その姿は見ていて野僧も妻を失った時の哀しみが甦り、1人と1匹で慟哭の淵に沈んでいました。
そんな時、下関市内で個人として野良猫の保護活動をしている女性から唐突に「子猫をもらって欲しい」と言う連絡が入り、否応もなしに捨てられていったのがキジ虎の寿来(じゅらい)でした。この名前は捨てられてきたのが7月と言うこともありますが、若緒の猫生が還ってくるように、そして若緒の分まで長生きするようにと言う願いを込めました。ところが寿来は保護されている多くの子猫の中で苛められていたらしく成猫の音子に飛びかかって両者の仲は険悪になってしまい、やがて音子の堪忍袋の緒が切れて寿来を追い出そうとしたのです。そこで野僧が寿来の身の上を懇々と語り聞かせ、母親として躾けて欲しいと懇願すると音子は理解したようで、庵内では自分の居場所を決めて過ごし、寿来が立ち入った時だけ叱責して適度の距離感を保ち、次第にその距離を縮めて家族になりました。ところがそんな時、若緒を追い回して殺した野良の雄猫が姿を現すようになって音子は後をつけようとしたのか車道で交通事故死してしまいました。
母親代わりを失った寿来の悲しみも埋葬している野僧の腕に飛びかかるほど激しく、それからは物憂げに1匹暮らしをしていましたが、隣りの屋敷に棲みついていた黒猫の子猫が寿来を迎えに来て一緒に出かけるようになって、そこで捕まえたのが黒猫の伽羅(きゃら)でした。ところが伽羅は寿来や野僧と同居人に全くなつかず、寿来と天井裏で激しく喧嘩するようになって姿を消してしまいました。
そして今回、やってきたのが黒猫の世果報(ゆがふ)です。世果報が来たのも寿来と似たような経緯で町内のリゾートホテルの駐車場の庭園にもう1匹の黒猫と棲みついていて(多分、捨てられた)従業員の女子たちが可愛がっていたのですが寮で飼う訳にもいかず引き取り手を探していて「黒猫好き」と思われた同居人に声がかかったのです(もう1匹の黒猫は前日に捕まって別の男性に引き取られた)。ところが今度は寿来が音子のような立場になっていて野僧としては常に頭を悩ましています。
- 2022/12/26(月) 15:28:21|
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