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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ405

「いよいよ恐れていた段階に踏み入ったようだな」山口県警では科学捜査班が持ち返った現場検証の資料を見た主要幹部たちが沈痛な言葉を口にしていた。衆議院の任期満了による選挙運動のための双木外務大臣の帰宅は政務だけでなく武力衝突の経過を勘案しながら決定されたため直前になって連絡を受けた。そんな中、発生した不法侵入と殺人事件は重大な事態を意味していた。科学捜査班が現場から秘匿スマートホンでデーターを交換して確定した結論によれば先ず手榴弾で死亡した1人の迷彩服と階級章から韓国海兵隊員と身元が特定できた。また壁に残っていた棒状の物体による擦過痕は支点となる位置から115センチ程度の長さと推定して韓国軍の最新式狙撃銃・K14と確定していた。そうなればK14の最大有効射程距離800メートルから狙撃しての暗殺と言う犯行手法が議事の前提になる。
「双木大臣は明日の午後に宇部空港に到着した後、2泊3日の日程で自宅の他に県庁や選挙事務所に出向き、公民館での講演会が3回予定されています。本当は対馬からの移住者との懇談も希望しておられましたが日程上の理由で中止されています。山口県内での移動には防弾ガラスの特別仕様の車両を手配しています」「選挙が近いとは言え危険を冒してまで帰宅しなければならないなんて政治家は大変な職業だ」「建物から車両、車両から建物の移動中が要注意だな」警備部長の説明に上級職国家公務員試験に合格したキャリア官僚の本部長と警察庁職員採用試験で入庁した準キャリアで実務を担当する警務部長が交互に答えた。
「被害者の自家用車がなくなっていますからそれで接近するのでしょう。車種と色、ナンバーで手配していますが現時点では発見できていません」「もう下関市内に潜入しているな。警邏(けいら=巡回)する派出所員に警告しておかないといかん」すると地域部長が警邏中の派出所の警察官が韓国軍兵士と遭遇する危険性を指摘した。おそらく韓国軍兵士たちは車中泊するはずだが、違法駐車であれば警察官が発見すれば必ず声をかける。
「問題なのは空港や自宅、選挙事務所、各公民館の停車位置を起点とする半径800メートル以内の区域の全てが要警戒対象地域になり、大臣が到着する前に射撃可能な場所を特定して監視要員を配置するのは不可能と言わざるを得ません」「半径800メートルとなると接近を阻止することも難しいな。第一、我が県警に移動する先々に警備要員を配置しておくだけの人間はおらん」「かと言って福岡県警や広島県警に協力を要請するには外務大臣の私的な帰宅では理由が弱い」ここで他の部長も議論に加わってきた。
「狙撃可能地点はSATの狙撃要員に確認させるにしても相手はプロ中のプロだからな」「しかし、人数不足を理解していることで狙撃の可能性を取捨選択させるようなことは絶対に許されん。狙撃手が『自分なら射てる』と思えばそこは要監視地点なんだ」本部長の発言に警務部長が強い口調で補足すると各部長は座ったままうなずいた。警察には「用意周到」「動脈硬化」と揶揄される陸上自衛隊と同様に無理のない計画を完璧に実施することを成果とする極めて日本的な気質があり、危険地点の選定を任された狙撃手が配置する人員の数を極限するため自己判断で削減する可能性がある。本来であれば日本の警察以上に経験を積み、実戦的訓練に明け暮れている韓国軍の狙撃手の能力を想定して双木外務大臣が身体を露出する瞬間が視認できる800メートル以内の全ての場所を射撃可能地点にするべきなのだ。
「君たちの立場は理解できる。しかし、今回は陸上自衛隊にも協力を要請させてもらった。これは私自身の判断だ」「山口駐屯地の陸上自衛隊にですか」山口県警内の全ての警察署から駐在所と派出所を除く警部以下の警察官を総動員して無理やり警備計画を策定すると本部長は県庁に赴いて村山県知事に報告した。すると意外過ぎる答えを投げ与えられた。実は本部長自身も人員不足の穴埋めに治安出動している陸上自衛隊を使うことを考えていたのだが、各部長が警察単独での対応を真剣に考えているのを見て口にできなかったのだ。
「私は君たちの強い責任感には絶大な信頼を寄せている。この決定がプライドを傷つけことも十分承知している。しかし、現在の危機的状況で双木大臣に危害が及ぶことは万が一にもあってはならないんだ。相手が犯罪ではなく戦闘を仕掛けてくる以上、対応するのは自衛隊だ。双木大臣には私から電話して承諾を得た。陸上自衛隊は人の盾を作って防護すると言っている」「双木大臣はそんな目立つ警護をお許しになったんですか」本部長の確認に村山知事はユックリうなずいた。日本の政治家は厳重な警護を「臆病」と思われることを嫌って新聞の写真やテレビの映像に写らない位置にまでしか近づかせないことが常識になっている。警察側も凶器は刃物を前提にしているため駆け寄れば間に合うと思い込んでいる。その点、双木外務大臣はアメリカ式に国家的な地位にある者は公私を問わず常に警護を受け、周囲に人の盾を構築してでも守られる責任があると認識しているようだ。
  1. 2023/02/20(月) 15:14:50|
  2. 夜の連続小説9
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