1966年の明日1月17日にクロムドーム作戦の派生飛行中の水爆を搭載したBー52戦略爆撃機がスペイン上空でKCー135空中給油機に衝突・墜落した「パロマレス米軍機墜落事故」が発生しました。
クロムドール作戦は1960年から1968年までアメリカ空軍が実施していた水爆を搭載したBー52をテキサス州シェパード基地から発進させて東海岸のニューイングランドで大西洋に出て北上、カナダとグリーンランドの間を通過して北極海を横断、アラスカとカナダの国境付近を南下して(ソビエト連邦を過度に刺激することを避けた)太平洋に出ると西海岸を通過してカリフォルニア州付近で左折してシェパード基地に戻る周回飛行を継続するものでICBM=大陸間弾道ミサイル、IRBM=中距離弾道ミサイル、SLBM=潜水艦発射型弾道ミサイルによる先制攻撃で弾道ミサイルを喪失した時の報復能力を堅持することを目的にしていました。その一方でヨーロッパやアジアでの核戦争に対処する能力を維持・誇示するために大西洋や太平洋を往復する派生飛行も実施していました。
事故の詳細は公表されていないものの派生飛行としてノースカロライナ州のシーモア・ジョンソン基地から大西洋を横断して地中海に入ったBー52が高度約9500メートルでスペインのモロン基地を発進したKCー135から空中給油を受けていて衝突し、2機とも墜落したとされ、KC-135の搭乗員4名は死亡しましたがBー52は4名が脱出しています。そしてBー52に搭載していた4発の水爆のうち3発はスペイン南部のアンダルシア州アルメリア県のパロマレスの農業地帯に落下し、もう1発は西ヨーロッパでは有名なリゾート地だった同地区沖の地中海に水没しました。
地上に落下した3発は最初に発見された1発はほとんど無傷だったものの残りの2発は核爆発しなかっただけで起爆装置の通常火薬は発火・燃焼していて破損した弾体からウランとプルトニウムが漏れ出て2平方キロが放射能汚染されました。そのためアメリカ軍は1750トンの土砂を回収してアメリカ本土のサウスカロライナ州にある核施設に運んで除染処理しましたが、それでも現地では30ヘクタールの5万立方メートルの土砂が500グラムのプルトニウムに汚染されています。また水没した1発はアメリカ海軍が深海探査艇で80日間探索して3月17日になってようやく発見し、サルベージ船で引き揚げましたがこちらの弾体は無傷でした。
この事故を受けて夏のバカンス・シーズンには西ヨーロッパの富豪たちが押し寄せる有名リゾート地に放射能汚染の風評被害が及ぶことを懼れてスペインの情報観光大臣とアメリカ大使が海で泳ぐパフォーマンスを披露しましたが、撮影した場所が15キロ離れた別の海岸だったことが発覚したため改めて現地で撮影し直す醜態を演じました。
その後、地上の落下地点付近では農家が耕作を再開しましたが放射能汚染が確認されたためスペイン政府が土地を買収してフェンスで囲って封鎖しました。しかし、半世紀が経過しても土砂から生活安全基準=規制値の数十倍の放射能が検出されているだけでなくカタツムリなどの生物の汚染も確認されています。
- 2023/01/16(月) 14:52:09|
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