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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ400

「専制的自衛権の行使について検討するべきです」安全保障理事会でロシアの国連大使が核攻撃の可能性を示唆したことを受けて閣議は紛糾していた。双木外務大臣と立野官房長官は実行に移すか否かは別にして一方的な言い掛かりが逆に我が身に降りかかってくる危険性をロシアに学習させるために強硬な対応を採るべきだと主張し、逆に石田首相と釜田防衛大臣はロシアに攻撃の疑念を払拭させるために日本海に展開している海上自衛隊の艦隊を撤収できなければ大幅に縮小するべきだと反論している。
「ロシアが北海道への武力行使が常任理事国としての懲罰ではなくアイヌ民族への領土返還が目的だと明言した以上、それは侵略であって専制的自衛権の行使も容認されるはずです」「昨日の議事では中国も同調しました。アメリカに日米安全保障条約の発動を要請するべきです」最近はこの議論に関わったことが漏洩するとマスコミに袋叩きにされるため閣議と言いながら参加者は石田首相と立野官房長官、双木外務大臣と釜田防衛大臣の4人だけだ。それに海上保安庁が対処すれば西藤国土交通大臣、警察ならば沢国家公安委員長がゲスト出演する。
「専制的自衛権とはイスラエルが1981年6月7日にイラクが建設していた核兵器に転用可能な濃縮ウランを製造できる原子力発電所を攻撃して破壊したオペラ作戦後の国連への説明で主張した定義です」「あれは1986年になってイスラエルがフランスの技術協力で核兵器を保有していることが発覚して否定されただろう」「それはイスラエルが主張した立場の否定であって法概念としては必ずしも否定されていません」国際連合憲章では自衛権の行使は加盟国個別の権利として合法と明記されていて自衛隊法の規定でも踏襲しているが、「軍事的脅威」と判断した側が一方的に他国の領域に武力を行使する専制的自衛権となると判断の基準や侵略との区分が不明確なため法概念として確立していない。釜田防衛大臣の反論は自衛隊の行動に消極的な防衛官僚の見解の代弁だった。
「総理はまさか海上自衛隊を日本海から撤退させるおつもりですか」「・・・流石にそれはできないだろう。ロシアの弾道ミサイルを撃墜した実績がある」本当は超音速爆撃機・ツボレフ22バックファイヤ10機も撃墜したのだが海上自衛隊からの報告は立野官房長官と双木元防衛大臣にしか届いていない。日頃は自衛隊の粗探しに励む内局も業務多忙で、ロシア軍が放置している謎の集団墜落を追及している暇がないらしい。
「当然、日本海での航空自衛隊の対領空侵犯措置も通常通りで良いですね」「深追いしないように注意してくれ」「はい、防空識別圏から出るなと厳命しています」双木外務大臣の確認に石田首相が答えると釜田防衛大臣が返事をした。
「要するにお2人は東條内閣がハル・ノートを受け入れなかったから太平洋戦争が起こった。それを繰り返さないためには今回のロシアの疑念を払拭するべきだとお考えなんですね」「確かにアメリカがハル・ノートで要求していたことは大陸を満洲事変以前の状態に戻した上で日米の信頼関係を再構築するための施策を講じると言うもので満洲事変発生時に田中義一内閣が表明していた解決策に合致している。ところが東條英機は関東軍参謀長の首謀者の1人だったから当然、断固拒否するはずだ。しかし、今回のロシアの主張はそれとはまるで次元が違うでしょう」その後も脅しに屈したに外ならない自衛隊の最高指揮官の石田首相と文民統制の責任者である釜田防衛大臣は「本当に核攻撃されれば」「国民は戦争を望んでいない」と責任論だけを繰り返している。そこで痺れを切らした立野官房長官と双木外務大臣はあえて相手の立場を代弁することで議論に引き込もうと空しい努力を始めた。
「総理と防衛大臣は自衛隊に反撃の任務と能力を与えることには真摯に取り組んでおられましたが、あれは・・・」「あれが北朝鮮を想定していたことは皆知っているだろう。アメリカを後ろ盾にして自衛隊が弾道ミサイル施設を攻撃しても北朝鮮が報復できるはずがない。しかし、ロシアや中国となるとアメリカも躊躇するはずだ。私は被爆県人として全面核戦争の切っ掛けを作ることは絶対にできない」「やはり槍と盾の役割分担が日米安保条約の必要理由なんですよ」亡くなった加倍元首相や浜前防衛大臣兄弟であれば日米同盟に対する絶対的な信頼を担保してロシアの不当行為に断固たる対応を採り、それによってアメリカも当事者に引き込む外交戦略を展開するはずだ。それを立野官房長官は派閥で、双木外務大臣は県民性として学んでいるが、広島県民の池田勇人元首相が創設したエリート派閥・宏池会を劣化・堕落させた宮谷喜市元首相の門下生の石田首相と事実上の戦時下であっても取り巻きの防衛官僚に操られている釜田防衛大臣では立ち位置が大きくずれているようだ。危機感が微塵もないこの空虚な閣議を見ていると石田政権が推し進めた防衛力の強化には予算よりも戦時向けの政治的人材=軍政家の確保が先決だったのかも知れない。育成では間に合わなかった。
  1. 2023/02/15(水) 13:43:24|
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