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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ388

「雪の進軍氷を踏んで どれが河やら道さえ知れず 馬は倒れる捨ててもおけず 此処は何処(いずく)ぞ皆・・・我が愛する祖国、掛け替えのない郷土、北海道を守るために献身しておられる防人の皆さん、ご苦労さまです。札幌から雪うさぎです」昭和一郎のメールの助言を受けて雪うさぎの札幌ローズとしての番組が始まった。オープニング曲も昭和一郎が言う通り軍歌「雪の進軍」にしたが1番の歌詞の「此処は何処ぞ 皆敵の国」は縁起でもないので途中で音量を下げて挨拶を入れることにした。それでも行進ラッパの前奏から始まる「雪の進軍」は北海道に残っている一般の聴取者からも「元気が出る」と評判が良かった。
「昨日は根室の海上保安庁が太平洋上でロシア軍を乗せた漁船から銃撃を受けて応戦した事件がありました。乗っていたロシア軍は100人程度と推測されますから北海道に上陸させれば重大な脅威になるところでした」番組では野外で聞いている自衛官たちに戦況を伝えるためにニュースも入れているが、北海道知事からは戦時中の大本営発表のような虚偽報道にならないように指示されていて、政府の公式発表を防衛秘密に触れないように審査して士気を高揚させる表現に改めた上で雪うさぎが読んでいる。今回も海上保安庁は記者会見で「海に投げ出された漁民やロシア兵は救命胴衣を装着しておらず、暗夜のため捜索が難航して遺骸は収容できなかった」と発表したが番組では一切触れなかった。逆に「北海道に上陸させれば」の件(くだり)は台本の作成に参加している陸上自衛隊北部総監部の隊員の要望で追加した。実際に旭川の照子の広橋牧場では「輸送機を撃墜した携SAMが発射された」と言う噂が広まって放牧している乳牛が射殺される事態が起こっている。
「それでは隊員のご家族さんたちからのメッセージを紹介します」現場の隊員たちはメールを発信すると所在地が特定されるため聴くだけだ。そこで道南地域に避難してきている隊員の家族に呼びかけてメッセージを募集している。それでも個人名や所属を紹介すると組織保全上の問題があるので本人同士で判り合える呼び名にしてもらっている。
「最初は壺屋の稲荷寿司さんの奥さんからです。貴方、元気ですか。私や子供たちは元気です。官舎の人たちと一緒の避難所に住んでいるので駐屯地に居た頃と変わりません。私は高齢の避難者の介護の仕事を始めました。私も頑張りますから貴方も立派に任務を遂行して無事に帰ってきて下さい」ラジオ・ネームの壺屋の稲荷寿司は飯田線の豊川駅の売店の名物なので豊川駐屯地から北海道に転属して来た隊員と言うことになる。このメールの文面も自衛隊の審査を受けているが「無事に帰ってきて下さい」が許されたのは昭和の軍国主義の時代だけでなく日露戦争の時に与謝野晶子が出征する弟に当てた長文の詩「君死にたもうことなかれ」が国賊、売国奴と罵詈雑言を浴びせられたのとは全く違う。与謝野晶子は批判に対して「真の心うたわぬ詩(うた)に何の値打ちや候うべき」と反論しているが、人としての「真の心」を自然に表明できる国家は家族の犠牲を払ってでも守り抜かなければならない。
「それでは壺屋の稲荷寿司さんに送ります。大事MANブラザーズバンドの1991年のヒット曲で『それが大事』です」昭和一郎は自衛官が喜びそうな歌もメールしてきたが、どれも昭和の曲なので現役の自衛官や家族たちとは時代が合わないようだ。今の定年前の最年長者は1970年代生まれなので昭和が終わった頃には中学生か小学生だった。
「負けない事 投げ出さない事 逃げ出さない事 信じ抜く事 駄目になりそうな時 それが一番大事・・・」この歌も1991年の曲なので30年以上前になるが人生の応援歌として唄い継がれているらしい。確かに照子の旭川の番組でも春休みになると進学などで故郷を離れる友人や新生活を始める自分宛てに若い世代からもリクエストを受けることがあった。
「・・・負けない事 投げ出さない事 逃げ出さない事 信じ抜く事 涙みせても好いよ それを忘れなければ」同じ歌詞の繰り返しだが戦う自衛官にはそのまま当てはまる言葉ばかりいだ。おそらく壺屋の稲荷寿司は気合を入れる時に聴いていて妻も一緒に困難に立ち向かうためリクエストしたのだろう。道南地域でも自衛隊は部隊が出動して留守になった隊舎に避難してきた隊員の家族を収容しているので聴き慣れているラッパの号音も変わらない。内地の駐屯地では依然として自衛官の妻や娘が集団暴行を受ける事件が続いているので駐屯地内で生活させることは安全の確保にもなる。
「本日の最後に海ゴリラさんからのリクエストです。ロシアの大歌手・アーラー・ブガチョワで『マーラが与えた人生』です。日本では加藤登紀子が『百万本のバラ』と言う題名でカバーしています」海ゴリラと言うラジオ・ネームが映画「海猿」の捩りであれば海上保安官からになる。おそらく巡視船・ふなしりが撃沈した漁船に乗っていた兵士たちの慰霊の曲だ。慰霊には相応しい歌詞だがロシア語の原曲なので日本人の聴取者には理解できなかった。
  1. 2023/02/03(金) 13:31:29|
  2. 夜の連続小説9
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