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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ406

「そこの自衛隊、邪魔だ。どけ」「休暇の帰宅にしては過剰警備だろう」「大臣、これでは顔が写りませんよ」双木外務大臣が午後の民間航空機で宇部山口空港に到着すると空港ターミナルは迷彩服に鉄帽をかぶり、防弾チョッキを着て肩には自働小銃を吊った陸上自衛官が封鎖していた。空港には現在の政治家では最も注目を集めている双木外務大臣の東京では封印している素顔・本音を暴くことを狙うマスコミ関係者が詰め掛けていたが、大臣の身体を隠すように自衛官が立ちはだかるため苛立って罵声を浴びせていた。
「車に乗るところも撮らせないのか・・・」「徹底してるな。プッチンの時よりも厳戒態勢だ」ロビーから玄関前に横付けしている黒塗りの専用車に向かう経路にも長身の自衛官が肘の幅の短間隔で並び、小銃を控え銃(ひかえつつ=小銃を胸の前で斜めに構える姿勢)にしている。小銃には弾倉が装着してあるので実弾を装填している可能性もある。身長175センチの双木外務大臣よりも長身の自衛官を並べることで銃器による暗殺の標的になる頭部を見せないのだ。ベテラン記者は2016年にロシアのプッチン大統領が長門市の湯田温泉を訪問した時の中国地方の警察官を総動員した警備を思い出したが今回とは比較にならない。
「護衛の最後尾は装甲車だな。機関銃に実弾のベルトが着いている。マジで射つ気だ」双木外務大臣を乗せた専用車が下関市内の自宅に向かって走り出すと前後を警察のパトロールカーが挟み、その後ろに機動隊員を乗せた装甲バスが続き、最後尾には陸上自衛隊の軽装甲機動車がマスコミが作っている車列の動きを監視していた。軽装甲機動車の屋根からは自衛官が上半身を乗り出して前に向けた機関銃を構えているが、こちらに向ければ批判記事の材料になる。
「上では自衛隊のヘリコプターが見張っているな」「あれはAHー64じゃあないか、防府のヘリじゃあないぞ。何かあれば攻撃するつもりだ」大手新聞社は山口支局や下関出張所だけでなく福岡の支社からも記者を派遣しているがこれでは従軍記者になったような気分だ。
「こちら豊国ビル、異常なし」「間もなくVIP(=要人)が講演会場に到着する。狙撃するなら動き始めるタイミングだ」「了解、再度確認する」選挙運動として帰宅した双木外務大臣が支持者を集めて講演する「活動報告会」の会場の公民館にも陸上自衛官が配置されていた。下関市でも平成の大合併前の市街地にはそれなりにビルがあり、狙撃するには格好の射座(射撃する土手)になる。陸上自衛隊は公民館に面した800メートル以内に建つビルの窓を警戒して同じく有効射程距離800メートルのM24狙撃銃を持たせた狙撃手を配置している。さらに最も高いビルの屋上からは死角になる位置も確認していた。勿論、公民館の周囲も完全武装の自衛官で固めているが支持者も出入りする玄関付近だけは警察官に任せている。それでも支持者たちは「双木さんは重要人物だからこれくらいしてもらわないと困る」「加倍さんみたいなことになっては日本は終わりだ」と話し合いながら歩いて行くので双木外務大臣の存在感を再確認させる効果があり、選挙運動としてはマイナスではない。
「あれは手配の車と同じだな」「車種と年式、色は間違いない」「接近してナンバーを確認しよう」双木外務大臣が無事に入場して講演が始まる頃、巡回中のパトロールカーが下関市の市街地から外れて旧郡部に向かう田舎道を暴走する車両と擦れ違った。昨日、山口県警本部から「夜間の警邏中に手配している殺害された喫茶レストラン経営者の自家用車を発見しても単独では接触しないように」との指導があったがこれを放置する訳には行かない。運転の警察官は急停車して農道にバックで入って向きを変えると高速度で追跡を開始した。幸い山口県では道路建設利権が県内選出の政治家の選挙資金になっているため田舎道でも交通量に関係なく万全以上に整備されていて、対向車はないので高速道路並みの速度まで上げられる。
「おっと、これを忘れれば道交法違反だ」運転の警察官は無意識に道路交通法第2節39条から41条の緊急自働車にするため道路運送車両の保安基準を定める告示231条に基づきサイレンを鳴らし、警光灯を点灯してしまった。助手席の警察官も前に見えてきた手配車両に気を取られてサイレン音を響かせて走る日常的な光景に疑問を持たなかった。
バババババ・・・「手配車両が発砲、グッ・・・」間もなく幅が広い路側帯(=蛇行していた農道の痕跡)に停止した手配車両の助手席から男が下りて距離を詰めてきたパトロールカーに向かって短機関銃を連射した。弾丸は全弾がフロントガラスに命中して警察官2人は即死し、パトロールカーは道路を反れて刈り取りを終えた水田に突っ込んで横転した。
「手配車両は国道491号線を北上している。漁船を奪って逃亡するつもりかも知れない。発砲してくる以上、即座に処理しなければならない「了解、上から処理する」山口県警では下関市警察署から手配車両の発見と銃撃によって警察官が死亡したとの連絡を受けて上空で待機している陸上自衛隊のAHー64攻撃ヘリコプ―ターに処理を依頼した。それでオシマイだった。
  1. 2023/02/21(火) 14:41:09|
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