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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ401

最近の双木外務大臣は午後に開かれる定時記者会見で外務省の所管ではない内政問題まで質問されるようになっている。それは実務の決定権を持たない立野官房長官も同様で、マスコミは現在の危機的状況に主導的に対処しているのが石田首相や釜田防衛大臣ではなくこの2人であることを察知しているようだ。そのためマスコミ各社もスマートホンで質問を遠隔操作している若手ではなく自社の論調を左右させるだけのベテラン記者を参加させている。
「ロシアのキベンジャ国連大使は石田政権が自衛隊に与えた反撃能力を使ってウラジオストックを攻撃すると発言しましたが、あの決定は国民的議論どころか十分な説明もなく防衛予算の倍増と抱き合わせで強行されました。外務省は海外、特にロシアや中国、韓国などの周辺国に対してどのように説明したのでしょうか」意外に知られていないが自衛隊の海外派遣に関する法律は外務省が提出している。しかし、あの決定は防衛政策として防衛省の所管だった。この記者は勘違いしているのかも知れない。
「あの決定の後に韓国は海上自衛隊の対潜哨戒機を撃墜し、中国は海上保安庁の巡視船を撃沈して尖閣諸島で警察官を殺害した。そしてロシアは中距離弾道ミサイルと爆撃機による攻撃を加え、地上兵力による北海道の占領を画策した。それが周辺国の理解でしょう。自衛隊の反撃能力が脅威とはならないことを理解しているんです」この辛辣な皮肉に外国政府首脳へのインタビューとして勝手な情報を流布してきた記者たちは苦笑して聞き流すしかなかった。
「今回、佐渡市が4年前の対馬と同様に全島民の避難に踏み切りましたが、外務省がロシアから侵攻を受ける可能性について警告を与えたのではないですか」「島民の避難については外務省の所管事項ではないので私からの回答は控えさせてもらいます」双木外務大臣にしては珍しく官僚が用意したような回答に記者たちはかえって疑惑を抱いたような顔になった。勿論、双木外務大臣は立野官房長官が佐渡市長に全島民の避難を勧めるに当たって事前に協議したのだが、派閥の長である石田首相や佐渡島に残留する航空自衛隊の上司の釜田防衛大臣の頭越しだった上、蚊帳の外に置いたので関与を認める訳にはいかなかったのだ。
「ロシアが本州に攻めてくれば流石に石田首相は防衛出動を発令するでしょう。そうなればアメリカも日米安保条約を発動するんじゃあないですか」「現在もウクライナ侵攻の時と同様に武器・弾薬の無償供与を受けています」この説明は閣議での現実を直視しない石田首相の弱腰を示唆してているがNATOに加盟していなかったウクライナと同盟国の日本では立場が違う。双木外務大臣としては太平洋を横断する日本のタンカーと貨物船団の護衛や哨戒飛行でアメリカ海軍と海上自衛隊は一体行動を取っていて多くの戦果を上げていることを暴露したいくらいだ。双木外務大臣はロシアと中国、韓国で勤務する外交官たちに「ロシアが本州に侵攻すればアメリカは日米安全保障条約を発動して参戦する」と言う公式には表明しなかった可能性を噂として流させている。実際は逆にアメリカ政府から「日米安全保障条約が国際連合の紛争抑止と停戦仲介の機能の補完を目的にしているため中国とロシアが常任理事国の懲罰として加えてくる武力行使では議会の承認を得ることは難しい」との説明を受けていた。さらにアメリカでは石田首相が選挙区で開催した2023年の広島サミットで原子爆弾投下による惨状が国民に周知されたため加害者としての後ろめたさと同時に核戦争に対する恐怖心が蔓延していて核保有国のロシアや中国との軍事衝突を回避させようとする世論が勃興している。しかし、中国とロシアはそれを利用しているので適当に誤魔化すしかない。
「ロシアはウクライナ侵攻の時にも西側の軍事支援や自国領土への武力攻撃に対して限定的核攻撃で報復すると言明しながら実行しませんでした。あれで核保有国としての面子が丸潰れになった言う声が国内強硬派から上がっているようです。そうなると今回は否応もなく実行するしかない。だから広島に2回目の原爆が撃ち込まれる可能性が高い。と言う国民、中でも広島市民の不安を解消させる言葉をお願いできますか」この意味不明な質問もベテランの記者が発したので失言に誘い込む罠の臭いが濃厚に漂っている。与野党の現役の政治家の中では最高の頭脳の持ち主と評されている双木敏正外務大臣に記者風情が罠を仕掛けるとはかなり無謀だが意味不明なだけに怪しさが漂う。
「その論理でいけばウクライナで使わなかった核兵器を日本に使うことはできないはずです。ましてや広島の悲劇は2023年のサミットで世界中に知れ渡っている。そこに2度めの地獄絵図を再現することは核ボタンを預かる国家権力者として有り得ないことです」双木外務大臣としては「核攻撃を抑止するには核攻撃による報復以外にない」と考えているのだが、ここは罠にかからないために相手を刺激することなくすり抜けた。この綺麗事はマスコミ好みだったようで質問者を含めて追及は受けなかった。
  1. 2023/02/16(木) 14:37:50|
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