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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ368

八雲分屯基地では根室の展開地跡で収容されたPAC2とPAC3の爆発と誘爆で全滅した2個高射隊の隊員たちの遺骸が運ばれてきて体育館には200基以上の白木の棺が並んでいた。遺骸の収容は国後島からのミサイル攻撃によって根室のレーダー・サイトが破壊され、続いて発進したロシア軍のヘリコプターが陸上自衛隊の改良ホークに撃墜されたため4カ所の展開地での現場検証が進まず、遺骸は根室分屯基地の隊員によって寝袋に収められ、住民避難のために運行していたJR北海道の最終便で千歳基地に運ばれ、そこでDNA検査の検体を採取した上で納棺され、八雲と車力に送られた。どちらの分屯基地も基地機能を維持するため最小限の隊員が残っていてCHー47ヘリコプターから隊長以下の棺を下ろして体育館に運んで安置した。それからは警衛勤務とは別に屍兵(しかばねへい=遺骸を守る衛兵)に立ち、千歳基地から送られてくるDNA検査の結果を受けて番号だけを記してある棺の蓋に氏名を書いた紙を貼り、隊本部の留守番の空曹が人事記録の顔写真を拡大コピーした遺影を載せていた。
「これが滝沢3尉で間違いないんですね」「うん、DNA検査の結果だ」「あの時、ECSに上番していたのはタキリンだったのは判ってるんですが、あの可愛い娘ちゃんが・・・」滝沢晴菜3尉の遺骸は外気と遮断されているECS(射撃管制装置)内で発見されたが、周囲で続発した誘爆によって超高温の火焔に晒され続けたことで空気取入口が破損し、そこから熱風が吹き込んで蒸し焼きになったとの検証結果が届いている。そのためなのか待機車や隊本部車で死亡した多くの隊員たちに比べてECSの3名の遺骸は原形を留めているが、妻帯者の空曹も24歳の若さと都会育ちの洗練された美貌で分屯基地の隊員たちの憧れの的になっていた滝沢晴菜3尉とは認めたくない悲惨な状態になっていた。
「公的機関が遺体安置所で線香を使うのは東日本大震災で民政党政権が禁止したはずだ」「自衛隊は部隊葬を宗教行為にするのか」戦死者=殉職者全員のDNA検査による身元確認が終わったところで第6高射群では部隊葬を実施することになった。根室への展開に同行していながら指揮所運用隊に居たため生き残った群司令以下の主要幹部たちも八雲と車力に分かれて列席している。会場の体育館は棺で一杯なので間隔なしに並べ直して奥の壁の中央に「殉職隊員霊位」と墨書した白木の柱を立てて献花台を置き、自衛官と遺族の席を作った。ただし、警衛要員以外の八雲分屯基地の所属隊員は全員が儀仗隊になっているので参列部隊はない。
ところが取材に来た新聞記者たちが体育館内に充満している線香の匂いを問題視して厳粛で沈痛な空気を破壊するような罵声を上げた。マスコミは関東地方の被害者に媚び諂って気象庁に東日本大震災と命名させた東北地区太平洋沖地震で、災害派遣している自衛隊が搬送する犠牲者の遺骸に手を合わせていることを「憲法の政教分離に違反する」と弁護士でもある杖野官房長官を追及して禁止させた。その後は被災地の自治体の遺骸安置所で遺族が念佛を唱えているのを職員が黙認していることを問題化して、線香を焚いていることまで宗教行為と認めさせた。マスコミにとってあの事例は「憲法を守った」殊勲なのだ。
「遺骸を安置して時間が経っているので死臭がかなり酷くなっています。それを消すためにやむを得ず線香を焚いているのです」「それなら消臭スプレーで良いだろう」「それではあまりにも味気ない・・・」「やっぱり憲法違反の宗教行為にするつもりだな」「憲法が禁止する戦争を始めたんだから始めから無視してるんだろう」記者たちは留守番の唯一の幹部で、今回は儀仗隊長になった基地業務小隊長の1尉が必要性を説明すると杖野官房長官のように吊るし上げにした。その見苦しいやり取りを遺族席の妻たちは険しい表情で聞いていた。妻たちは身元が判明しても砕け散って焼け焦げた遺骸との対面を果たしていないのだ。
「気に入らないなら出て行け」「英霊を弔う気がない奴は許さんぞ」唐突に体育館の奥の壁の前に整列している儀仗隊の隊員が怒声を上げた。航空自衛隊の儀仗隊は最小編成で1個分隊=10名だが警衛要員を除けば5名しか確保できず、しかも全員が健康不安で残留した定年直前の曹長ばかりだった。曹長たちは韓国海軍に撃墜された海上自衛隊の対潜哨戒機の搭乗員以降、今回の事態における自衛隊や警察、海上保安庁、消防の殉職者を合祀するように要請しても靖国神社は加倍政権の安全保障関連法案の審議中に明言した通りに拒否したことを怒っている。靖国神社は厚生労働省が新たに身元を確認した戦没者を通知すれば事務的に合祀するが、岸田政権自体が戦死者扱いすることを避けていたので実施しなかった。
「ワワワ・・・ここでも国民を殺す気か」激昂した儀仗隊員の1人が64式小銃に着剣して銃剣道の「構え銃」の姿勢を取ると記者たちは後退さりながらデジタル・カメラで撮影した。高射部隊が大量増殖させている武道大会の強化要員=銃剣道馬鹿のようだ。しかし、その写真は両手を広げて制止した儀仗隊長のストロボを浴びた後ろ姿が写っただけだった。
  1. 2023/01/14(土) 14:00:34|
  2. 夜の連続小説9
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