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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ371

「何だ、聞いたことがないエンジン音だな」鹿児島県の奄美諸島の最南=県境の島・呂論島の沙花漁港では早朝から出漁した漁船が帰ってくる時間になって漁業協同組合の事務所に詰めていた組合長が聞き覚えのないエンジン音を耳にして波止場に出ていた。
呂論島は1970年代には空港がある離島として年間18万人もの観光客が押し寄せていたが、平成に入ってバブルの狂乱景気が起こると海外旅行が常識になって離島ブームは消滅した。そのため水産物は約5000人の島民では消費し切れずフェリーで奄美大島や沖縄本島に出荷しているが輸送料金が掛かる上、鮮度も落ちるので漁船の燃料代の確保にも苦慮している。さらに近年は東シナ海の漁場に中国の漁船が大挙して押し寄せて乱獲を繰り返し、海上保安庁も日中の武力衝突によって行動に制限を受けていて取り締まりが滞っている。それでも漁師たちは島民の貴重な蛋白源を確保するため出漁しているのだ。
「あれはウチの島の船じゃあないぞ、あんな形の船は国産にはない」パーン。組合長が漁港の防波堤の出入口に姿を見せた数隻の漁船の姿に困惑していると先頭の1隻から銃声が響き、弾丸が貫通した背中から血を吹きながらその場に崩れ落ちた。それを見て漁船の前部甲板から軍用小銃=56式自動歩槍(中国製AK74)を持った男が立ち上がった。
「先ずは警察だ。派出所はこの集落にある。この島で武器を持っているのは1人だけだ。警官を見つければ構わず射殺しろ。残りは空港と役場を制圧する。その前に木箱を揚げろ」波止場に接岸した漁船から上陸した漁民たちに先頭の船の船長が指示を与えた。漁民たちは全員が56式歩槍を持ち、腰の弾帯には長い弾倉を着けた完全武装だ。指示を受けて漁民たちは漁船の甲板に積んである重そうな木箱を手際よく陸揚げし始めた。この動作はどう見ても軍隊だ。
「これは弾薬と手榴弾だ」「5000人を皆殺しにするのに足りるかな」「足りなければ銃剣で刺殺せば良い」この大量の木箱には島民を殺害するための用具が詰まっているらしい。しかし、腰には銃剣を提げていないので、いくら中国人民解放軍が日本銃剣道連盟の技術指導を受けていても日本軍式の刺殺は無理だ。
「個人では携帯できないから交代で箱を担いで運べ。それも車が手に入るまでだ」やはり指揮官らしい先頭の船長の指示を受けて漁民たちは56式歩槍を吊れ銃すると重いはずの木箱を軽々と肩に担いだ。指揮官は「交代で」と言ったが全員が1箱を担いでいる。
「どの車もキーが差してないな」「これはさっきの老人の車だろう、持ってないか見て来いよ」指揮官が漁業組合の事務所を確認している間に漁港の駐車場に移動した不審な漁民たちは停めてある日本人の漁民たちの軽4トラックの車内を覗いたがどれもキーは差してなかった。その中で1台だけ少し高級な乗用車があり、それを組合長の車と推理した漁民たちは一番若い漁民に仕事を押し付けた。こうなれば若い漁民は木箱を地面に置くと波止場に転がっている組合長の遺骸に駆けていった。この軽4トラックの持ち主たちは沖で射殺して遺骸は魚の餌にした。
ズーン。間もなく波止場の方向から閃光が走り、破裂音が響いた。これは投擲訓練で聞いたことがある手榴弾の破裂音だ。そこに指揮官が歩いて来て険しい顔で漁民たちに声を掛けた。
「折角、仕掛けた詭雷(=ブービートラップ)が無駄になってしまった。あの音を聞いて警官が来るから射殺しろ。清軍士長(上級の下士官)が指揮を執れ」「はい、清軍士長が指揮を執ります」指揮を命じられた軍士長が漁民たちを漁港への入り口を取り囲むように配置につけると間もなく軽自動車のパトロール・カーに乗った警察官が現れ、至近距離からの銃弾を浴びせられて殉職した。1967年公開の映画「俺たちに明日はない」のラストシーンでは主人公のボニーとクライドはフォードV8で走行中に待ち伏せしていた6人の警察官に拳銃と自働小銃の一斉射撃を受けて殺されるがここでは警察官が逆の立場の主演を割り当てられた。
人民解放軍の兵士に戻った漁民たちは通りがかった車両の運転手を次々に射殺して移動手段を獲得すると2手に分かれて役場と空港に向かった。射殺した運転手の遺骸には動かせば爆発するように手榴弾の詭雷=ブービートラップを仕掛けた。それは手榴弾のピンを抜いて安全レバーを上にして置き、遺骸を腹這いに寝かせるだけの簡単なものだ。顔で身元を確認するために遺骸を動かせば安全レバーが外れ、4秒後には爆発する。
「我が人民ではないから楽しんでも良いんですよね」空港で警備員を射殺し、受付ロビーに乱入した兵士はカウンターの中で銃を突きつけられて怯えるグランド・パーサーの美貌に生唾を呑んだ。中国人民解放軍の軍規では強制性交は銃殺刑と規定されている。ただし、それは中国人でも共産党への忠誠心を抱く女性に限られ、1979年のベトナム侵攻や2008年のチベット大弾圧では妻や母親を含む多くの女性が人民解放軍兵士の凌辱を受けた。その下劣な蛮行が島内各所で始まった。それにしても野性化した男たちの行動は古今東西で共通している。
さ・パチーノ娘イメージ画像(新カラテ地獄変より)
  1. 2023/01/17(火) 15:24:39|
  2. 夜の連続小説9
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