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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ399

「ヒロシマを核攻撃!安保理でロシアが言明」安全保障理事会でロシアの国連大使が毎度の恫喝を披露すると日本の新聞各紙は13時間の時差で間に合わないはずの朝刊で大々的に報じた。ただし、記事は巨大な見出しを付した1面トップの割に発言内容の直訳とロシア軍が保有する核兵器の解説、8月6日の原爆式典での広島市長の演説と反核平和団体の主張の引用の数行だけで取材をした形跡はなかった。一方、テレビのニュースでは多少は色が着いていた。
「今朝は衝撃的なニュースからお伝えしなければなりません」アナウンサーは表情と口調で報道内容の印象を操作するが、今朝の男女のアナウンサーはすでに核兵器が広島に射ち込まれたかのような沈痛な面持ちで画面から睨みつけてきた。
「昨日の安全保障理事会でロシアのキベンジャ国連大使が日本はウラジオストックを攻撃する準備をしているとの認識を表明した上で実際に攻撃を受けた時には核兵器で報復する。目標は広島県の呉基地だと警告しました」「キベンジャ大使は呉基地を選ぶ理由として海上自衛隊が単独で使用していることを挙げています」2人のアナウンサーが交互にニュースを読み上げる間、画面では日本海に展開中の護衛艦隊とは無関係な海上自衛隊の広報映像を流していた。
「このニュースについて長年にわたり被爆地・広島で反核兵器の市民運動に取り組んでおられる信田昭造(しんだしょうぞう)さんに伺います。信田さんは2歳の時、広島市内の自宅で被爆されています。信田さん、おはようございます」「おはようございます」信田と呼ばれた白髪の老人は80歳を過ぎているはずだが身心ともに元気そうで淀むことなく挨拶を返した。面積が広い広島では「市内」と言っても爆心地とは限らないのだ。
「信田さんは被爆者として今回のニュースをどのように受け止めておられますか」「ロシアと中国はアメリカに3度目の原爆を使用させないための抑止力だと思ってきましたが、自衛隊が戦前の軍隊と同じ本性を露わしたから報復を受けるような事態になって非常に残念です」1970年代のフォーク歌手・本田路津子の原爆を題材にした反戦歌「死んだ少女」をもじったような名前の信田昭造は当時の反戦活動家と同様の反日米安保反自衛隊親中国親ソビエト連邦=ロシアの反戦平和を披瀝した。ここで若い女性アナウンサーがうなずきを繰り返しているところを見ると加倍政権の安全保障関連法案の審議中に国会前の反対デモに参加していた復活・反安保活動家の大学生だったのかも知れない。
「ここで首相官邸から出勤した石田首相の中継です」・・・「「総理、とうとうロシアが核兵器を使用する可能性を宣告しましたね」「ロシアは広島を狙うと明言しましたがどうされますか」「自衛隊にウラジオストックへの攻撃を命じているんですか」ここで画面は首相官邸の玄関ロビーからの中継に変わったが、記者たちの質問に顔を背けて歩いていた石田首相は最後の「ウラジオストック」の質問にだけは大きく首を振った。
「石田首相は広島選出ですが、信田さんは同県人として現在の日本政府の対応をどう思われますか」「石田首相は就任当初こそ広島人らしく反戦平和を口にしていたが、ウクライナ侵攻を口実にして加倍の軍拡路線とアメリカとの世界支配を継承してしまった。それを危険視した韓国と中国が制止しようとしたのにも自衛隊だけでなく警察や海上保安庁を使って攻撃した。だから今度はロシアまで日本に懲罰を加えてきたんだ。平和都市の広島を地元と口にするんだったら国際社会に加倍が犯した過ちを懺悔して平和国家に脱皮するべきでしょう」「なるほど・・・有り難うございました」「日本人は決してアメリカの戦争犯罪を許してはいない」「途中になりましたが次に元海上自衛隊自衛艦隊司令官の海将で軍事評論家の小川治三郎さんです。小川さん、おはようございます」今朝のニュースでは次の専門家も用意していて信田の熱弁は途中で遮った。放送法が課す政治的中立を保持するための予防措置でもある。
「小川さんは海上自衛隊では呉地方総監も務められましたが今回のロシアの予告を現実的な危機として受け留めておられますか」「毎度の恫喝でしょう。警告にもなっていない。呉を狙ったつもりが岩国に落ちればアメリカ軍基地への核攻撃になる。そうなれば全面核戦争だ」小川元海将の論理は明快で男性アナウンサーは納得したようにうなずいたが、女性アナウンサーは男性であれば舌打ちするような嫌悪感を顔に浮かべた。
「第一、ウラジオストックを攻撃するとすれば海自ではなく空自のFー2を使うはずです。残念ながら海自のトマホークは間に合わなかったと言うことです」「いわゆる反撃能力ですね」男性アナウンサーの相槌に女性アナウンサーが無表情に口を挟んだ。
「それでも広島市民は2度目の核被害を恐れています」「反核団体は反対と言えば核戦争は起こらないと思っているんだ、ならば広島の平和公園でロシアに向かって声の限りに反対と叫べば良い」小川元海将は「お題目のように」と例えたかったがテレビでの宗教批判は控えた。
  1. 2023/02/14(火) 13:55:07|
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