fc2ブログ

古志山人閑話

野僧は佛道の傍らに置き忘れられた石(意志)佛です。苔むし朽ち果て、忘れ去られて消え逝くのを待っていますが、吹く風が身を切る声、雨だれが禿頭を叩く音が独り言に聞こえたなら・・・。

続・振り向けばイエスタディ431

ズーンッ、嫌な音を立てて燃料車が爆発した。運転手は滑走路の中央に停めた車体から伸ばしたホースを左右に振りながら航空燃料を噴射し、コンクリートが十分に濡れたのを確認してから車体に振りかけて火を点けた新聞紙を投げつけた。航空燃料JP5の発火性はガソリンと灯油の中間に位置するため気化するガスまで爆発的に炎上する程ではないが、それでも一瞬のうちに燃え広がり、地面に放置したノズルから噴き出している航空燃料で滑走路は火の海になり、間もなくタンクが裂けるように爆発・炎上した。
「消防車は何をやっているんだ」海空自衛隊のエプロンは滑走路の中央にあるためケニー山城知事と話していた南西航空方面隊司令官と第9航空団司令、第5航空群司令は一部始終を目撃していた。爆風も浴びたが距離があるので熱くは感じなかった。
「今日はノース・ウィンドウ(北風)ですから消防車はノース・エンド(北端)です」「ターミナルが混んでいてタクシング(誘導路進入)できない民間機が進路を塞いでいるようです」航空方面隊司令官の呟きに第9航空団司令と第5航空群司令が答えた。航空機は向かい風で離陸するため滑走中の事故を想定して風上の滑走路の端で待機している。しかし、今はタクシー・ウェイに空海自衛隊機が並んでいるので旅客機が出発できず、消防車が滑走路に出る経路も塞がれて駆けつけるのが遅れているようだ。航空自衛隊のエプロンの隣りにある消防隊の前には退避した警備要員と女生徒がたむろしていて想定外とは言え出動の妨げになった。
「私は知らんぞ」「私もです。POL(燃料施設)には集合場所に使う許可をもらっただけで一緒に妨害しようなんて誘っていません」将官3人の視線に怒気を超えた殺気を感じたのか知事と女性教師は聞かれてもいない弁解を始めた。この状況では女生徒の反戦平和行動に刺激を受けた運転手が自衛隊の出撃を阻止しようと勝手に暴走した可能性も否定できない。
「知事、ここは危険ですから」「うん、消火活動の邪魔になってはいかん。消防車が到着すればすぐに消火は終わるだろう」気まずい雰囲気を察したのか警護の警察官が歩み寄って声をかけた。非常事態が発生した現場に居合わせれば県知事として自分の目で状況を確認するべきなのだが追及されては拙い事情があるのかも知れない。県知事は立ち上がると「生徒を連れて帰る」と説明した女性教師と別れてマスコミ関係者を引き連れて燃料施設に向かって歩き始めた。流石の県知事も空港内に公用車を呼び入れることはできないらしい。
「嘉手納の空軍と海軍に発進してもらわないと」「しかし、安保条約が発動されていない以上、アメリカ軍が中国軍を攻撃することはできないだろう」「中国軍が沖縄本島に向かっていると通報してはいかがですか」県知事一行が立ち去り、女性教師が女生徒たちが待っているエプロンに向かって取り残された形になった将官3人は立ち話で善後策を協議し始めた。中国軍は緒戦で輸送艦4隻を撃沈されているため今回は民間の大型フェリーで侵攻してくる。それが出撃したと確認されて海上自衛隊第5航空群に発進命令が下り、護衛として航空自衛隊第9航空団が随伴することになった。とは言え大型フェリーが接岸できる石垣島や宮古島が目標であれば西部航空方面隊の戦闘機に護衛させて鹿児島県の鹿屋航空基地から第1航空群のPー1対潜哨戒を呼んでいては手遅れになりかねない。
「実は我々は今回の防御壁を2段構えにしていましてウチのPー1が発進できなくても阻止する手立ては講じているんです」「そうですか・・・流石ですな」航空自衛隊の将官2人の焦りを見て取った第5航空群司令は本来は厳重な秘匿を要する作戦を僅かに漏らした。それがどのような作戦なのかは戦端が開かれなければ判らない。海上自衛隊は太平洋上で日本の貨物船航路を狙う中国海軍の潜水艦を何隻も撃沈し、日本海に展開させているイージス護衛艦隊は日本人の人質を同乗させたツボレフ22バックファイア爆撃機10機を撃墜しているがそれも陸からは見えない遠い海の上の出来事として揉み消している。今回もアメリカ海軍第7艦隊とは情報を共有しても統合幕僚監部や陸上自衛隊、航空自衛隊に伝わるかは不明だ。
「中国の宇宙飛翔体が我が国の監視衛星に接近してきます」「同じく通信衛星にも急接近しています」「明らかに地上の誘導を受けている模様」同じ頃、山口県山陽小野田市にある航空自衛隊宇宙作戦隊の宇宙レーダーでは宇宙空間で始まった戦闘を探知していた。以前、日本の衛星回線と地上での通信情報網が遮断されて社会活動が機能停止したことがあったが、あの時は証拠を提示して追及しても一切認めなかったものの明らかに中国本土からの強力な破壊電波と日本国内のインターネットとスマートホンの関連企業で働く中国人技術者による破壊工作が原因だった。しかし、今回は宇宙空間で衛星そのものを破壊するようだ。残念ながら宇宙作戦隊には宇宙空間を監視する能力はあっても衛星を誘導して衝突を回避し、接近してくる宇宙飛翔体を破壊する手段は保有していない。日本が衛星能力を喪失するのは時間の問題だ。
  1. 2023/03/18(土) 15:10:03|
  2. 夜の連続小説9
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<続・振り向けばイエスタディ432 | ホーム | 3月17日・実在した大悪魔・カール・マルクスが滅びた日>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://1pen1kyusho3.blog.fc2.com/tb.php/8301-e1848bfe
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)