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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ407

「これが銃器を持った相手への対処方法なんですね」「これでも治安出動の許容範囲を守ったんだそうだ」「つまり我々も銃器を持った人間を制圧するには先制攻撃する必要があると言うことですか」陸上自衛隊のAHー64攻撃ヘリコプターが山間部の農道を逃走する暗殺要員の車両を破壊した現場を検証している山口県警の警察官たちは遺骸の写真を撮りながら話し合った。交通量が絶対数少ない山口県では国道を建設する優先順位が低いため政治家たちが補助金を獲得して国道よりもはるかに立派な県道や農道が全域に張り巡らされている。そんな隣町の農道では蛇行していた旧農道を直線化した時に生じた広い路側帯に停車していた逃走車両に接近して速度を落としたパトロールカーが銃撃を浴びせられて警察官2名が死亡した。K7短機関銃の9ミリ拳銃弾だった警察官とAHー64の30ミリ機関砲の暗殺要員の遺骸を見較べると人間の姿を留めているだけ警察官の方が救いがある。
「その点、パトの2人の意識は甘かった言わざるを得ません。いくら道交法適用除外の緊急車両になるにしても追跡するのにサイレンを鳴らしてパトランプ(警光灯)を点灯すれば速度を上げさせるだけでしょう。逃げ切れないと思えば攻撃してくる」「暗殺者と言う奴が判っていなかったんだな」今回、暗殺要員が任務を中止して逃走を図ったのは陸上自衛隊による双木外務大臣の警護が万全で歴戦の狙撃手を以ってしても暗殺は不可能と判断したからだ。特に講演会の会場では同じ射程距離のM24狙撃銃を持った自衛官を着弾地点=正面玄関付近に配置して発見すれば即座に射撃する態勢を採っていたことは完全に想定外だったはずだ。
「今回の警護を自衛隊にやらせたのは村山知事の英断でしたね」「我々には瀬戸内海シージャック事件以来、狙撃手は遠距離にいる犯人を制圧させる職務以外の発想はない。しかし、ケネディは元海兵隊の狙撃手に暗殺されたんだ。銃刀法の取り締まりだけで発砲事件を根絶できると考えるのは大間違いだな。村山知事はそれを認識していたようだ」1970年5月12日に発生した広島と松山を結ぶフェリー・ぷりんす号がライフル銃2丁と散弾銃にライフル弾80発と散弾250発を持った20歳の犯人に乗っ取られた事件では13日になって大阪府警から派遣された狙撃手が射殺したが、人権派弁護団によって狙撃手が殺人罪で刑事告発されたため警察ではタブー以上のアンタッチ(不可触)事項になってしまった。
一方、講演会場の警備に当たっている警察官たちは別の事態に対処していた。住宅街の一角にある公民館の前の車両1台分の幅の道路に数十人のデモ隊が集って来て玄関の正面で拳を突き上げて罵声を浴びせ始めたのだ。
「双木、戦争を止めろ」「お前は伊藤博文みたいに朝鮮半島を狙っているんだろう」デモ隊は大学生とその親と言った世代に分かれている。現在の状況を初代朝鮮総督として暗殺された伊藤博文に結び付けているところを見ると在日半島人の親子なのかも知れない。しかし、下関市内のコリア・タウンには暗殺要員の潜伏を警戒して警察官が配置されているから北九州や広島の在日半島人が出張してきた可能性もある。かつて加倍首相が友人の学校法人経営者の学校新設に便宜を図ったとする忖度問題を東京のマスコミが批判していた時、経営者との接点にされた夫人が下関市内で講演会を催すと北九州や広島の若者たちが妨害しようと出張して来た。ところが殺気立った強面(こわもて)な支持者たちが外で待ち構えていたので即座に退散した。
「君たちのデモは無届けだな」「これはデモじゃあない。双木が進める戦争に反対する人間がたまたま集っただけだ」警察官の指摘に中央で指揮を取っている若者が反論した。確かに隊列は組まず三々五々集まってきたが、集結してからは指揮者の音頭で罵声と動作を見事に合わせている。おまけに警察官との対話を若い参加者たちが交代でスマートホンで録画して、切れ目になるとメールを発信している。この様子では相手はインターネットではないだろう。
「昨日、双木外務大臣が山口県下関市内の自宅に帰りましたが、山口県では今日も県警だけでなく治安出動中の陸上自衛隊まで動員して戒厳令のような過剰警備が実施されているようです」案の定、夕方の全国区のニュースではこの話題をトップに持ってきた。AHー64による暗殺要員の処理は公式発表していないため触れなかったが、かえって加倍首相の暗殺と現在の武力衝突に過剰反応した山口県の暴走のような印象を演出している。
「だって双木さんは休暇でしょう。やり過ぎじゃあないですか」「加倍さんがあんなことになったから仕方ないでしょう」「見ていてかえって怖いですよ」陸上自衛隊の対応も取材を制限したため狙撃手の配置などの暗殺対策は紹介しなかったが、空港での双木外務大臣の姿を完全に封印した陸上自衛隊の人の盾や車列の最後尾の軽装甲機動車で機関銃を構えていた自衛官の映像を流した後は街頭インタービューで時間を浪費していた。それにしてもインタビューしている場所は本当に下関市内なのだろうか。下関市内の高層ビルは建ち並んではいない。
  1. 2023/02/22(水) 14:19:59|
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