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古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ415

「ロシアが新潟市内を攻撃したとなると本格的な侵攻も遠くないと見るべきだな」第46警戒隊長は空襲警報がレモンジュースになったところで監視小隊長と派遣警備小隊長を隊長室に呼び、庁舎地区の基地業務小隊長と合わせて幹部会同を始めた。隊指揮所と隊長室は廊下を隔てて向かい合わせなので緊急時には即座に移動できる。
「本州に上陸すれば佐渡島は補給物資の集積や兵員を待機させる拠点になるはずだ。仮にロシア軍が佐渡島に侵攻してくるのならどんな手段をとると思うかね」隊長はソファーに並ぶ各小隊長と総務人事班長、運用管理班長の顔を見回しながら主題を述べた。
「通常はヘリボーンでしょう。ロシアの大型ヘリのペイロード(搭載量)は20トン、歩兵なら90名です」「しかし、ここまで航続距離が届きますかね」「新型のCHー47は1000キロを超えています」運用管理班長の見解に監視小隊長と基地業務小隊長が同調した。補給幹部の基地業務小隊長は輸送幹部の配置がない管理班長を兼務しているので予備知識がある。
「ウラジオと佐渡島の距離は768キロあるはずだ。ロシア軍が稚内や根室を攻撃した時に届いた資料にはミル26の航続距離は800キロと書いてあったから航続距離内なのは間違いないが、荷重がかかれば航続距離が短くなるから微妙なところだな」「そうでした。いくら人命軽視のロシア軍でも航続距離ギリギリでは躊躇するでしょう」「地続きなら下りても助かりますが海ではお陀仏です」隊長の解説には運用管理班長と派遣警備小隊長が反応した。教育幹部の派遣警備小隊長は熊谷基地では中隊長だったが、陸上自衛隊とは違い航空教育隊の編制単位部隊長は大隊長なので格としては問題はない。編制単位部隊とは命令の決済権、施設の管理権、補給や予算の請求権などを有する最低限の組織単位のことだ。
「そうなると輸送機による強行着陸になりますが佐渡空港の滑走路は1000メートルないですから無理です」「2000メートルの新滑走路が完成すれば危ないところでしたが、遅れたおかげで助かりました」今度は運用に関しては門外漢の基地業務小隊長と総務人事班長が別の戦術を分析した。ロシア軍は北海道への侵攻作戦ではヘリボーンによって稚内と根室に橋頭堡=上陸拠点を確保するのと同時に地上部隊が乗った輸送機を旭川空港に強行着陸させた。一方、韓国は日本人の島民が本土への避難で不在になった対馬に残留した韓国人移民への救援物資の運搬を名目にして輸送機で地上部隊を送り込んで軍事占領した。自衛隊以外の島民が不在になっている佐渡島でも同様の手段は有効なはずだが、現段階では860メートルの滑走路では輸送機が着陸できないので話にならない。
「つまり空挺部隊の落下傘降下になります」「しかし、ロシア軍は2022年2月のウクライナ侵攻の緒戦で空挺部隊が空港を占領しましたが、激しい反撃を受けて多大な損害を受けたはずです。実戦に投入できる空挺要員の育成は簡単にはいかないでしょう」派遣警備小隊長と運用管理班長の見解もロシア軍の佐渡島占領の困難さの披瀝になった。
「まァ、携SAMとVADSがありますからヘリボーンでも強行着陸や空挺降下でも迎撃できますよ」「その時はよろしく頼みます」航空機を使用した侵攻作戦の困難さで1つの結論が出ると派遣警備小隊長が念を押して、それに隊長が期待を表明した。
「結局、揚陸艦の上陸以外にない訳だ」やはりロシア軍が佐渡島に侵攻するには現在、ウラジオストック軍港で緊急速備を受けている揚陸艦による着上陸しかないらしい。ただし、それには海上自衛隊と航空自衛隊の迎撃を突破しなければならない。それでは武力衝突が始まった当初に奄美諸島に侵攻してきた中国の輸送艦隊が海上自衛隊の対潜哨戒機に全滅させられた東シナ海海戦の二の舞になるだろう。東シナ海海戦は対英戦の開戦直後の昭和16年12月10日の行われた日本海軍航空隊がイギリス海軍東洋艦隊を撃滅したマレー沖海戦に倣って海上自衛隊が命名した呼称なので今回は第2次日本海海戦になるかも知れない。
「本当は我々が死んでレーダー機能を喪失すればヘリで撤退するはずだったんでしょう。この調子では戦線から取り残されそうですね」監視小隊長は何故か申し訳なさそうな口調で皮肉を述べた。確かに将官レベルでは佐渡島のJ/FPSー5ガメラ・レーダーの探知能力を放棄することはできないので弾道ミサイルの攻撃で破壊されて時点でCHー47を派遣して生存者を撤退させる内密の指示が与えられている。しかし、それは対馬と同様に監視小隊員が全滅することが前提になる。逆説的に言えば監視小隊が機能しているから他の隊員たちが足止めされていることになる。対米戦争でのラバウルはアメリカとオーストラリアの連絡路を遮断する拠点として陸海軍9万人超の大部隊が駐留していたが、日本本土に向けて太平洋の島々を陥落させるアメリカ軍の飛び石戦略からは取り残されて自給自足しながら敗戦を待っていた。佐渡島でも農協の厚意で自給自足体制は確保できているが67キロの距離から傍観するのは耐え難い。
  1. 2023/03/02(木) 15:48:07|
  2. 夜の連続小説9
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